こんにちは。ドイツのハレ在住のピアニスト、ピアノ教育者の大木美穂です。連載「音楽家のためのメンタルトレーニング」第5回目をお届けします。
前回はメンタルトレーニングの簡単な歴史とスポーツ界での現状をお伝えしました。今回からは、メンタルトレーニングを音楽にどうやって応用していくか、をみなさまとシェアしていきます。
心のスキルも練習で上達する
メンタルスキルというのは、演奏技術と同じように、練習をすれば上達していきます。元々本番に強い人というのはもちろんいますが、本番に弱いという人も、どうか諦めないで。
心のトレーニングを日々の練習に取り入れていくことで、すぐにではなくとも少しずつ本番でより良いパフォーマンスが出せるようになっていきます。
メンタルトレーニングの第一歩は「意識すること」
『もっと音楽が好きになるこころのトレーニング』著者の大場ゆかりさん(武蔵野音楽大学専任講師)も、「実は多くの人が深く考えずに練習や本番の前に行ってきたことも、立派な心理的スキルトレーニングになり得る」と述べています。
その例として、
- 練習前後に深呼吸をしたり、目を閉じたりして心を落ち着かせる
- 練習中に集中できなくなったときに気分転換をする
- ちょっとした空き時間や移動時間を利用して曲のイメージを膨らませる
- 本番で拍手喝さいを受けている自分をイメージする…
(大場ゆかり『もっと音楽が好きになるこころのトレーニング』より抜粋)
などを挙げられています。
こういうことを沢山無意識的に実行してきた人も多いはず。これらの取り組みを無意識にではなく、意識的に行うことで効果を大きな成果へと変えることができる、とも述べています。
8つのメンタルスキル
ドイツのハレ大学教授・オリバー・シュトル博士と、東海大学教授・高妻容一博士(ともにスポーツ心理学者)のスポーツ心理学におけるメンタルトレーニングのカテゴリーをもとにしながら、音楽家の視点から、音楽家のためのメンタルスキルを次の8つにカテゴライズしました。
- 目標設定
- リラクセーション・アクティベーション
- イメージトレーニング
- 集中力
- プラス思考
- セルフトーク
- ストレスマネジメント
- 練習力
研究にはある意味終わりがないため、この8つのメンタルスキルもこれから先研究や実践を通して少しずつ変わったり増えたりしていくかもしれません。
次回からは、ワークを踏まえながら、これらメンタルスキルを一つずつ掘り下げていきたいと思います。
おまけ:参考文献とこのテーマのおすすめの文献
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2017年出版の、比較的新しい本。音楽家の心のトレーニングについてとてもわかりやすくシンプルにまとめられています。ページ数も少ないのでさくっと読めておすすめです。
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