卑弥呼のバッハ探究14「無伴奏パルティータ第2番 ジーガ」

こんにちは、ヴァイオリニストの卑弥呼こと原田真帆です。

前回同様、今回も動画をちょっと変わったロケーションで撮影してみました。しかし場所が川沿いで、しかも風が強い日だったもので、弾いているうちに手はかじかむわ、あとから動画を見てみたら風の音がゴウゴウ入っているわ…それもひとつの味としてお楽しみいただければ幸いです(笑)。

それでは今回の曲、ジーガにまいりましょう!

本来は終曲に置くジーガ

古典組曲は大体ジーガ(または仏:ジーグ)で終えるのが通例です。組曲の中ではもっとも軽快でテンポが速い踊りで、8分の6拍子や8分の12拍子などの複合拍子で書かれます。

このパルティータ2番のジーガも例にもれず8分の9拍子、複合拍子で書かれているのですが、この組曲が特別なのは、ジーガで終わらないことです。なぜなら、このあとにはみんな大好きシャコンヌが控えているからなんですね。

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そのせいか、わたしはこの曲に、通常のジーグにはない緊張感を感じます。かのシャコンヌを呼び込む存在ともなれば、その責任たるや重大です。なぜシャコンヌがそんなにVIPなのかって? その話題は次回にゆずりましょう!

指と弓の連動

ジーグという楽曲自体は、これまでにもパルティータ第3番で取り上げたことがありますし、あるいはテンポが速い曲と言えばソナタ第1番のプレストもありますね。技術的に押さえるべきことは既出の楽曲と同じで、とにかくゆっくり練習をして右手と左手の連携をスムーズにすることに尽きると思います。

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ではこの曲に固有の事柄として、一体どんなことが挙げられるでしょうか。とても幼稚な意見ではありますが、このジーガ、これまでのアップテンポな楽曲に比べてかなり長いと思いませんか。ベーレンライター社の譜面のレイアウトで言えば2ページたっぷりに渡り、しかも前半後半それぞれが繰り返しを伴います。しかも本来はこのあとに250小節以上にも及ぶシャコンヌを弾かなければなりません!

何が言いたいかって、つまりいかに脱力して弾けるかが大切なのです。力一杯に弾けば、途中で疲労困憊は間違いなしです。右と左で適切な連携プレーを取れば、きっと力まずに演奏できるようになります。

バッハの短調

ところでこのジーガは、無伴奏ヴァイオリンの楽曲の中でもわたくしの “フェイバリット” なのです。その理由はこのドラマチックな和声展開にあります。

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バッハの短調ってとてもドラマチックではありませんか。特にこの曲の後半のゼクエンツがわたしにはとても沁みるのです…ニ短調が好きだからかなぁ? もしわたしが「推しゼクエンツランキング」をつけるとしたら、間違いなく1位にはこの曲を選ぶでしょう!

最後になりましたが、一体今回のロケーションはどこなのか、という疑問にお答えしたく思います。

背景にしたのはポルトガルはリスボンにある「発見のモニュメント」といいまして、1960年にエンリケ航海王子没後500年を記念して建てられたものです。動画で言えばもっとも右端で彼方を見つめるこの王子は、ポルトガルの大航海時代を率いた人と言われています。

そういえば前回のサラバンダで大航海時代の話題が出ましたね。サラバンダをここで弾けばよかったかな…?

パルティータ2番のプレッシャー

実はわたしがバッハのこの曲集のなかで唯一まだ勉強していない曲が、パルティータ第2番の有名すぎる終曲・シャコンヌです。だから正直に言えば、この連載でパルティータ2番を始める前には少し逡巡したものです。

ですがこの連載の初回で、多くの人が通る順で楽曲を取り上げていきたいと宣言していたこともありますし、またこうして連載に取り掛かることで、シャコンヌを弾くきっかけにもなると考えました。

そこで次回はこの連載において初めての試み、わたしがまだ誰の前でも弾いたことがない曲を、みなさまにお届けすることになります。本当はかなりどきどきしておりますが、どうか楽しみにお待ちいただけたら、とても嬉しいです。

しかし、前回、今回とロケを敢行したからなぁ…次回はどこで弾こうか迷いますね。それでは本日はこのあたりで、次回はシャコンヌと共にお会いいたしましょう!