【楽器指導者向け】オンラインピアノレッスンを始めてみよう!

皆さん、こんにちは。ドイツ在住ピアニスト、ピアノ教育者、メンタルトレーニング研究・実践者の大木美穂です。

COVID-19が広がりを見せている中、自宅や音楽教室でのレッスンをオンラインに切り替えた人やこれから切り替える予定の人も多いかと思います。

そこで、楽器指導者向けにオンラインレッスンについて私が感じていることなどをシェアしていきたいと思います。

オンラインピアノレッスンを始めるにあたって

まずは必要なものを揃えよう

オンラインレッスンを始めるために、必要なものは、以下の通りです。

  • ピアノ
  • 携帯かタブレットかパソコン
  • 安定した通信環境
  • Web通話アプリ(SkypeかZoom)
  • 携帯かタブレットかパソコンを置く台(あれば譜面台もしくは三脚が便利です)

以上は、レッスンをする側とレッスンを受ける側両方とも必要となるものです。

もちろんクオリティを突き詰めようと思えば、外付けのマイクや2台目のカメラを用意することなども考えられますが、まずは手持ちのものでなるべく気軽に初めてみてみるのがよいかと思います。

ZoomとSkypeを比較してみた

次に、Web通話や会議のためのアプリとして著名なZoomとSkype、2つのアプリケーションを比較してみます。

世の中には他にもいろいろなビデオチャットツールがありますが(Google Handouts等々)、私はピアノレッスン用にまずはこちら2つを選びました。ちなみに今のところ(2020年4月3日現在)基本的な機能は両アプリケーションとも無料で、タブレット、携帯、パソコンから使えます。

Zoom

実はZoomは私もコロナ流行の少し前に語学レッスンのためインストールしたばかりで、Zoom初心者状態でのピアノレッスンスタートでした。Zoomを使って気づいたことや感じたことをまとめます。

  • データ通信量が比較的少なく済む

Zoomは使うデータ通信量がSkypeよりも少ないため、インターネットがあまりよくない環境でも通信が比較的安定しています。

  • 生徒はインストールするだけでユーザー登録をしなくてもよい

先生がZoomでミーティングを作成しURLを生徒に送信すれば、生徒はそこからアプリをインストールするだけなので、気軽に始めやすいかと思います。

  • ミーティング向け

Zoomは元々ミーティング向けに作られているので、Skypeのように電話をする形ではなく、ミーティングルームに入るという形です。Skypeなら電話のように鳴らせますがミーティングルームは自主的にクリックして入室するという形なので、生徒にレッスン時間をリマインドするなどの工夫が必要です(実際私の生徒さんもレッスン時間を忘れていて、生徒さんにメッセージを送ったことがありました)。

  • 「ミーティング」が終わると楽譜などのデータが送れない

これは私が個人的に少し残念に感じた点です。Skypeは設定すればオフラインでも楽譜や画像などのデータが送れますが、Zoomではミーティング中のみデータの送受信ができます。したがって、必要な楽譜などの資料は、レッスン中もしくはメールなどで送ることになります。

Skype

私が個人的にSkypeを使い始めたのは大学の交換留学時からなので、かれこれ10年利用しています。使い勝手がわかっているから使いやすいという部分は大きいです。Skypeでピアノレッスンをしてみて気づいたことや感じたことをまとめます。

  • 事前登録が必要・ユーザー名が必要

Skypeはお互いにインストール後ユーザー登録をする形のため、特に生徒さん側にZoomよりは少しだけ手間がかかります。レッスンを始める際は、ユーザー名などからお互いを友人に追加し、承認されたらレッスンを開始する形となります。

  • チャット機能・ファイル送信機能があり、オフラインでもデータを送れる

チャット機能を使えば、オフラインでも楽譜などのファイル送受信ができるので便利です。

  • 安定した通信環境が必要

Skypeは使うデータ通信量が大きいため、ある程度の回線速度を確保しておかないと通信が不安定になりがちです。インターネット環境を事前に確認しておくとよいでしょう。

  • 音質は比較的よい

データ通信量が大きいだけあり、音質はZoomよりもよい印象です。

その他のアプリ

その他のアプリとして、Whatsapp(ドイツで使われているLINEのようなもの)とFacetime(アップル製品のみ対応)でのピアノレッスンを試してみました。

両方に共通したプラスな点としては、手軽なこと。普段使っているアプリを使うという面で、インストールの手間が省けます。

マイナス点は、音質です。友人とテレビ電話するくらいなら問題ないですが、ピアノレッスンとなると少し音質が気になります。そのため、Whatsappでのピアノレッスンはあまりピアノレッスンに向いていないかなという印象です。

Facetimeに関しては、チャット機能がないのが不便なのと、また対象がアップル製品のみに限られます。

というわけで、それぞれのアプリの特徴などや気づいたことなどをまとめました。私個人的には今のところSkype→Zoom→Facetime→Whatsappの順番で、ピアノレッスンがしやすいという印象です。

また、私も携帯やタブレットでのレッスンも試しましたが、パソコンが一番画質や音質はよいと感じました。ただ、どのアプリを使うかという部分は、先生や生徒のパソコン等のスペックによって違いも出てくるのでまずいろいろなアプリを試してみるとよいかもしれません。

オンラインレッスンの長所と短所

次にオンラインでレッスンをしてみて感じた短所と長所をまとめてみます。

短所

  • カメラアングルをその都度変える必要あり

リアルなレッスンでは先生が動くだけで見る角度を変えることができますが、オンラインレッスン中は必要に応じて生徒にカメラアングルをその都度変えてもらう必要があります。私はピアノのレッスン中、全身の使い方、無駄な力が入っていないかを見ているため、それがオンラインだと少し難しくなります。今は全身を見たい、今度は指番号を見るために手のほうに近づけて、などと臨機応変にカメラの距離やアングルなどを変える必要が出てきます。

  • 時々わずかに時間のズレがある

音楽は時間芸術なので、時に演奏中に同時に演奏にコメントをする際など、わずかな時間のズレが気になりますよね。

  • リアル感が減る

当たり前ではありますが、リアルレッスンがもつその場の空気感やライブ感は、オンラインでは少し薄まってしまいます。

長所

  • 効率がよい

先生も生徒も移動せずに自宅からレッスンができるのは、大きなプラスポイントです。また、リアルなレッスンよりも世間話等が減り、すぐにレッスンを始めてレッスンを終えやすいので効率重視の先生に向いているかもしれません。また、先生のところと生徒のところにピアノが一台ずつ置いてあるというスタイルになるため、お手本を見せる際に立ったり座ったりがなく、ピアノが一台置いてあるレッスン室でレッスンをするよりもその分の時間が短縮できます。

  • 生徒の自主性を育てる

生徒はダイレクトに触れてもらえないため、自分で考え、先生が何を意味しているのかもっと自分で考える必要が出てきます。

  • 先生ももっと言葉で表現することができるようになる

生徒に触れたり直接見せたりできないぶん、先生自身の言葉の表現の幅を広くしたり、言い方を変えたりして伝えるように努力するようになります。

  • 先生の想像力が試される

制約があるぶん、想像力をフルに働かせながらレッスンをすることになります。

オンラインピアノレッスンをスムーズに進めるためにおすすめしたいこと

  • 複数のアプリをインストールしておく

何かしらの問題があって接続がうまくいかないことや、時間帯によっては回線が混み合うこともあります。可能であれば先生と生徒が複数のアプリ(例えばSkypeとZoom両方など)をインストールしておくと、いざ片方がうまくいかないときに便利です。

  • 楽譜はメールなどで事前に送ってもらう

生徒の楽譜の版が違う場合や楽譜にすでに書き込みがある場合は、楽譜をスキャンしたものもしくは画像を事前にメール等で送ってもらうとスムーズです。また、楽譜はこちらでもコピーしておくと、その都度書き込みができます。もしくはタブレットに保存しておいてその都度書き込むのもありです。そして書き込んだ楽譜はレッスン後に生徒さんに送ります。

  • パソコンもしくはタブレットが安定しやすい

個人的には携帯よりも、パソコンかタブレットのほうが接続が安定しやすく、音質もよいと感じました(ちなみに私は携帯は2019年に買ったiPhoneXS、パソコンは2012年に買ったMacBookAir、タブレットは2014年に買ったiPadAirを使っています)。すべてMac製品の中、携帯が一番新しいのにも関わらず、です。そして話すとき、演奏を見せるとき、とその都度角度を変えやすいのもノートブックパソコンなので、私は今のところ主にパソコンでオンラインレッスンをしています。ただしこれは好みの問題かもしれません。

  • ピアノの上に直接置くと音がこもる(三脚、譜面台、棚などに置く)

携帯を使ってレッスンを受ける生徒さんの中には、携帯をピアノの鍵盤サイドに置いてレッスンを受ける生徒さんもいます。そうすると手元はよく見えますが音がこもりがちでよく聴こえないので、三脚や譜面台、なければ適当な高さの棚や椅子などに携帯を置く方がベターです。

  • Zoom:大きすぎる音を自動的に抑える機能をオフにする

Zoomには、大きすぎる音を自動的に抑える機能があります。これはミーティングでは便利かもしれませんが、ピアノレッスンの際は強弱がわかりづらくなるので、設定のところでオフにしておく方がよさそうです。

  • 生徒が演奏しているときはこちらのカメラをOffにする

生徒が演奏している間にこちらのカメラをOffにすることで、データ量を減らして多少音質を上げることができます。

大変な時期から学ぶ大切なこと

「ピンチはチャンス」ということで、私も今回、コロナ流行によりドイツでは3月半ばからすべての学校や大学が休講となり、自宅でのレッスンや出張レッスンに規制がかかったことで、オンラインレッスンを始めてみるきっかけができました。

もちろん、オンラインレッスンは、従来のオフラインでのFace to Faceのレッスンと同じではありません。それでもメリット・デメリットを理解した上で、上手に取り入れる価値はありそうです。

そして、生徒の数だけオンラインレッスンの形もある。ということで、試行錯誤しながらひとりひとりにフレキシブルに対応していくのがよいと思います。

私が非常勤講師としてピアノを教えているエアフルト大学でも、遅れて5月から始まる夏学期をまずはオンラインで始めてみようと試みています。エアフルト大学ではアンサンブルのレッスンがあり、どうやってアンサンブルレッスンをするかが大きな課題となりそうです。

私も他の先生たちとこれまでの経験やアイディアをシェアしつつ、模索しながら、スタイルを確立していけたらと思っています。

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栃木県出身。3歳からピアノを始める。2010年、横浜国立大学音楽教育課程在学中に日本政府より奨学金給付を受け、ドイツ、エアフルト大学に一年間留学。2013年よりドイツ、ハレ在住。2017年、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク器楽教育ピアノ修士課程を最高得点で修了。2019年よりエアフルト大学にて音楽教育科にてピアノとアンサンブルの授業を受けもち、後進の指導をしている。現在、ザクセン・アンハルト州より研究奨学金を受け、ハレ大学博士課程にて、スポーツ心理学を応用した音楽家のためのメンタルトレーニングについて研究中。ピアノ演奏、研究、ピアノ指導のかたわら、ドイツ語翻訳及び通訳、メンタルトレーニングコンサルタントをおこなっている。