フロー状態を作りだそう。本番で最高のパフォーマンスをするための要因とは

こんにちは! ドイツのハレ在住のピアニスト、ピアノ教育者の大木美穂です。

私は現在、ハレ大学の音楽教育科とスポーツ心理学科にて、音楽をする人のためのメンタルトレーニング研究をしています。連載第3回目となる今回は、「本番で理想のパフォーマンスができている状態」についてお話ししていきたいと思います。

フロー状態とは

みなさん「フロー状態」という言葉を聞いたことがありますか?

これは心理学用語で、人が今している活動に完全に没頭している精神状態のことです。

夢中になって本を読んでいるとき、スポーツをしているとき、何かに没頭しているときなど、みなさんにも心当たりがあると思います。心理学者ミハイ・チクセントミハイがこの状態を「フロー」と呼び始め研究を重ねていますが、もっと何千年も前から仏教や道教では精神的な修行において注目されてきました。

この状態は、他に「ゾーンに入る」「火事場の馬鹿力」「無我の境地」とも表現されます。

演奏時のフロー状態

一度、これまでの演奏の本番の中で、うまくいった時のことを思い出してみてください。

そのとき、精神的、身体的に、どのような状態でしたか?

「雑念がなく、音楽のことだけに集中できた」

「聴衆の目が全く気にならなかった」

「不思議な時間の流れだった。一瞬一瞬をゆっくり味わうとともに、あっという間の時間だった」

きっと他にも色々あるでしょう。

「音楽と一体になれた気がした」

「すべてコントロールできている感じ」

スポーツにしても音楽にしても、本番でうまくいった時というのはこのフロー状態にあることが多く、どうやらこのことも成功の鍵となりそうです。

緊張とリラックスのバランス

フロー状態についてもっと詳しくみてみましょう。

人は、緊張しすぎていても、逆にリラックスしすぎていても、あまりよいパフォーマンスは生み出せません。

緊張しすぎると、身体がこわばる・頭が真っ白になる、などといった前回お話しした「あがって」いる状態になってしまいます。

逆にリラックスしすぎていては、全く緊張感がなく、程よい集中力が生み出せません。

この緊張とリラックスのバランスが取れた状態が、「理想的なフロー」と呼ばれている状態なのです。

どうやったらフロー状態に入れるのか

それでは、フロー状態とはコントロール可能なのでしょうか。

スポーツ心理学のゾーン(もしくはフロー)に入るために何をすればいいかを調べた研究からは、次の要因がそろえばゾーンにもっていける、という報告が出ています。

  1. 試合前のプラン
  2. 自身と心理状態
  3. 身体的準備と心理的準備
  4. 興奮のレベル
  5. 環境と状況の条件
  6. 集中力
  7. チームプレイと相互作用
  8. 経験

(東海大学の高妻教授による「スポーツメンタルトレーニングの専門家育成教科書 第2版」より)

音楽の話をするならば、1は「本番前のプラン」に、そして7はアンサンブルであればアンサンブルプレーヤーとの、また聴衆との相互作用と置き換えることができます。

そして、まさにこの「フロー」「ゾーン」を計画的に作り出す方法が、メンタルトレーニングなのです。

次回のテーマ

次回のテーマは「メンタルトレーニングはどのように始まったのか」。

音楽に応用する前に、まずは簡単なメンタルトレーニングの歴史と、スポーツ界におけるメンタルトレーニングについて、みなさんとシェアできればと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

大木 美穂

栃木県出身。3歳からピアノを始める。2010年、横浜国立大学音楽教育課程在学中に日本政府より奨学金給付を受け、ドイツ、エアフルト大学に一年間留学。2013年よりドイツ、ハレ在住。2017年、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク器楽教育ピアノ修士課程を最高得点で修了し、現在、ザクセン・アンハルト州より研究奨学金を受け、同大学博士課程にて、スポーツ心理学を応用した音楽家のためのメンタルトレーニングについて研究している。研究の傍ら、ピアノ演奏、ピアノレッスン、ドイツ語翻訳及び通訳、メンタルトレーニングコンサルタントをおこなっている。