音楽家のためのメンタルスキル②-2「リラクセーション・アクティベーション」後編

こんにちは。ドイツ、ハレ在住のピアニスト・ピアノ教育者の大木美穂です。

前回は音楽家のためのメンタルスキルとして、リラクセーション・アクティベーションについて紹介しました。今回はリラクセーションについてさらに掘り下げて解説します。

リラックスと緊張のバランスを作りだそう

リラクセーション方法として前回ご紹介したのは、「心からのアプローチ」と「体からのアプローチ」。ここでは、それらの方法のほかに、「あ、今、緊張しすぎているな…」と気付いたときに、簡単にできるリラクセーション方法をいくつか紹介します。

呼吸法

まずは体からのアプローチのひとつ、呼吸法について。

呼吸は、リラクセーションとアクティベーション方法として、とても大事なもの。呼吸に意識を向けることで、上手にリラックス状態と緊張状態のバランスをとることができます。たとえば、リラックスしすぎていて緊張がたりないときは、「フッフッフッフッ」とリズミカルに速めの呼吸をすることで、アクティベートすることもできます。

ここからは、“緊張しているときの対処法としての” リラックス呼吸法を見ていきます。

1. Four counts ブレス

これは、息を吐くのに4カウント、止めて4カウント、息を吸うのに4カウント、止めて4カウント…という呼吸法です。以下の要領でおこないます。

  1. まずは息を吐ききる
  2. 4カウント、鼻から息を吸う
  3. 4カウント、息を止める
  4. 4カウント、口から息を吐く
  5. 4カウント、息を止める

上記項目を1サイクルとして、2〜5を繰り返します。

この呼吸法は、究極の状態に置かれる軍隊のリラックス法としてや、パニック障害にも効く呼吸法として取り入れられているものです。

吐く、止める、吸う、止めるのすべての過程がそれぞれ4カウントと同じ時間でおこなわれるため、正方形をイメージしておこなうとやりやすいです。

吸うときは、お腹に息が入っていくのを感じながら、横隔膜が3次元に動くよう意識してください。吸うときに肋骨が広がり、吐くときにはおへそが背骨に近づく感じをイメージすると、酸素が全身に行きわたるのを感じられます。

2. 4-7-8ブレス

これは、アリゾナ大学医学部のアンドリュー・ウェイル教授が考案した呼吸法です。以下の要領でおこないます。

  1. 口を閉じて、4カウントで鼻から息を吸う
  2. 7カウント、息を止める
  3. 8カウント、口から息を吐ききる

上記項目を1サイクルとして、3回ほど繰り返します。

この「カウント」というのは「秒」である必要性はなく、ビデオでも比較的カウントのスピードが速い印象です。夜眠れないときにこの呼吸法を実践することで、眠りにつきやすくなるとも言われています。

3. 1:2ブレス

この呼吸法は、「息を吸う時間」の倍の時間、息を吐くという簡単な方法です。カウント数は個人により4秒吸って8秒吐く、5秒吸って10秒吐く、とバリエーション可能で、場合によっては厳密にカウントしなくても大丈夫です。

大事なのは、吐く息にフォーカスすること。息を吐くのは口からでも鼻からでもどちらでも結構です。

息を吸うときは、いらない息を吐ききったら入ってくるようなイメージでおこなってください。波が満ちて、引いていくのをイメージし、吐くと吸うの切り替えがスムーズになるようにブレスします。

交感神経を鎮めリラックスするのに最適な呼吸法です。

クイックリラクセーション

呼吸のほかに、リラックスできる情景をイメージすることも効果的です。

メンタルトレーニングにはイメージする力がとても大事な役割を果たします。イメージに関しては音楽における8つのメンタルスキル3つ目「イメージトレーニング」でもう少し詳しくお話ししますが、ここで紹介する方法はリラックス効果のみならず、イメージする力を上げるのにも役立つため、おすすめです。

リラックスする情景というと、みなさんはどんなものを思い浮かべますか。

綺麗な海、緑の生い茂った森、夏の朝の散歩、小鳥のさえずり…

いろいろなイメージがありますね。自分がリラックスできる場所や情景を思い浮かべてみてください。イメージできたら、その場所や情景で見えるもの、聞こえる音、空気感や温度感、風、香りなどを感じてみます。

まるで自分がその場所にいるかのように、イメージをできるだけ鮮明にし、感じられるのすべてを五感で感じるように意識しましょう。

初めは慣れが必要ですが、まずは一日5分、リラックス情景をイメージすることから始めてください。ここぞというときにこのイメージを呼び起こすことで、かなりリラックスすることができますよ。

ABOUTこの記事をかいた人

大木 美穂

栃木県出身。3歳からピアノを始める。2010年、横浜国立大学音楽教育課程在学中に日本政府より奨学金給付を受け、ドイツ、エアフルト大学に一年間留学。2013年よりドイツ、ハレ在住。2017年、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク器楽教育ピアノ修士課程を最高得点で修了し、現在、ザクセン・アンハルト州より研究奨学金を受け、同大学博士課程にて、スポーツ心理学を応用した音楽家のためのメンタルトレーニングについて研究している。研究の傍ら、ピアノ演奏、ピアノレッスン、ドイツ語翻訳及び通訳、メンタルトレーニングコンサルタントをおこなっている。