(2018.11.3更新)サービスの正式リリースが2018年12月25日になったと公式より発表がありました。楽しみに待ちたいと思います!
月額定額制でコンサートに行き放題という、首都圏を対象としたコンサートのサブスクリプションサービス『conpas(コンパス)』が11月よりスタートすることに。それに先立ち、公式サイトが7月31日に公開となりました。
音楽配信サービスや動画コンテンツ配信サービスなど、さまざまなデータ配信サービスが次々に定額制を開始している中ですが、「コンサートへ行く」というのは物理的な行為をともなうもの。そのようなサービスにもついに定額制が登場!? と驚いた方も多いかと思います。
本記事ではconpas事業推進担当である後藤誠さんにお話しを伺い、conpasが誕生した舞台裏を覗きたいと思います。
後藤 誠(ごとう まこと)
1993年長岡技術科学大学大学院工学研究科修士課程修了。ソニー株式会社にてWebサービスのUI設計やソニー製品のUI/UX改善活動などに従事。ソニーコンピュータサイエンス研究所の新規事業開発部門にて、クラシックコンサート向けサービスの開発経験を持つ。 2015年にソニーを退社。現在はハイレゾ配信サービスの運営にも携わっている。 アマチュアでホルンを演奏し楽団運営も担当していた経験を活かして、コンサートの活性化に向けたさまざまな取り組みを続けている。
conpasってどんなサービス?
ノリコ・ニョキニョキ(以下ニョキ)「まずはconpasの概要について教えてください」
後藤さん(以下、後)「conpasは、スマホの月額定額会員になると、チケットの価格や入手方法を気にせず気軽にコンサートに行くことができるサービスです。お客さんにとっては、これまで知らなかったアーティストや音楽に出会えること。主催アーティストにとっては、新しい聴衆と出会えることが価値になる、そんなサービスになればと考えています」
ニョキ「なぜconpas(コンパス)という名前になったのですか?」
後「concert passport(コンサート・パスポート)の略です。羅針盤のcompass(コンパス)ともかけています。音楽家と聴衆をつなぐコンパスになりたい、という意味をこめて」
ニョキ「おお。由来を聞くと一層すてきなサービス名に思えます(笑)。conpasの利用方法を教えてください」
後「会員の方は、サービスの画面から一覧できるコンサートの中で気になるものを見つけたら、ワンクリックでチケットを申し込むことができます。会場の受付にQRコードを用意してあるので、そちらでチェックインの作業をおこないます。これだけです。公演の後は主催の方に応援メッセージを送ることができる機能をつけたので、ぜひ利用していただければと思います」
ニョキ「どういったコンサートが掲載されるのですか?」
後「主催アーティストの方が登録してくださったコンサートが掲載されます。
主催アーティストの方は、アカウント作成、演奏会情報やチケットの登録などすべて無料でおこなえます。どうしても空席が見込まれる座席がある場合に、ぜひconpas会員に貴重な座席チケットをご提供いただければと思っています。
座席を提供していただいた見返りとしては、サービスの全体収益の6割のうち、提供していただいた席数に応じて、ポイントによる収益配分をします。このポイントは、提携のチラシ制作や収録サービス、ギフト券などで使っていただくことができます」
アーティストにとってのconpas
ニョキ「当然ながら主催者にとっては、できることなら普通にチケットを売った方が、金銭的な利益は大きいですよね」
後「もちろんそうです。conpasはチケット販売を代行するサービスではありません。我々が提供できる価値は、あくまで新しい聴衆との出会いというところに重点を置いています。
というのも、私自身、これまでさまざまな形でクラシックコンサートに関わってきましたが、特に若手のアーティストはどんなによい演奏をしていても集客に苦労している現状がありますよね。そして、客席には知人・友人・関係者ばかりということも少なくないようです」
ニョキ「それはまさに、ひとつの大きな課題だと思います。年に一度の演奏会を満席にすることができても、コンスタントに開催していこうと思うと、毎回満席にすることは至難の技。
馴染みのお客様に何度も足を運んでいただけることはもちろん嬉しいことですが、先々のことを考えれば、より多くの新しいお客様を求める意識は、常に持っておく必要があると思います」
後「また、どうしても埋めきることができなかった客席を、一席でも多く埋めて、一人でも多くの方に演奏を届けたいという需要もあると思います。
そういった需要に応えるため、conpasへの演奏会の掲載は、3日前や前日などでもOKなんです。また、最低5席から登録できるので、無理のない範囲でご提供いただけるのではないかと。
せっかくの演奏会ですから、空席をそのままにせず、新しいお客さんとの出会いのためにconpasを利用するのはいかがでしょうか? というのが、私たちの提案です」
ニョキ「これから活動の幅を広げていこうと考えている音大生や卒業生、走り出したばかりの音楽ユニットなど、これから一人でも多くのファンの方に出会いたいという方々におすすめのサービスですね」
聴衆にとってのconpas
ニョキ「お客さんにとっても、普段自分が行かないようなジャンルのコンサートに出会えるのは、わくわくする仕組みだと思います。なんせ定額制ですから、会社帰りに『今日の気分で選んだ演奏会にふらっと行ってみる』なんてこともできますしね」
後「そうですよね。私自身、海外のメジャーオケや演奏家のチケットを厳選して買うことが多いのですが、どうしても自分が好きなジャンルや、メジャーレーベルからCDリリースしているようなアーティストのコンサートに足を運ぶ傾向があります。
そんな中で、知人からご紹介いただいて若手の演奏家やアマオケのコンサートに行く機会ももちろんあるのですが、みなさん真摯(しんし)に音楽に取り組まれていて感銘を受けます。このような主催アーティストのコンサートが満席に近くなり、持続的に演奏活動をしていくためのサポートができたらと以前から考えていたのです」
ニョキ「課題があり、それを解決するべく新サービスが生まれるっていう」
後「もしこのサービスがうまくいかなかったら、また別のアプローチを考えています。実際、定額制には賛否両論あることは理解しています。ですが、がんばって演奏活動をしているアーティストを応援していくためのひとつの手段として、このサービスを提案してみたいと思っています。
conpas会員に対して貴重な座席チケットをご提供いただき、新しい聴衆に演奏を聴いてもらう。そして、その聴衆がファンになってくれたら、次のコンサートには正規料金のチケットで来てもらう。こんな姿を想像しています」
ニョキ「席を安売りするサービスではなく、新しい音楽との出会いをプロデュースするサービスですからね。それにしても、conpasの月会費は2,000円ですよね。非常にリーズナブル、というか少々お安すぎるのでは? というのが個人的な感想なのですが」
後「金額設定は非常に難しいポイントでした。音楽や動画の配信サイトの月会費は、多くが1,000円未満です。そういった中では、2,000円でも高すぎるのではないかという懸念もあって」
ニョキ「定額サービスに申し込もうというくらいの方だったら、月に最低でも2回は演奏会に足を運ぶ習慣のある方ではないかな? と思うんです。カジュアルな演奏会でも一回2,500〜3,500円ほどの設定がされていることが多いと思うので、それを考えたら2,000円で行き放題は破格だなあと」
後「すでに習慣のある方にとってはそうだと思います。ですが運営側の意図としては、既存のクラシックファンだけでなく、これまで演奏会に行く習慣のなかった方々が『行ってみようかな』と思ってくれるようなサービスにしたいという思いが強いので、金額でのハードルはなるべく下げておきたいという結論に至りました」
ニョキ「なるほど。会員以外の方が同伴する場合は、一人当たり別途500円で行けるんでしたね」
後「そうです。conpasの月額会費に追加してお引き落としとなります。ぜひご友人を誘って、いろいろな音楽との出会いを楽しんでいただければ。そしてそのご友人がconpasを気に入ってくれて、会員になってもらえるなら、初回登録料を無料にする予定です」
正式リリースは11月!
ニョキ「正式リリースは11月の予定。どんなコンサートがラインナップされるか、楽しみですね」
後「ひとりでも多くの主催アーティストさんとお客さんが、このサービスを通じて出会ってくだされば嬉しいです」
ニョキ「お話を伺って、個人的にはCOSMUSICAで演奏会をやる際にもぜひ一部の席を提供したいなと思いました。COSMUSICA経由で出会えなかったお客様と出会えて、その方がCOSMUSICAに遊びにきてくれるようになったらとても嬉しいですし、出演する奏者にとっても、新たな出会いは貴重だと思うので」
後「ぜひお願いします(笑)」
ニョキ「リリース後のビジョンは何かありますか?」
後「最初はとてもシンプルなサービスメニューにしていますが、ある一定の有料会員様に支えてもらえるようになったら、次の展開も考えています。詳しくはまだ話せないのですが、既にさまざまなプランを持っています。ご利用者のみなさまからのリクエストもお聞きしたいです」
ニョキ「なるほど」
後「あとは演目数が増えてきたら、楽器・編成別検索、気分別検索などの機能を実装したいですし、『ナビゲーターの選ぶ今週の演奏会』のような特集コーナーを作って、いろいろな方にそれぞれの目線から演奏会をピックアップしていただく、というようなこともやりたいですね」
ニョキ「個人的にオーボエにはまっているので、オーボエの演奏会があったらそればかり行ってしまいそうです(笑)。
いろいろな演奏会をラインナップするには、アーティスト側の賛同がとても重要です。問題意識を共有できる仲間が集まって、結果的にwin-winになれる、そんな展開になったらよいですね」
生まれたばかりの新サービス『conpas』、行く末がとても楽しみだと感じました。少しでも気になった方は、公式サイトをぜひ覗いてみてくださいね。
また、「こんなサービスがあるみたいだよ〜!」とぜひお友達やお仲間にシェアしていただけましたら幸いです。
ノリコ・ニョキニョキ
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