芸術と学術の街・ボローニャでの濃密な日々&秋においしい赤の泡「ランブルスコ」

W.A.モーツァルトが演奏旅行で訪れた土地を巡り、そこで造られる美味しいワインをご紹介する「モーツァルトとワイン旅行」。前回ミラノの地でオペラ・セリアの作曲依頼を取り付けたモーツァルト父子は、イタリア半島を南東に下ってボローニャへと向かいます。

ローディで作った初の弦楽四重奏曲

ミラノを発った日の夜、レオポルトとヴォルフガングはローディという街に泊まりました。そこでヴォルフガングは、最初の弦楽四重奏曲(K.80/73f)を書き上げます。

その弦楽四重奏曲第1番から、楽しい雰囲気の第2楽章を聴いてみましょう。

最終的には4楽章形式に仕上がっているこちらの楽曲ですが、ロンド形式の第4楽章が書かれたのは3年後のことで、ローディで作曲された時点では3楽章形式だったようです。1〜3楽章の「アダージョ→アレグロ→メヌエット」の流れは、当時のミラノで流行った様式を踏襲しているともいわれます。

ヴォルフガングはこの弦楽四重奏曲を自分でも気に入っていたようで、のちのパリ旅行にも楽譜を携行しました。

パルマで出会ったアグヤーリの美声

父子が続いて立ち寄ったのは、パルマです。

ここでは、ミラノでお世話になったフィルミアン伯爵から紹介状を受け取ったグリエルモ・デュ・ティヨがふたりを迎えてくれました。この人物は、パルマ、ピアチェンツァおよびグアスタッラ公国の国務大臣でした。

この街で特筆すべき出来事は、著名な歌手であるルクレツィア・アグヤーリと知り合ったことでしょう。彼女の才能に揃って感激したふたりは、その歌声がどんなにすばらしかったかを、ザルツブルクの家族に宛てた手紙のなかでそれぞれ語っています。

彼女は第一に、美声で、第二に、つやのある喉をしていて、第三に、信じられないほど高い音域まで出せます。

(1770年3月24日、ヴォルフガングから姉ナンネル宛の書簡より)

彼女が4点ハまで歌い上げるなどとは私には信じられないでいましたが、耳で聞いてみて納得しました……(中略)……まことに美しくて、オルガンのオクターブ音栓のようでした。要するにです!トリルや万事が、ヴォルフガングが書いた通りに歌われ、音符のひとつひとつがそのままなのです。おまけに彼女は立派なアルトの低い声がト音まで出せます。

(1770年3月24日、レオポルトから妻マリーア・アンナ宛の書簡より)

ピアノの真ん中の「ド」が「1点ハ」で、その上の上の上の「ド」が「4点ハ」です。これはなんと、フルートの最高音域に匹敵する高さ!

高音が求められることで有名な夜の女王のアリア(下動画)でも、その5度下の「3点ヘ」までしか出てきません。アグヤーリのすごさがわかりますね。

ボローニャでの濃密な5日間

さて、ヴォルフガングたちは次の目的地であるボローニャにたどり着きます。

ボローニャは、レオポルトいわく「イタリアではお目にかかったことがないほどいちばん物価高の土地」。それでもふたりは、街で最も上等な高級旅館に泊まっていました。

当時のボローニャには、数多くの巨匠や芸術家、学者たちが住んでいたそうです。さすがは、最古の総合大学・ボローニャ大学がある街です。レオポルトは、ボローニャでは「学術と呼ばれるものがすべてきれいな部屋にきちんと整理して保存されている」ことに感銘を受け、「大英博物館を凌駕している」と妻に語っています。

当地での後援者は、ジョヴァンニ・ルーカ・パッラヴィッチーニ・チェントゥリオーニ伯爵。モーツァルト父子が5日間ほどしかボローニャに滞在できないことを知った彼は、貴族を150人集めた音楽会を即座に開催してくれました。そこには、いつもは決して音楽会に出かけないジョヴァンニ・バッティスタ・マルティーニ師も訪れ、これにレオポルトは大いに喜びました。

というのもマルティーニ師は、当時イタリア随一の音楽理論家・作曲家として尊敬されていた老大家。音楽会で演奏を聴いてもらっただけでなく、ヴォルフガングは短いボローニャ滞在の間に2回もマルティーニ師を訪ね、直々にフーガの技法を教わっています。

ヴォルフガングたちはマルティーニ師のほかにも、作曲家や歌手など多くの芸術家たちと交流しました。5日間という短い期間でしたが、ボローニャでの滞在は非常に有意義なものだったといえそうです。

赤のスパークリングワイン「ランブルスコ」

さて、ここでワイン紹介コーナー。今回取り上げるのは、ボローニャを州都とするエミリア=ロマーニャ州のスパークリングワイン「ランブルスコ」です。

深まる秋にぴったりの泡!

ランブルスコは、エミリア・ロマーニャ州で広く作られているスパークリングワイン。白やロゼだけでなく、赤のスパークリングもあるのが特徴です。フルーティな味わい、低いアルコール度数、ほどよい甘みと苦みが特徴の赤ランブルスコは、初心者にも飲みやすいワインですね。

スパークリングワインといえば、暑い夏、もしくはクリスマスのある冬をイメージされる方が多いのですが、ランブルスコの赤は秋にもおいしく飲めます。美しい赤色とほどよい渋みが、秋の雰囲気にぴったりなのです。

ランブルスコを選ぶ際には、ボトルの表記をチェック。「Secco(セッコ)」「Amabile(アマービレ)」「Dolce(ドルチェ)」のうち、どれが書かれているか確認しましょう。それぞれの意味は、以下のとおりです。

  • Secco=辛口
  • Amabile=やや甘口
  • Dolce=甘口

クラシック音楽がお好きな方なら、とても覚えやすい表記ですよね!

もちろんランブルスコは、産地エミリア・ロマーニャ州の食材やお料理と好相性。「Secco」のランブルスコならボローニャのパスタ・ボロネーゼと、「Amabile」ならパルマの生ハムやパルミジャーノ・レッジャーノなどと合わせてみてください。

ランブルスコはサイゼリヤで飲める!

今回おすすめするのは、言わずと知れたイタリアン・ファミリーレストラン「サイゼリヤ」のランブルスコです!

サイゼリヤのワインリストには、赤の辛口ランブルスコと、ロゼの甘口ランブルスコが入っています。

しかもサイゼリヤでは、パルマ産のプロシュート(生ハム)も一緒に味わえるのです! ワインもハムもお手頃価格ですが、めちゃくちゃ美味しい。ワイン好きとして、サイゼリヤの企業努力に頭が上がりません。

サイゼリヤでは、たまにグラスでランブルスコを飲めるキャンペーンも催されているようですが、基本的にはボトルでの注文が必要なようです。今度の休日は、お友達やご家族と一緒に「サイゼリヤ飲み」してみてはいかがですか?

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瀬良 万葉
3歳よりピアノを、14歳よりオーボエを始める。京都大学法学部卒業、同大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。クラシック音楽とそれが生まれた社会との関係に興味があり、大学院では主にローベルト・シューマンの作品研究を通して19世紀ドイツにおける「教養」概念や宗教のあり方、ナショナル・アイデンティティなどについて考察した。現在はフリーライター兼オーボエ奏者として関西を拠点に活動中。