どこか浮世離れした存在に感じられる「音大生」。一体どんなことをしているんだろう……?
そんな時は、彼らが使う言葉「音大生用語」を見てみませんか? 今日はヴァイオリン弾きの筆者が「ちょっとニッチな方言」をご紹介します。
1.数字はドレミで
数字はドレミに置き換えるのが、音大生。でも、ただのドレミではないんです。
日本の音大生にとって、ドレミファソラシドと同じくらい頻繁に使うのが、ドイツ語のドレミ。
ドレミファソラシ
CDEF GAH
読み方はドから順に、ツェー/デー/エー/エフ/ゲー/アー/ハー、です。
そしてC=1、D=2……として使っていきます。
具体的な例を挙げると、学年を言う時や、あるいはギャラを言う時に使ったり……
・C年(ツェーねん)
=1年生(1回生)
・D年(デーねん)
=2年生(2回生)
・謝礼はCG(ツェーゲー)
=¥15,000
・本番3回でG万だって!
=¥50,000
2.さーし
音大、特に金管楽器発祥と言われるのがこの言葉、
さーし!
これは「ブラボー!」の意味で、もとは「すばらしい」。「ありがとうございます」が「あざーっす」になるのと同じ原理です。
例えばオーケストラ、曲の途中でトランペット首席奏者がとても高い音を決めた時、両脇にいる金管楽器メンバーはぼそっと一言、
「さーし」
とつぶやきます。それはもう、曲に溶け込むくらいぼそっと。
あるいは本番後、舞台袖にはけたら、楽器を持たない手の平を上に向け、水平に下から上へ持ち上げながら(演奏を持ち上げるの意)「さーしでした!」と労います。
ここから派生して、
「今日リハ(リハーサル)なくなったって!」
「じゃ飲んで帰ろうぜ!」
「さーし!」
というように、普段使いするようになりました。
3.ゲーセン
とある練習室をのぞいてみると、清楚系ファッションを身にまとう女子たちから、やたら
ゲーセンゲーセン
という言葉が発せられています。
ゲームセンター…??
いえいえ、この正体は「G線」、弦楽器の「Gの音」、つまり「ソ」の音がする弦のことを「ゲーセン」と呼びます。
よって、ちょっぴり坊ちゃん風の格好をしたお兄ちゃんたちも「ここゲーセン?」「ゲーセンだね」と連呼していますが、非行に走るわけではなく、音色の追求をしているだけです。
ニッチすぎる「方言」たち
というわけで「ニッチすぎる方言」音大生用語を3つご紹介しました。
わかっても何も得をしませんが、もしかしたら金額をドイツ語アルファベットに変えるのは、音楽関係者以外の方も、暗号のように使えるかもしれませんね!😎💴
はらだまほ
最新記事 by 原田 真帆 (全て見る)
- 次々に演奏し、ばんばん出版。作曲家エミーリエ・マイヤーが19世紀に見せた奇跡的な活躍 - 24.05.18
- ふたりで掴んだローマ賞。ナディア&リリ・ブーランジェ、作曲家姉妹のがっちりタッグ - 23.10.30
- 投獄されても怯まず、歯ブラシで合唱を指揮。作曲家エセル・スマイスがネクタイを締めた理由 - 22.11.07
- 飛び抜けた才能ゆえ失脚の憂き目も経験。音楽家・幸田延が牽引した日本の西洋音楽黎明期 - 22.09.28
- 「暗譜」の習慣を作ったのは彼女だった。クララ・シューマンという音楽家のカリスマ性 - 22.01.30