こんにちは! 今週のおけいこ道の時間がやってきました。ヴァイオリン弾きの、卑弥呼こと原田真帆です。
先日コスムジカ上で、【超入門オーケストラシリーズ】を公開したところ反響があったので、今回のおけいこらむでは、楽器を弾いているけれどまだオーケストラに参加したことがないよ、という若い音楽家のために、知っているとのちのち役立つオーケストラ用語弦楽器編をまとめてみました!
▷参考【超入門オーケストラシリーズ】
第1回・第2回・第3回・第4回・第5回
わたし自身、音高に入るまでオケ経験がなく、知らない専門用語にとまどったり、恥ずかしくて知ったかぶりしてしまったものでした…今日の記事は、そんなときのためのヘルプ記事です!
オケの役割に関する用語
表・裏
弦楽器は2人1組でひとつの譜面台を使います。このとき、客席側に座る人を「表(オモテ)」、舞台奥側に座る人を「裏(ウラ)」と言います。つまり、指揮者の左手側のパートは、右が表で左が裏、指揮者の右手側のパートは、左が表で右が裏になります。
オケの曲の中には、表と裏で違う譜面を弾くことがあり、だいたい表が高い方のパートを、裏が低いほうを弾きます。このように分けて弾くことは「ディヴィジ(楽譜にはdiv.と表記)」と呼ばれます。
トップ・トップサイド
トップとは首席奏者のこと。譜面台は「プルト(Plut)」という単位で数えられ、前から第一プルト・第二プルト(通称いちプル・にプル)…と呼びますが、いちプルの表がトップの席です。そしていちプル裏に座る人をトップサイドと呼びます。
なお、第一ヴァイオリンのトップは、もちろんコンサートマスターです。ちなみにトップは英語ですが、プルトはドイツ語。英語だとプルトのことは「デスク(Desk)」と呼びます。外国の先生が振るときは注意です。
にディヴィ・さんディヴィ
先ほど登場した「div.(ディヴィジ)」、二手に譜面分岐(太鼓の達人にありますね)するときは表・裏で分けますが、3つ、4つに分かれる指示が出ることも。そのため「2div.(にディヴィ)・3div.(さんディヴィ)」と呼び分けます。
3以上に分かれることが指示されたら、練習前に分け方をトップや周りの人に要確認。大体、1plut表・裏、2pult表・裏…の順に123123123…と数えてパート分けすることが多いです。
公演全体に関わる用語
ゲネプロ(GP)
これはドイツ語の「ゲネラルプローベ(Generalprobe)」を日本語的に略したもので、本来の意味は「舞台総稽古」、出演者全員で本番の舞台にて稽古することです。本番直前におこなうケースが多いので、転じて本番前最後のリハーサルの意味合いもあります。
またGPという略は主に書き言葉用でしたが、日本の現場ではドイツ語読みで「ゲーペー」と呼ぶことがとても多いです! グランドピアノではないので、お気をつけください! なお、楽譜の中に「G.P.」が出てきたら、こちらは「ゲネラルパウゼ(Generalpause)」=全員休止、の意味です。
また、たいていゲネプロは本番当日におこなうことから、「明日はゲネ本(ゲネプロ+本番)よろしくお願いします!」といった略語もあります。
ステマネ
ステージマネージャーの略。ステージ全体に目を配り、演奏会の進行を取り仕切る偉い人です。進行のみならず、ステージ上の楽器や椅子などの配置や移動についても全て把握する、すごいお仕事なのです。
演奏会の最中の舞台装置を移動するのもステマネさんの役目。リハーサルなどでステマネさんからの指示があったら、よく聞きましょう。そしてステマネさんのおかげで演奏会ができるので、「おはようございます」「おつかれさまです」のごあいさつもできたら完璧です!
出捌け(ではけ)
舞台への出入りのこと。「出」はもちろん「出る」こと、そして「捌(は)け」は「はける」ことで、舞台から退場することを意味します。舞台袖から「はけて〜!」というステマネさんの声が聞こえたら、速やかに舞台を去りましょう。
やっぱりあいさつは…
現場で何より大切なのが「ごあいさつ」。やはりオケも一種の業界なのか、その日最初に会ったらたとえ夜でも「おはようございます」という傾向にあるようです。
ちなみにこれ、由来は歌舞伎だそうで。歌舞伎は公演が朝から晩まであるため、役者さんの楽屋入り時間がバラバラ。楽屋口で役者さんをお迎えする若手役者たちは、それぞれの時間に来る先輩方に対し「お早いお着きでございます」の省略系「おはようございます」で挨拶していたのだそうです。朝が早いという意味ではなかったのですね。
うんちくを語ったところで、お後がよろしいようで。また来週、お会いいたしましょう!
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