今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。
本日のテーマは、SNSとの付き合い方について。最近ではお子さんの成長をSNS上に残す方が増えましたね。新しい時代ならではのことを、少し考えていきます。
SNSネイティブ世代
90 年代生まれのわたくしも属するゆとり世代は、別名「デジタルネイティブ世代」なんて呼ばれることもあります。しかし 00 年代・10 年代生まれはデジタルにネイティブであたりまえ、あえて言うなら「SNSネイティブ世代」なんて言えるのかな、と思います。
SNSネイティブ世代の特徴は、初めての携帯電話がスマホ(SNSがプリインストール)であること、のみならず、ご両親も携帯カメラなどを使いこなし、お子さんの成長を誕生からデジタルにおさめていらっしゃることも象徴的だと思います。
かくいうわたしも、子供の頃のすべての発表会の動画が、父によってDVDに保存されています。わたしの幼少期はビデオカメラからのVHSでしたけれど、DVD編集が一般家庭でできるようになった頃に焼き直したみたいです。
SNSが成長とともに
そんな、世代の割にデジタル慣れしたわたしですが、先日大変驚いたことがありました。YouTube を見ていたら、年の頃 3 歳とおぼしきお嬢さんが、「白い本」の練習曲を弾いている動画に出会いました。
エチュードを弾いている動画がアップロードされるのは、海外ではもう何年も前からおこなわれていますし、もはやびっくりはしないのですが、今は家庭でもこんなに高画質で音もクリアに撮れるのかという驚きがありました。加えてふと浮かんだのが、この子が将来大きくなったときに、この動画はどうなるのかな、ということ。
そのお嬢さんはまだ小さいですし、けっして美しい音が出ているとは言い難いのですが、演奏フォームが非常に綺麗で見惚れました。それだけに思わずその子の未来に想いを馳せたのですが、たとえば、仮にその子が音楽高校に進学したときに、同級生が幼少期の動画を見つけたらどうなるのかな、と考えてしましました。
成長記録のあり方
今は音楽を学ぶお子さんに限らず、幼少期の写真が親御さんの Instagram に載っていることは珍しくありません。しかし昨年ついに「赤ん坊時代の写真を勝手に Facebook にアップしていた両親を 18 歳の娘さんが訴える in オーストリア」という衝撃のニュースがありました。
本人が大人になってしまえば、周りからも「子供ってやっぱりかわいいなぁ」「この人でもこんな時代があるんだなぁ」と思ってもらえますが、思春期って人間関係がとてもデリケートな時期、周りの目もとっても気になります。一番気をつけたいのは、やはりその肖像権を持つご本人の意思を尊重することかな、と思います。
幼少期の成長記録自体は貴重で、記録を残すことは役に立つことですし、大切なこと、そして親御さんにしかできないこと。特に発表会などの舞台の映像はぜひはりきって撮ることをオススメしたいです。
古い考えですが、子供の頃の写真ってもともとは親御さんが紙のアルバムにとじて、ご家庭で大切に、本人が知る由のないところでひっそりと保存されていたものでした。今まで隠れていたものが世に出ると、それにともなって“うまく閉じ込められていた不都合”も噴出してしまうのでしょうね。
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