進め! ヴァイオリンおけいこ道 第32回「体の故障と付き合う」

今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。

今日のテーマはけがと故障。演奏家にはつきもの、そして避けては通れない道です。

ヴァイオリニストが痛めがちなところ

ヴァイオリンの演奏において、痛めやすい体の部位を見てみましょう。

肩・腕・肘

わかりやすいところだと右腕ですね、ボウイングに力が入りすぎてしまって痛めるパターンです。四十肩状態になって上がらなくなる、筋を痛めてしまう、腕の曲げ伸ばしができなくなる、といった症状が挙げられます。

立って演奏する際に、反り腰気味になってしまうと痛めやすいです。ただでさえ立ちっぱなしか座りっぱなしで演奏するシーンが多いために、腰を痛める人は少なくありません。また腰痛はくせになってしまうのがつらいところ。

あご(顎関節)

楽器を支えている左側の顎関節(がくかんせつ)に負担がかかるため、ヴァイオリニストには顎関節症の人が多いです。あごがはずれる人もいます。歯痛、特に親知らず問題は、ヴァイオリン奏者には意外と切実な問題です。

指は左右どちらとも腱鞘炎になりうるのですが、左指で発症する人のほうが多いでしょう。酷使したり、冷えている状態で無理に指を動かしたりすると危ないです。

誰もが何かしかの痛みを持っている

楽器を演奏する姿勢は、どう考えたって不自然。特に数ある楽器の中でもヴァイオリンとヴィオラの左右非対称さはトップクラスです。つまりそれだけ体に無理な姿勢を強いるため、体の痛みや故障はどこかの段階で必ずぶつかる問題です。

わたしの場合、小学 6 年生の頃に右肘がまったく曲がらなくなったことがあります。食事のときも、箸を持って食べ物を口元に運ぶことができないレベル。原因としては、すべてを腕任せ・感覚任せで弾いていたことが考えられます。腕は肩甲骨から始まっている、という意識を持ち、背中から使っていかないと腕に無理がきます。

今でも力いっぱい弾いたときには右の上腕が痛むことがあり、そんな日はゆっくり入浴をしたり湿布を貼ったりして労わります。

またわたしの場合、父親が腰痛持ちなので注意しています。腰痛は体型も関係があるため、親が腰痛持ちならその因子は自分にもあると思うのです。ときどきつい反り腰で弾いてしまったあとなどは攣る(つる)感じがあるので、ストレッチをして伸ばすなどの対策を取ります。腰痛の抜本的な対策は、腹筋背筋をしっかりさせることしかないので、日頃の意識が大切です。

さらに、ヴァイオリン奏者には耳鳴り持ちや突発性難聴経験者もいます。ヴァイオリンとヴィオラは発音体が耳に近い楽器ですので、耳も労わりたいところ。耳の疲労に効くツボがありますので、押してみるのもいいですね。

「痛いときは休む」こと

一生をひとつの体と付き合っていく以上、痛みを感じたら休めて労わることがとても重要。「痛いときに休むことは悪くない」という認識を持って、自分の体の調子を日々点検していくことは、練習と同じくらい大切なことです。

みんなどこかしか弱点があるもの。演奏家はまるでアスリートのようなものだなとつくづく思う今日この頃です。


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原田 真帆
栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。