【超入門】オーケストラの中の人を大解剖! 弦楽器編【オーケストラ】

オーケストラになじみのない方にも楽しくオーケストラを知ってもらうための超入門シリーズ第2回目。前回は、「オーケストラ」の仕組みやリーダーの存在について紐解きました。

▶︎前回:「【超入門】オーケストラ奏者はひな壇芸人だった!?【オーケストラ】

今回は奏者の中でも弦楽器にスポットを当てて「オーケストラ」を解剖して見たいと思います!

弦楽器は盛り上げ隊である!

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オーケストラにはなぜヴァイオリンの人がたくさんいるのか……と疑問に思ったことはありませんか? これは楽器の音量に関係しています。

弦楽器の音量は90dB(デシベル:音の大きさを表す単位)で、それに相当する例を挙げると「地下鉄の車内」であるのに対して(すでにでかい)、特に音が大きい金管楽器は110dBで「600メートルの距離で聞くジェット機の音」と同等の音量があります(想像つかない)。この差を埋めるために、弦楽器は数で勝負しているのです。

人数が多いために、ガヤガヤと場を盛り上げるのは大得意。そして一生懸命に曲を盛り上げたところで、本当においしいところを金管楽器が華やかに持っていきます………。

音色(と見た目)の輝き金管楽器がピカイチですが、一方で、弦楽器がたくさんの人数で作り出す小さな音は、一人で作る音色よりもずっとずっと、緊張感があって美しく響きます

座席の場所はどう決まる?

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弦楽器には6種類のパートがあります。

まずは一番手前に座るヴァイオリン。さらにヴァイオリンは第一ヴァイオリン第二ヴァイオリンという、2パートに分かれています。続いてヴァイオリンの仲間で、一回り大きい楽器であるヴィオラ。そして足に挟んで奏でるチェロに、全長180cmもあるコントラバス、たくさんの弦を持ち見た目にも華やかなハープ。これが弦楽器セクションのラインナップです。ハープは曲によっては登場しないこともあります。

一見とてもわかりにくいのですが、弦楽器はパートごとに座席の場所を棲みわけています。

(例)もっとも標準的な配置

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『ストコフスキー配置』
赤:第一ヴァイオリン
橙:第二ヴァイオリン
緑:ヴィオラ
青:チェロ
紫:コントラバス

※ハープはヴァイオリン隊の後ろ、ひな壇よりは前に配置されることが多いです。

このほかに、音域がちょうど真ん中のため埋もれやすいヴィオラをチェロと入れ替える配置や、第二ヴァイオリンとチェロを入れ替えた「対向配置(ヴァイオリンが向き合うためこう呼ばれる)」があります。

実はこの「対向配置」が、17世紀のモーツァルトの頃から使われている伝統的なもので、現在多く使われている「ストコフスキー配置」は戦後のアメリカで生まれた新しいスタイルです。どの配置にも生まれる響きの利点欠点があり、今日では指揮者の好みや考えに任されています。

人数パターンを攻略せよ!

第一ヴァイオリンからコントラバスまでのパートは、人数の比率にも決まりがあります。最も多いのが、一番高い音域を奏でる第一ヴァイオリン。ついで第二ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバスの順に音域が低くなり、それに伴って人数が減ります。

(例)もっとも基本的な編成(10型)

第一ヴァイオリン:10人
第二ヴァイオリン:8人
ヴィオラ    :6人
チェロ     :4人
コントラバス  :2人

弦楽器は基本的に2人でひとつの譜面台を使って演奏します。その譜面台ひとつあたりの単位をプルトと呼び、音域が低くなるごとに1プルト減らしていきます。

実際の現場では、人間の耳には聞こえにくい低音を増強するために、第一ヴァイオリンが10人なのにチェロは5人のコントラバスが3人、といった応用もありますが、基本は上記のルールに基づいています。編成のシリーズとしては10型、12型、14型など。お察しの通り、12型は第一ヴァイオリンが12人、14型は(以下略)です。これを決めるのは指揮者または作曲者で、その決め手は音量のバランスです。

弦楽器は伝言ゲームが得意!

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弦楽器奏者は、これだけの人数がいながら、息を合わせ、動きを合わせ、シンクロしながら演奏していきます。

このシンクロを作るため、練習のとき各パートの首席奏者が楽譜に指示を書き込み、すぐ後ろの人が前の人の楽譜のぞき込んで指示を移し、またすぐ後ろの人が前の人の楽譜を……というように「伝言ゲーム」をしています。

あるいは口頭で直接「伝言」もしますし、目で見て奏法をコピーしていきます。口伝えのときは、練習中の、指揮者が他のパートに指示をしているほんの一瞬の隙に指示を回していくため、素早さと正確さが求められます。そのため弦楽器奏者は、短い言葉で的確に首席の意向を伝達することが得意です。

弦楽器と管打楽器の違いは?

今回は弦楽器について大解剖しました。次回は管楽器・打楽器を特集します。弦楽器とは異なり、ひとりひとりが異なるパートを担う管楽器と打楽器。誰もが違うことをしているのに、どうしてまとまっているのでしょうか? 曲によって人数の変動も多くて、把握しづらい全貌を解読していきます!

どうぞお楽しみに!

▶︎第3回:「【超入門】オーケストラの中の人を大解剖! 管打楽器編【オーケストラ】
▶︎第4回:「【超入門】実はあのドラマの曲もオーケストラだった!【オーケストラ】
▶︎第4回の2:「【超入門】そうだ! オーケストラを聴きに行こう【オーケストラ】


デシベル数値参考:サイレントデザイン

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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。