進め! ヴァイオリンおけいこ道 第13回「読書の秋に想う」

こんにちは! 今週のおけいこ道の時間がやってきました。ヴァイオリン弾きの、卑弥呼こと原田真帆です。

秋といえば……どの季節よりもキャッチコピーが多いですよね。「芸術の秋」「スポーツの秋」そして「読書の秋」。まだ読書週間には早いですが、今回は音楽家と読書の関係について、書いてみたいと思います。

読書していますか

「そんな、ヴァイオリンの練習をしなきゃいけないのに、読書なんかする暇、うちの子にありませんッ」って?

でも、ちょっと待ってください。使い古されたフレーズですが、読書は想像力を養います。楽曲を演奏する上で、想像力は欠かせません。

音楽家の使命は、作曲家が曲に込めたものを、演奏によって人々に伝えること。しかし、作曲者の思いというのは、想像するよりほかありません。たとえ作曲者が生きていて、曲を書いた経緯を直接聞くことができたとしても、お互い別の人格を持つ他人でしかないので、作者のバックグラウンドやそのときの感情など、想像に任せる部分は必ず出てきます。

それに、忙しい人にこそ読書はオススメ。なんせ、動かずして世界中の土地の様子を知ることができたり、体験したことがないような人生をかいま見ることができるのですから。自分の人生で、全てのことを試そうとしたら、何回生き返っても時間が足りないですからね……たとえ百万回生きたとしても!

読書はメンタル的にもGOOD

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読書が習慣になっていると、心を落ち着ける効果もあります。平常心を得るために、本番やコンクールに向かう道中や楽屋でも読書をするタイプの人もいます。

もし本番前に、思いつめてしまうタイプだったり、何をして良いか分からずソワソワしてしまうタイプの人には、本で自分の時間を少し拘束するのは効果的かもしれません。

もちろん本番前の動作というのは人それぞれのもの。文字という情報を本番前に入れたくない! という場合は無理に本を読むことはありません。平常心を作るためには、普段通りに過ごすことが大切、と言われています。

わたしはそのとき読んでいる本があれば、本番の日の朝でも、電車では本を読みますし、まったく本を読まずに寝ている日もあります。あるいはメールなどがたまっていたら、楽屋でまとめて返信することも。

過去に、直前に楽屋で弾き詰めすぎて、ナーバスになっているのを先生に指摘されたことがあります。その指摘通り、そのときの本番は緊張の方が勝ってしまい、まったく思い通りに弾けませんでした。自分にとっては、本番直前にずっと弾いていることがマイナスになることもあると学び、その後は少し違う作業をする時間をあえて取り入れています。

ピークを本番に乗せられるか。自分をコントロールする技に関しては、延々と弾いても体を痛めにくい弦楽器よりも、唇の都合により、演奏時間に限界のある管楽器奏者に学ぶことがたくさんあります。物理的にいくらでも弾けるからといって、精神的にはピークがあることは、常に頭の片隅に置いておきたいことであります。

想像力をかきたてるオススメ書籍

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最後に、卑弥呼が独断と偏見で選ぶ「想像力をかきたてるオススメ書籍」をご紹介します。

現代人にも警鐘を鳴らす! 時間と女の子のお話

わたしが言うまでもない有名な作品。ドイツの作家ミヒャエル・エンデの代表作です。一体いつの時代なのかもイマイチわからない土地に、居候している女の子モモの登場から始まるこの物語は、やがて女の子が周囲に愛されるようになるのと同時に、街の人々の「時間」を「悪の組織」がむしばみます。

友人の「時間」を奪われたモモはひとり、賢い頭脳だけを武器に悪の組織のアジトへ向かうのです。音楽は「時間芸術」。「時間」と人間の関係については考えさせられます。

モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語
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ロマン派の音楽は特に、文学の表現から得られるインスピレーションが多くあります。また幼い頃に印象に残ったお話というのは、一生涯に渡り大きな影響を与えます。海馬が柔らかいうちに「古典の名作をたくさん読む」のをおすすめすることで、本日の締めのごあいさつに代えさせていただきます。

また来週、お会いいたしましょう!


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ABOUTこの記事をかいた人

原田 真帆

栃木県出身。3歳からヴァイオリンを始める。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校・同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程1年在学中。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。佐々木美子、山﨑貴子、澤和樹、ジェラール・プーレ、小林美恵、ジャック・リーベックの各氏に師事。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。