進め! ヴァイオリンおけいこ道 第39回「発表会の運営」

今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。

今日のテーマは発表会の運営について。コスムジカでは、過去に先生視点で同テーマを2回取り上げています。しかし、お子さんの発表会の場合、親御さんのご協力が不可欠ですよね。

そこで今回は親御さんの視点から見た発表会について書いてみたいと思います。

誰が運営する?

まず、発表会の運営を誰がおこなうか、ということでご父兄の動きは大きく変わってきます。

これは門下によるもので、先生がすべての企画から会計までなさってくれるところもあれば、親御さんの中で幹事を決めて運営するところもあり、あるいは大学生など年長の門下生が幹事をつとめる場合もあります。

わたしが最初にお世話になったお教室では、すべて先生がやってくださいました。先生がいつもこだわりのデザインのプログラムを刷ってくださったのが、印象深く思い出されます。親御さんの役目はというと、先生と伴奏の先生方にお花を用意すること。毎年のことではありますが、一応サプライズの体だったのです。

その後、音高進学前にお世話になった先生のところでは、親御さんが幹事となって運営していました。ホールを予約するところから打ち上げ、決算報告まで、すべてが保護者の方の手でおこなわれます。お子さんの学年で、いちばん年上の生徒さんのお宅が幹事さんで、運営については資料などをもとに引き継ぎをしていました。

幹事をつとめることになったら…

このコラムは、おけいこ道を歩む親御さんを主な読者として想定しているので、ここでは親御さんが幹事さんをつとめる場合について取り上げていきます(でもきっと大学生が幹事の場合にも役立つかな…と思います)。

まず幹事の動き出しは、ホールの予約時期によると言えます。ホールによっては 1 年前から抽選に参加する必要のあるところも多いです。自分が幹事をつとめる 1 回前の発表会が近づいてきたら、ソワソワし始めたいところ。先輩や先生にお話をうかがって、始動に備えましょう。

役割分担

誰が何を担当するのか、役割を決めるとスムーズです。何人で分担するのか、代表者は誰にするのか、そして会計担当を決めることは、最重要です。

代表者名は、ホールを予約する際などに必要になります。先生のお名前なのか、それとも連絡先として幹事の方の連絡先をお伝えするか、先生と事前にすり合わせておきましょう。

また会計担当の方が決まったら、参加費などの徴収方法や、使用口座の有無や通帳などの確認をおこないます。ホールによっては前金が必要になるので、予算の把握は先々取り組みましょう。

会場確保

はじめは先生とご相談です。毎年だいたい同じ会場で開催されるところが多いと思います。先生と日程をご相談し(この段階で開催日程が決定です)、楽屋を借りるのかどうか、そしてホール入り・リハーサル・開場そして終演と完全撤収の時間は、はっきりさせておくと、ホールの方との打ち合わせがスムーズです。

ホールとの基本的なやり取りを誰がおこなうのかも、予約前にクリアにしておきましょう。

書類系

つづいて必要になるのが、発表会開催のお知らせ。今はメールでおこなうケースも多いでしょうが、そこはやはり、A4の紙1枚を使ってお知らせのお手紙を作っているところもあるでしょう。ここは前任者にフォーマットを引き継いでもらうと楽です。

開催のお知らせには、出欠確認も含みます。参加の意向を決めるには参加費も選考要素になるので、お知らせを出すときには大体の予算が出ていることが望ましいです。そのほか、発表会の企画を通して必要になる書類関係だと、当日のプログラムと、終了後の決算報告が挙げられます。このことから、会計担当の方が書類作成も担当されるとスムーズかもしれません。

ただプログラムの作成は曲名の校正やデザインなど地味に大変な作業なので、パソコン作業が得意な方にお願いしたいですね。

会計

もっとも重要とも言えるお仕事、会計係。お金の管理は責任重大です。会計係においていちばん大切なのは、記録を付けること。お金の出納はすべて明記して残します。

まずは予算の計画から。予算総額には、会場代に始まり、先生方への御礼も含みます。賛助出演してくださる方にはお食事・お飲み物も付けたいですね。またプログラムの紙など文房具系の出費もあります。

また終わってみたら、想定していたよりも出費が抑えられた、なんて場合は、返金作業が入ります。それとも翌年への繰越金とするのか、もし余剰金が出たら先生とご相談しましょう。

受付・舞台裏

こちらは当日必要なお仕事。まず受付ではプログラムの配布や花束受付といった業務があります。

受付担当の方は、当日は早めにスタンバイして、会場設営をおこないます。「受付」などの張り紙を事前に用意していきましょう。そしてペンや付箋、テープを持っていくと非常にスムーズです。これは経費で購入したり、引き継げるものがあったらそれを使います。

舞台裏には「影アナウンス」をする人やステージマネージャー(舞台上の楽器のセッティングをする人)などの役目が必要ですが、これは専門の人にお願いすることが多いです。また調律師さんを主催者が用意する場合もあります。御礼やお弁当の手配をお忘れなく!

小さいお子さんやそのご兄弟が多いところでは、お子さんが走り回ったりしないように、楽屋・ホワイエを親御さん同士でさりげなく巡回したりすると安心です。

その他

録音・録画係を設けるところもあれば、各ご家庭で撮影をするところ、またプロの方に撮影をお願いするところもあります。ホールの設備を使用したい場合は、ホールの方とよく打ち合わせしましょう。

打ち上げや反省会をおこなうところでは、ケータリング買い出し担当やお店予約担当を設けます。ケータリング形式の場合は紙皿からゴミ処理セット、そして残ったものを持ち帰るパックなどの小物も用意したいですね。

すてきな思い出にしよう

発表会の運営は誰にとっても楽ではありません。親御さんに運営をお願いしていた門下在籍時は、わたしの母も幹事を務めた回があり、なかなか大変そうだぞ、と子供ながらに感じました。

しかしそのときの先生は言います。

「親御さんにお願いするのは本当に恐縮なんだけれど、わたしが子供の頃についた先生のところでは、親御さんたちが本当によく発表会を作ってくれて、それはそれは温かいものだったのね。いつもすてきだなぁと思っていたから、わたしのところでも親御さんにお願いしたいなと思っているんです」

たしかに親御さんに運営してもらうと、親御さん同士の距離が近くなるので、生徒間の関係も密なものになります。門下生のみなさんとは卒業後も良い関係が続いていて、そんな先輩後輩の存在は音楽をともにがんばる仲間だと思えます。

でも先生が運営してくださる発表会も、生徒同士お互い付かず離れず程よい距離感があって、それはそれでよかったですけれどね。

何より発表会は成長を確認する場所。本番はうまくいくことばかりではないけれど、ふりかえったときに、子供時代のキラキラした思い出のひとつになるような、すてきな会にしたいですよね。舞台とは、裏方があってこそ成り立ちます。運営は多少手間がかかり面倒なことでもありますが、ぜひお子さんのために、一肌脱いでいただけると幸いです…!

参考記事
▷『生徒の発表会を開こう【準備編】
▷『生徒の発表会を開こう【選曲編】
▷『「発表会をしよう!」フルーティスト・岩崎花保編


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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。