こんにちは! 今週のおけいこ道のお時間です。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。
本日は楽器のアクシデントについて。デリケートな楽器を扱う以上、アクシデントはどうしてもついて回ります。今日はそんなお話です。
楽器が、弓が……!
楽器を長くやっていると、楽器のアクシデントは避けて通れないものです。
不肖わたくしが経験したアクシデントをいくつか挙げれば「駒が割れる・ペグを折る・弓のネジが壊れる・弓が折れる」など。
たとえば…小学5年生のときに初めて自分でペグを使って調弦するようになりました。というのは、それまで全ての弦でアジャスターを使っていて、週一のレッスンで先生が調弦してくれたのです。
レッスンでペグの動かし方を習って、家で練習するものの、まだ腕の力が十分ではなく、顎で楽器を挟んだまま逆手でペグをひねることが非常に困難でした(逆上がりもできなかったからなぁ…)。
一度できるようになってしまえば「てこの原理」で軽々とペグを回せるのですが、コツをつかむまではビクともせず、泣きながら練習しました。
そうしてキコキコのチューニングしまくっていたら、ある日駒を亀裂が横断していることに気がつきました。恐る恐る弦を外してみると、駒はすでに割れていたのに、がんばって立ってくれていたのです。おおなんと健気……。
アクシデント、そのときどう動く?
楽器に何かが起きたときは、慌てず騒がず、まず安全な形、それ以上被害が広がらない形で安置します。そして、決して自分でなんとかしようとせずに、ヴァイオリンの先生や、日頃お世話になっている職人さんにご連絡して、判断をあおぎましょう。
こういうときのために、かかりつけ医のような存在の工房さんや職人さんがあれば安心です。基本的には習っているヴァイオリンの先生にご紹介いただくのが良いと思います。
とにかく、演奏者は楽器の調整・リペアに関しては素人でしかないので、むやみに触らないことが大切です。
防げることと防げないことがある
楽器をうっかり落としてしまう、弓を壁にぶつけてしまう、といった類の事故は、防ぎようのあるもの。一方、弾いていて突然弓が折れたり、楽器の表板に裂け目ができたりすることは、木や部品の消耗や加齢により起こる、仕方のないものです。
楽器のアクシデントはとても驚かされるため心臓に悪く、またトラウマ級のものもありますが、防ぎようのなかった事故にはクヨクヨすることはありません。
そして過失による事故はかなり落ち込みますが、まずはどのように修復できるか相談し、その後でどうして事故が起こったか検証し再発防止に努めることの方が先です。起きてしまったことは取り返せないので、現実的に対処していきます。
なにより、人間の病気と同じように、不調の早期発見は事故の最大の予防です。何事がなくても定期的に職人さんに楽器を見てもらうことで、奏者が気づかなかった異変を見つけてもらえることも。また駒や魂柱(楽器の内部に立つ柱)は弾いているうちに動いてしまうので、その位置を整えてもらうだけで弾きやすさが変わります。
このように職人さんに楽器のコンディションを整えてもらうことを、楽器の調整と言います。大事な本番の前や、音に不調を感じることがあれば、ぜひ調整をお願いしましょう。
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