ヴァイオリン奏者のみなさま! こんなの、探していませんでしたか? 弦の両端に巻かれた糸の色で弦の種類を見分ける、その名も「弦の色図鑑」。
筆者がおよそ 4 か月かけてコツコツと作りあげました。世のすべての弦を載せたわけではありませんが、日本で流通している主だった弦の情報は網羅しています。弦を買い換えるときや新しい弦を試したいときに、図鑑としてご活用いただければ本望です!
– 凡例 –
弦の銘柄名(テールピース側の糸の色)
素材。「メーカー公式サイトからの引用」をもとに特徴を記述。分数楽器の有無。弦のテンションなどの種類。色デザインの補足。
*=筆者の個人的な声です。よろしければ参考にしてください!
目次
ねじねじ部門
単色部門(次ページ)
- トマスティーク
- ピラストロ
- ダダリオ
- ヤーガー
- オプティマ
- ヒル
色不明部門(情報募集中)
(次ページ)
情報お待ちしています。
ねじねじ部門
ねじねじとは、弦のテールピース側に巻かれた糸のデザインが“シマシマ”になっているもののことです。しま模様を使ったメーカーではピラストロが代表的ですが、“そっくりさん”もたくさんいるので、色で判別していきましょう!
Pirastro(ピラストロ)
しましま模様の代表格・ピラストロ。ドイツ発の大手メーカーで、ガットからスチールまで幅広い展開をおこなっています。また分数楽器の種類も充実。ピラストロ社のほぼすべての弦が、ペグ側の糸の色が【E線・その銘柄のカラー、A線・紺、D線・ピンク、G線・茶色】で統一されています。テールピース側の色合いは弦のブランドごとに変わります。分数楽器は、3/4-1/2 は黄色、1/4-1/8 は水色、1/16-1/32 は紫のラインがペグ側に入ります。
すべてE線はボールエンド・ループエンドが別に販売されています。また弦によっては封筒入りとストレート(まっすぐな状態)の用意があります。それでは、多彩な色展開が魅力のピラストロ社の弦をご紹介していきましょう!
(本当はシマシマが右巻きか左巻きか、という区別もあるのですけれど、ちょっと疲れました、ごめんなさい)
Oliv オリーブ(白×深緑)
ガット。「輝かしい音、幅広い音色」を持つ。分数楽器なし。E線は 3 種、A線 4 種、D線 8 種、G線 5 種。D・G線のエンドは結び目状(=ノットエンド、写真参照)。E線の巻きは単色の緑。糸倉側の巻きの一部に赤、ピンクなどのラインが入っており、この種類を区別できる。ストレートあり。
*現代的なガット弦としては最もポピュラー。柔らかな音色から愛用する人も多い反面、調弦が狂いやすい、気候に左右されやすいことから、コンクールなどには不向きとする声も。
Gold ゴールド(白×黄)
ガット。「コスパがよく、明るい音がするガット弦。スチールのE線が有名」。分数楽器なし。E線 3 種、A・D・G線は各 1 種。E線は単色の黄色。D・G線はノットエンド(オリーブに同じく)。ストレートあり。
*実際の使用者はほとんどE線に限られる。ほかの弦と組み合わせたときにE線がまろやかに出る(気がする)。
Passione パッショーネ(白×茶)
ガット。「パワフルな音、とても良い反応」を持ち、「これまでのガット芯の弦に比べて、調弦の安定感が確実に増した」弦である。分数楽器なし。E線 3 種、A・D・G線それぞれ 5 種。糸倉側の巻きに水色のラインが入っていたら「Passione Solo パッショーネ ソロ」という上位機種。E線は単色の茶色。通常版もソロモデルもストレートあり。
*ガット系の弦ながら、丈夫で張りがある。一番張りが強い系弦よりはしなる。ピラストロ社でいえばオリーブとエヴァの良いとこ取りの感じ。価格はピラストロの中でトップレベルに高い。
Eudoxa オイドクサ(白×紫)
ガット。「あたたかく、複合的(単純ではないと言いたい)で丸みのある音」がする。「弦の張りは柔らかめ」である。分数楽器あり(1/2以上)。E線アルミ 2 種・スチール 1 種、A線・D線が各 4 種、G線は 5 種。E線は紫単色。ストレートあり。
Eudoxa-Aricore オイドクサ-アリコア(白×青)
化学繊維。A線のみの弦。「芯はポリエステル」で「ガット芯のA線の代替品」にできる。「暗めの音」で、弦の「反応がよい」。分数楽器なし。A線 3 種。ストレートあり。
Obligato オブリガート(赤×黒)
化学繊維。「輝かしく良く響き、音のボリュームもかなりあり、反応がとても良い」弦。分数楽器あり(1/8以上)。E線ゴールド 3 種・スチール 1 種、A線アルミニウム・スチール各 3 種、D線シルバー・アルミニウム各 3、G線シルバー 3 種。E線は単色の黒。一部ストレートあり。
*ガット弦の音色を好むものの、その不安定さから化学繊維に乗り換えたい人が最初に選ぶのがオブリガートという印象。ガットに似た音色だが、素材が非常に丈夫で切れにくい。
Tonica トニカ(白×赤)
化学繊維。「芯はナイロン」。「生き生きとして丸みのあるサウンドで、音の立ち上がりが良く、反応も非常に良い」。分数楽器全てあり(1/32まで…!)。E線アルミ・スチールそれぞれ 3 種、A線アルミニウム 3 種、D線シルバー・アルミニウム各 3 種、G線シルバー 3 種。E線は単色の赤。一部ストレートあり。
Synoxa シノクサ(白×桃)
化学繊維。「芯はナイロン」。「クリアで非常に輝かしい音、反応も良い」弦。分数楽器あり(1/8以上)。各弦全 1 種。E線は単色のピンク。ストレートなし。
Wondertone Solo ワンダートーンソロ(橙×緑)
化学繊維。「ダイレクトで、輝かしくクリアな音色」。「研ぎ澄まされた響きで、実に優れた反応の良さ」を持つ。分数楽器なし。E線スチール 1 種とアドヴァンススチール太さ 2 種、A線はアルミニウムとスチール各 1 種(スチールのみボールエンドが取り外し可)、D線・G線はシルバー各 1 種。E線とスチールA線は単色のオレンジ。ストレートなし。
Violino ヴィオリーノ(青×黒)
化学繊維。「温かくなめらかで丸みのある響き」で「ソフトで柔らかな感触」。「弓の圧力が低いときすら非常に反応が良く、弦の張りは弱め」。分数楽器あり(1/8以上)。各弦全 1 種。E線は単色の青。ストレートなし。
Evah Pirazzi エヴァ・ピラッツィ(緑×黒)
化学繊維。「とても強くてパワフル、ソリストに向いている」弦。「倍音が多く多層的な響き」で「反応はすばらしい」。分数楽器あり(1/8以上)。E線スチール 3 種とゴールド 2 種、A線・D線・G線は各 3 種。E線は単色の明るい緑。一部ストレートあり。
*ダントツに張りが強い。派手な音色でソリスティック、若者に人気。
Evah Pirazzi Gold エヴァ・ピラッツィ ゴールド(金×黒)
化学繊維。エヴァの上位ブランド。「輝かしく、ゴールデンな音」、「突出して印象的な、フルボディの響き」で、「傑出した演奏能力と瞬時の反応」を持つ。分数楽器なし。E線・A線・D線は各 1 種。G線がゴールドとシルバー各 1 種。E線はゴールド単色。一部ストレートあり。
*何年に出た新しい弦。袋のデザインは、エヴァと同じ女性の絵が金色になっている。弾いてみましたが、通常版よりまろやかさがあっていい気がします。
Flexocor-Permanent フレクソコア- パーマネント(黄×紅)
スチール。「クリアな倍音と残響を伴った、温かく丸みのある響き」で「すばらしい音の伸び」と「傑出した反応」がある。分数楽器なし。E線・A線・D線・G線各 1 種。E線は単色の紅色。ストレートなし。
No.1 ナンバーワン(白×黒)
スチール。E線のみの弦。「温かく甘く輝かしい響き」と「傑出した反応」の良さを持ち、「開放弦でもひっくり返らない」。分数楽器なし。E線 3 種。ストレートなし。
Eudoxa-Chromcor オイドクサ-クロムコア(白×緑)
スチール。A線のみの弦。上記「アリコア」同様「ガット芯のA線の代替品」。通常の「クロムコア」弦よりも「あたたかみのある音」が特徴。分数楽器なし。A線 1 種。ストレートなし。
*巻き巻きが似た色のオリーブとの見分けポイント:オリーブのほうが渋みのある緑。
D’Addario(ダダリオ)
アメリカのメーカー。本社の公式Instagramは自社弦を用いたすてきな写真や、プロによる演奏動画も投稿されているので、のぞいてみてはいかがでしょう?
ペグ側の色はすべての銘柄に共通で【E線:緑・A線:黒・D線:黄・G線:赤】。テンションによって【Lightだと黄色・Heavyだとオレンジ】のラインがペグ側に入ります。E線は基本的にボール・ループ兼用のようです。
ギターの弦も作っている会社で、エレクトリック系の技術やコネクションもあるため、わりとどの弦もエレキヴァイオリンになじむ模様(公式Instagramで、しばしば自社弦をエレキに張っているのが見受けられます)。またC線や通常のオクターヴ下のピッチのラインナップがあるのは珍しいです。
※エレキ用に関しては記事最後の「色不明枠」にあります。
Hericore ヘリコア(青×金)
スチール。「スチール線をより合せた」素材を使用、「安定したピッチで、素早く馴染み」「クリアな音色が特徴の、上級者にお勧めのバイオリン弦」。「通常の弦よりも細めに作られており」「優れたレスポンス」を持つ。分数楽器あり(日本語サイトだと1/8以上だけど、本国のサイトだと1/16もある模様)。弦のテンションはLight・Middle・Highがあり、それを含め、E線 6 種・A線 5 種・D線 3 種・G線 3 種(C線も 2 種類あるとの記載)。E線は単色の青。
Hericore Octave Violin ヘリコア・オクターヴ ヴァイオリン
従来の 1 オクターヴ下でシューニングする用の弦がある模様。ポップスやジャズ向けとは思うのですが、どういった用途で使用できるのか筆者は正確にわからなかったため、もしご存知の方がいらしたら教えていただけたら幸いです…。
Pro Arte プロアルテ(青×赤)
ナイロン。「ナイロン芯」による「優しい音色」が特徴で「温かみのある暗い音色がほしい人に最適」。「湿度や温度変化に強い」ので、「弦が馴染むのが早く中級者~アマチュア・プレイヤーにお勧め」。分数楽器あり(1/16以上、1/10なし)。E線 2 種・A線 1 種・D線 2 種・G線 1 種。E線は単色の赤。
Kaplan Amo カプラン アーモ(黄×黒)
化学繊維。音色が「明るい楽器」向きで「暖かさ、豊かさ、柔軟性」を出す。「弦が馴染むのが早く」「豊かな音色のカラーパレットと素晴らしい弓の反応」を持つ。分数楽器なし。弦のテンションはLight・Middle・Highがありそれぞれ 1 種類ずつ、つまり全ての弦で 3 種類ずつある。E線は単色の黄色。
Kaplan Vivo カプラン ヴィーヴォ(白×黒)
化学繊維。音色が「暗い楽器向きで「輝きと明瞭さとたくましい感触」を出す。「弦が馴染むのが早く」「豊かな音色のカラーパレットと素晴らしい弓の反応」を持つ。分数楽器なし。弦のテンションはLight・Middle・Highがありそれぞれ 1 種類ずつ、つまり全ての弦が 3 種類ずつある。E線は単色の黒。
Kaplan Violin E Strings カプラン ヴァイオリン Eストリング(白×黒)
スチール。E線のみの弦。「高品質のスチール弦」で「伝統的な豊かな響き」。「プレーンスチールやアルミなど」「幅広い性能ニーズに対応するため」かなり多くの種類があり、「独自のひっくり返りにくいE線」 も。分数楽器なし。全 11 種。
Zyex ザイエックス(山吹×紅)
化学繊維。「非常に暖かく豊かなサウンドを作」る。「新世代の化学繊維から作られており、激しい気候条件の下でも信じられないほど安定」する。弦を張って「数時間以内に」「ほかの合成弦よりも暖かい音で」楽器になじむ。「響きの明るい楽器での使用に最適」。分数楽器あり(1/16以上、1/10なし)。弦のテンションはLight・Middle・Highがありそれぞれ 1 種類ずつ、それを含め、E線 3 種・A線 3 種・D線 6 種・G線 3 種。E線もシマシマ。
Savarez(サヴァレス)
フランスのメーカー。使っている方、わりと見かけます。一見かなりピラストロっぽいですが、色がまったく違うのが見分けどころです。
ペグ側は【E線:青・A線:黒・D線:紫・G線:黄色】で統一されています。弦のテンションは全てに共通でForte・Medium・Medium Lightがあり、それぞれペグ側に【Forte:緑・Medium:青・Medium Light:黄色】のラインが入ります。E線はループとボールがあり、またE線のみテールピース側の糸はいずれも【青】です。
Corelli New Crystal コレルリクリスタル(水色×赤)
ナイロン弦。旧モデル「コレルリクリスタル」の改良版で、「新しいナイロンの使用」により「弦の抵抗感」が減少。「より豊かでエレガント」。「古典的な音質」を持ちながら「音量は増加」させて、「反応」と「音の伸び」の改善により「演奏しやすくなった」とのこと。分数楽器は3/4と1/2がある。
*旧モデル「コレルリクリスタル」は白×茶です
Corelli Alliance Vivace コレルリアリアンスヴィヴァーチェ(黄×緑)
「新原料の発見」により生まれた「弦の巻き材料の非常に新しい組み合わせ」をコンピュータ管理することで、品質管理を徹底している。「大きくて深みのある響き」「倍音」「(鳴らしにくい)ハイポジションでも素早い反応」「ピアニッシモ」「軽やかなスタッカート」そのいずれにおいても変わらぬクオリティの高さを実現した。分数楽器なし。E線は単色の青。
Cantiga カンティーガ(青×紫)
Larsen(ラーセン)
— Larsen Strings (@larsenstrings) 2015年2月9日
デンマークのメーカー。ピラストロのまきまきよりも、間隔が広い巻きなのがわかりやすい見分けポイントです。
ペグ側もテールピースも全部同じ色の糸なので、袋から出したあとは注意が必要です。でも大丈夫、ボールエンドのボールの色が弦ごとに分かれていて、ヴァイオリンの場合【E線:金・A線:銀・D線:銅・G線:黒】となっています。またE線はすべてループエンドとボールエンドが別に販売されています。
袋が封蝋(ふうろう)で留まっていてかっこいいです(ロウの上にミシン目が入っているので、ロウは壊さずに開けられます)。
Larsen Original ラーセン・オリジナル(山吹×紺)
カーボンスチール。「チューニングのすばやい安定性」を持ち「一貫性があり暖かい音色」そして「はきはきとした感触」。「頼もしく、たくましい音の飛び」があり、「暖かさをすこし補強したい、明るい音色の楽器に最適」。分数楽器なし。E線 3 種・A線 4 種・D線 6 種・G線 3 種。E線は単色の山吹色。ペグ側の糸の色は全弦共通でテンションごとにソフト:青、ミディアム赤、ストロング:黄。袋は水色。
Larsen Virtuoso ラーセン-ヴォルトゥオーゾ(山吹×紺)
化学繊維。「革新的な素材」によって「絶妙な音量と音色」が出せる。「頼もしく優れた反応」。「緩やかな張力で設計され、暖かく中立的な音色の楽器に合う」。分数楽器なし。弦のテンションはミディアム・ストロングがあり、それを含めて各弦それぞれ 2 種類ずつ。E線は単色の水色。ペグ側の糸の色は全弦共通で乳白色、ストロングテンションだと黒ラインが入る。袋は赤。
Larsen Tzigane ラーセン-ツィガーヌ(山吹×紺)
化学繊維。ラヴェルのヴァイオリン楽曲『ツィガーヌ』に得てできた弦なので、この名がついた。「官能的な暖かさ」のある響きで「豊かで滑らさの溢れる音」。「 迅速かつ優れた反応」で、 「明るい音色の楽器」に向いている。分数楽器なし。弦のテンションはソフト・ミディアム・ストロングがあり、それを含めて各弦それぞれ 3 種類ずつ。E線は同配色でシマシマのみない形。ペグ側の糸の色は全弦共通で明るい水色で、テンションごとにソフト:青・ミディアム:赤・ストロング:黄のラインが入る。袋は紺色。
Dogal(ドガール)
イタリアのメーカー。ギターとヴァイオリン族の弦を作っています。ほかのシマシマと比べると、模様が完全に水平なボーダーで、巻きが細かいのが特徴です。ペグ側の色は(少なくともシマシマ部門は)共通で【E線:緑・A線:水色・D線:黄色・G線:赤】。
Capriccio カプリッチョ(青×緑)
化学繊維。服飾などに使われる「マルチ糸」という、目が細かく「炭素含有量の多い」繊維を使用しており、「響板にかかる圧力が天然繊維のよう」である。これが「ボリュームの大きい響きの質を保証している」。分数楽器なし。各弦全 2 種(“ソリスト”と“オーケストラ”がある)。E線は基本ボールエンドで、取り外し可能。
*パッケージにパガニーニの絵。
Vivaldi ヴィヴァルディ(水色×赤)
化学繊維。「しっかりとボリュームのある響き」と「音の陰影」を持つ。ガットにも似た音色、とのこと。分数楽器あり(1/10を除く1/16以上すべて)、ただし手に入りにくそう。弦のテンションはForte・Media・Lightがある。E線は基本ボールエンドで、取り外し可能。
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