進め! ヴァイオリンおけいこ道 第11回「学校と折り合う」

今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました! ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆です。

さて、本日は学校とおけいこについて扱います。

秋はコンクールの季節! でも…

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夏から秋にかけては、俗に「コンクールシーズン」と呼ばれていますが、スポーツの秋、芸術の秋ということで、中学・高校では運動会や文化祭が開かれる学校も多いことと思います。おけいこ道を歩むみなさんはただでさえ忙しいのに、秋は定期テストもあったりして、行事とテストでてんやわんや。親御さんとしては、なかなかヤキモキしますね。

運動会の練習や文化祭の準備で放課後も拘束されると、練習やレッスンのスケジュールに支障が出ます。学校行事の厄介なところは、あからさまに非協力的な姿勢だと、クラスメートや先生から白い目を向けられることもある点。その目を温かいものにするには、日頃から働きかけて理解を得るしかありません。

藝高に入ったときには、いろいろな話を聞きました。周りがとても協力的で、理解を得て受験に臨めた人もいれば、まず受験期間が長いこと(実技試験と筆記試験が複数回あるのでどうしても長くなる)を理解してもらうのに苦労したという人も。

学校によっては、「部活動の参加が必須」だったり、「いやいや放課後は自由に使えた」など、状況は本当に人それぞれで、苦労した人の話を聞いていると「部活もあったのにピアノで入学するなんてすごい…」と感嘆したものです。状況は言い訳にならないんだな、と思ったのをよく覚えています。

どうしたら理解を得られる?

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特殊な進路に理解を得る、というのは難しいもの。最後まで先生に理解を得られず、険悪になった、という人も少なくありません。しかし戦わずして自由は得られません

わたしはかなり理解を得られた方ですが、その下地には、わたしが「将来の夢はヴァイオリニスト」と公言していたために、それが周知の事実になったこと、そして応援するスタンスでいてくれる先生・クラスメートに恵まれたことがあります。

もちろん初めからみんなが認めてくれたわけではなく、以前下校班での出来事を書いたことがありましたが、「ヴァイオリニストなんてなれるわけないじゃん!」とバカにされたことはいっぱいあります。

しかし実はそれ以上に面倒だったのが、中学校で部活に入らなかったのは「ガリ勉になるため」と一部の人に勘違いされたこと。だからテストで良い順位を取ったときに、「帰宅部だから当然じゃね?」と言われた日には超スーパー級に悔しかったし、「あんたらの部活の時間より練習時間のが長いわ!」「部活やるよりもよっぽど忙しいわ!」と心の中でツッコミを入れていました。

……というのは正確ではなくて、面と向かって「ヴァイオリンやってるから、普段はノー勉だよ!」という具合に、言い返したことも多々あり(汗)

そのような日常の布教活動があまりにブレないので、しばらくすると「ああこいつ、ふざけてるんじゃなくて本気でヴァイオリニストになると言ってるのか」と受け入れられていきました。それでもまさか音大まで行って、本番などをするようなところまで行くとは思っていなかった人もいたらしく、成人式の時に「まだヴァイオリンやってるんだ!」と驚かれたりもしました。布教活動は現在進行形です。

入学式でのひとこと

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わたしの場合は比較的うまいこといきましたが、こうした尖ったことをするといじめられることもありますよね。だから目立たないようにしている方もいらっしゃると思います。

藝高の入学式で、当時の校長先生が祝辞の中でこうおっしゃいました。

「あなたがたの中には、これまで、音楽をやっていたことで、いじめられたという人もいることでしょう。でもこれからは、同じく音楽家を志した仲間と、そうした心配なしに学んでいけるのです」

当時の校長先生ご自身が、ピアニストとしてたくさんのお弟子さんを見てきた中で、そうした状況に胸を痛めてきたのでしょう。ちょっぴり悔しい思いをしたわたしですら胸をすく思いでしたから、この言葉に救われた人、どれだけいたでしょうね。

自分の環境は自分で選ぶことができるんだな。そうも思った入学式でした。望んだ環境に辿り着くまでは大変ですが、そうして得た「自由」は、「不自由」に勉強する環境の何倍も有益であると、わたしは思います。


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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。