【超入門】実はあのドラマの曲もオーケストラだった!【オーケストラ】

オーケストラになじみのない方にも楽しくオーケストラを知ってもらうため、全4回にわたる超入門シリーズをお送りしています!

これまでは、オーケストラの仕組みや、それぞれの楽器の奏者の特徴などをご紹介してきました。

▶︎第1回:「【超入門】オーケストラ奏者はひな壇芸人だった!?【オーケストラ】
▶︎第2回:「【超入門】オーケストラの中の人を大解剖! 弦楽器編【オーケストラ】
▶︎第3回:「【超入門】オーケストラの中の人を大解剖! 管打楽器編【オーケストラ】

今回はいよいよ実践編。前半では、メディアで使用されている有名なオーケストラ曲、後半ではオーケストラを楽しむちょっとしたコツを紹介していきます! どうぞお楽しみください🎵

これもオケ曲だったのか!

“ワルい成宮寛貴” のあのドラマは……

2016年1月クールに放送された日本テレビ系ドラマ『怪盗 山猫』。3年ぶりに亀梨和也さんが主演を務めたことや、物語終盤でまさかの真実が発覚する驚きの展開で話題になりました。実はこのドラマの冒頭にかかる音楽に、オーケストラ曲が使用されていたのです!

曲はドヴォルジャークの交響曲第9番『新世界より』の第4楽章で、ドラマやCMではよく出だしが使用されます。

33 分 54 秒から始まる 4 楽章、出だしの力強い刻みは弦楽器の総力。一生懸命刻んで盛り上げたところで、この動画では 34 分 11 秒あたりから入る金管楽器にさっそうとメインの旋律を持っていきます。

ドヴォルジャークは故郷であるチェコラブ♡、かつかなりの鉄ヲタとして知られています。この交響曲は、彼が50代でアメリカの音楽学校に教師として赴任した際に書かれたものですが、当時のアメリカはまさに南北戦争が終わって国が急激に成長していた頃。石油と電球が普及して、ニョキニョキとビルが建つニューヨークの景色に、ドヴォルジャークは『新世界』を感じたわけです。

お父さんもオーケストラだったのか

こちらの動画は、テレビを見る人なら誰もがおなじみのメロディのはず。まずは聴いてください。

その通り、白戸家の音楽です。こちらはロシアの作曲家プロコフィエフが、あの「ロミオとジュリエット」を題材に書いた組曲で、おなじみのメロディが使われる第1曲目のタイトルは『モンタギュー家とキャピレット家』です。

聴き方のコツ!

耳なじみがある、街角でよく耳にする音楽をいくつか取り上げましたが、「クラシックっていつも知っている曲が聴けるわけではないから退屈眠くなる」という声が聞こえてきます。そこで、知らない曲でも楽しんで聴く方法をご紹介したいのです。

ちょうど、フィギュアスケートのシーズン開幕が近づいてきました。この2016-17シーズンの浅田真央選手の使用楽曲が公表されています。これがそんなに世間では知られていないオーケストラ曲なので、こちらを題材に解説していきます!

浅田真央選手の2016-17シーズン使用楽曲を予習しよう!

今年の浅田選手は、なんとショートプログラムでもフリースケーティングでも同じ曲を使うという初の試みに挑戦。その曲はファリャ作曲のバレエ音楽「恋は魔術師」の中の一曲『火祭りの踊り(リチューアルダンス)』。

浅田選手のフリーで使われるのは原曲同様オーケストラバージョンで、ショートではピアノ編曲版だそうです。ファリャは、ちょっと珍しいスペインの作曲家。しかもこのオペラはジプシーの舞踏家の依頼で作ったために、アンダルシアの香りムンムンの音楽です。

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知らない曲でも楽しく聴く方法……それは今どのパートがメインなのか、場面場面での主役に耳を凝らすこと。そしてその場で聞こえる音を味わうこと。慣れてくると音を聴くだけで何の楽器が演奏しているのかわかるようになります。

では実際どのように聴くのか。この曲、動画の最初と最後の拍手タイムを省くとほんの4分ほどなので、主役の楽器の移り変わりを動画に合わせて全部解説させてください

※動画は解説の最後に掲載します。

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まずはヴィオラの不気味なざわめきに始まり、16 秒あたりからピアノが入ってきます。そして 22 秒からのソロは木管楽器のオーボエ、なんともなまめかしくオリエンタルなメロディです。同じメロディを次にヴァイオリンが受け継いでいき、曲は展開されます。

1 分 10 秒からの張りのある音色は金管のホルン、1 分 17 秒からは同じ旋律をフルートが吹くことで音色を変えます。

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1 分 39 秒から再びオーボエが主旋律を担います(この曲の艶を出しているのはオーボエですね)。しかし 1 分 54 秒からのソロは、オーボエからクラリネットへ、途中でナチュラルにチェンジしているので、耳を凝らしてみてくださいね。

続く這う(はう)ような音の連打は、ヴィオラをベースに、ヴァイオリンにフルートやクラリネット、ハープ、ピアノが混ざっています。その後冒頭と同じような流れを繰り返しますが、ヴァイオリンがいい感じにメロディを奏でていたら、3 分 50 秒のところでまたナチュラルにホルンに華を持っていかれるのにお気づきいただけます。

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ホルンのソロの間、弦楽器は細かい音を刻み続けます。そして一気にフィナーレへ、全員で強い音を連打して派手に終わります。

それでは、いざ聴いてみましょう。 ファリャ作曲、オペラ「恋は魔術師」の中から『火祭りの踊り(リチューアルダンス)』です!

“ちょっと知るだけ”で楽しくなる

このように聴いてみると、まるでサッカーの試合を観戦するのに似ているかもしれません。今ボールはどこかな? でもボールを持っていない選手も暇をしているわけではなく、今後の試合の流れを考えていい位置に移動してパスを待っていて……。オーケストラだってそう、自分のパートが目立たないときこそ踏ん張りどころ。それぞれの奏者が常に良い緊張感を持って臨んでいるのです。

演奏会に行くときは……

……ということを書いていたら、とても長くなってしまったので、記事を分けることにしました😅

後編では「演奏会をお得に聴く」方法も大公開……!? 実際に演奏会に行くときは、どのように選んだらいいのか、どんな準備をしていくと良いのか、当日はどんなふうに楽しんだらいいのか……後編にてお届けしたいと思います! つづく(全 4 回とはなんだったのか)

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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。