夏休み特集③ 吹奏楽部員に聞いた「吹奏楽コンクールの自由曲とその思い出」

こんにちは! コントラバス奏者、吹奏楽指導者の井口信之輔です。

夏の風物詩、全日本吹奏楽コンクールにスポットを当てて書いてきた記事は今回が最後になりました。

この記事では、SNSを通し「自由曲にまつわるエピソードを募集しています!」と呼びかけた結果集まったエピソードを、原文のまま紹介します。

僕も中高生の頃は、今年はどんな曲を演奏するのか、誰かソロを演奏するのか、定期演奏会や地区の音楽会で演奏された曲が自由曲の候補なのかと、顧問の先生の選曲に異様なほどにアンテナを立たせながらドキドキしていたのを思い出します。

一夏を駆け抜けた若き音楽家たちの語る生の声を、どうぞお楽しみください!

心に残る、“僕の” “私の” 自由曲

高昌帥『Ballad for Wind Orchestra』

最初は音程高すぎ、音でない、つまらないって思ってましたが、吹き続けることで曲のよさが伝わってしまい、本番のコンクールでは、思わず静かで穏やかな局面で泣いてしまいました…笑

(10代 男性/ユーフォニアム)

10代の男性から届いたエピソード。

高 昌帥(こう ちゃんす)さんの作品は近年のコンクールや演奏会でたくさんの学校が取り上げていますね。

複雑で技巧的な曲が多く、はじめは演奏するのも大変ですが、曲とともに過ごしていく時間が増える中で、その曲のもつよさを知り、だんだんと好きになっていき、心に残る一曲になる。

彼はどの場面で涙を流したのでしょうか、素敵なエピソードを有難うございました!

三善晃『交響三章』

最初はわけわかんなくない? と思い乗り気じゃなかった三善晃の交響三章。

「お前たちは根暗だからぴったりだ」とか「いいかここは弦の音出せ!! クラもビブラートかけろ!!」などと、めちゃくちゃなことを言われながらも(結局ビブラートはかけなかった)みんなで頑張った思ひ出。

(20代 女性/クラリネット)

日本の作曲家・三善晃(1933-2013)が日本フィルハーモ二ー交響楽団の邦人作品委嘱シリーズとして作曲したオーケストラのための作品。

管楽器に「弦の音を出せ!」と言うのは吹奏楽あるあるですね。オーケストラの編曲作品に取り組むときによく耳にする言葉です(笑)。

「ヴァイオリンみたいに! ビブラートかけて!」などの声に「うーん、ちょっとそれは難しいぞ」と思いつつ、試行錯誤しながら作り上げていく時間もよい思い出。「わけわかんなくない?」って思う曲も、演奏しているとちょっとずつ曲のよさに気がついていくんですよね。

天野正道『雫〜ウインド・アンサンブルのための〜』

やはり、昨年の『雫〜ウインド・アンサンブルのための〜』ですかね。最後のコンクールで吹いた曲ですし、顧問も体調が優れず本番直前までヒヤヒヤしました。

本当に井口先生にはお世話になりましたm(_ _)m

元々やりたかった曲ではなかったので最初はあまりやる気がありませんでしたが、この曲に触れる度に曲の魅力が伝わってきて、練習が楽しくなっていきました。

今でもときどき聞きます! コンクール後、千葉文の井口先生の話で泣いたもの思い出です。当日に、スーツなどギリギリまで準備してくださって本当にありがとうございました!

(10代 女性/ホルン)

おっと僕の名前が出てきました。体調を崩されていた先生と、講師(僕)がタッグを組んだ夏。

療養しながら、夏のコンクールに向けて頑張ってくれた先生。

本番は、これまで一緒に音楽作りをしてきた顧問の先生の指揮で演奏してほしいという思いを胸に、衣装も全部用意して会場に同行したことは今も覚えています。

願いは叶い、先生の指揮で演奏している姿を客席で見守ることができ、僕も役目を果たせた気がしました。やっぱり、ずっと一緒に音楽作りをしてきた顧問の先生の指揮で演奏している姿が一番合っていました。

スミス『アフリカ:儀式と歌、宗教的典礼』

こちらは僕のエピソードです。吹奏楽部に入って初めて出たコンクールの自由曲。

弦のいない編成をどこかダサいと思ってた当時、吹奏楽に興味をもち始めるきっかけとなった曲。聴くと今でも当時の仲間の顔が浮かんできます。

掘り出してきたみんなの寄せ書きを見たら、泣かせにきてる。

そんな思い出の自由曲は、スミス/アフリカ:儀式と歌、宗教的典礼です。

(30代 男性/コントラバス)

オーケストラ部でコントラバスを始めた自分にとって、弦楽器のいない吹奏楽の編成をなんかダサいって思ってたんですよね。でも、「こんなかっこいい曲もあるんだ」って吹奏楽に興味をもつように。

コンクールが近くなると「目指せ金賞!」とか「一緒に頑張ろう!」とか楽譜に寄せ書きしたり、先輩がお守り作ってくれたり、金賞のゲン担ぎにリアルゴールドおごってもらったりなんて青春エピソードもありました。

合同チームでの出演だったので「おい、あの子に寄せ書き書いてもらおーぜ!」とか男子部員はそんなことでも燃えるのです。

天野正道『「GR」よりシンフォニックセレクション』

初めてコンクールに出た曲が音が高く口がバテたり、先生にたくさん指摘をうけて自分が嫌になったりしてつらくて折れそうになった思い出があります。

そんなときに違うパートの先輩や、親友、セクションで一緒だった先輩に「ここで折れたらパート無くなっちゃうよ」や「○○の音いいじゃん!! 自信持って吹こうよ!」や「上の大会行こう!」と励ましの声や手紙をもらい、残りの練習を乗り越えられました。

残念ながら結果は銀賞でしたが私のパートにいた唯一の先輩と最後の演奏が楽しかったです。

改めて楽譜や手紙を読み返すと涙がこぼれてきます!

(10代 女性/ホルン)

天野正道さんは吹奏楽やオーケストラの作品をはじめ、アニメや映画、ゲーム音楽など幅広いジャンルの音楽を作曲しており、この「GR」というのは音楽を担当したオリジナルビデオアニメ「ジャイアントロボ」の略。

部活において、先輩の存在というのはとても大きいものですよね。

きっと、今でも音楽を耳にすれば励ましの声が聞こえてきて、手紙を読めば当時の記憶が鮮明に蘇るかと思います。音楽って不思議な力をもっているなと思います。

天野正道『エクスピエイション(贖罪)』

全てを賭けて「挑戦」し続けたこの夏。

私は部の代表として、二度も舞台から最高の景色を見させてもらいました。体が震えるほどの不安も緊張もあったけれど、やり遂げた誇らしさで胸がいっぱいで嬉しくて涙が止まりませんでした。たくさんの方々に支えられ、最高の仲間たちと共にここまでやってきて本当によかったと心から思えた瞬間です。

あとほんの少しの所で代表を逃してしまった悔しさは言葉に表せないくらいだけども、それでも、あの日舞台から見た景色は私にとって一生の宝物となりました。ありがとう。

(10代 女性/サックス)

この夏、チームを引っ張りながら、仲間と掲げた目標に向かって駆け抜けてきた部長さんからのメッセージ。緊張感漂う中で、出演順に学校名と賞がアナウンスされる表彰式で「金賞」という言葉を聞いたとき、きっと大きな歓声が上がったのかと思います。

全てを賭けて挑んだ夏、夢を叶え上位大会への切符を手にして見た舞台からの景色は、一生の宝物ですね。

きっと、仲間たちと忘れられない夏を駆け抜けてきたんだなと思うストーリーに鳥肌がたちました。これからもよい音楽を。

心に残る小さなドラマを大切に

舞台から伝わってくる気迫、演奏が終わって緊張がほぐれた表情での記念撮影、いつもの日常に戻ったような表彰式までの時間、そして再び張り詰めた空気と緊張感漂う中で迎える表彰式。

結果発表では、会場に響く歓声と静寂、嬉し涙や悔し涙を流す姿に心を打たれました。みなさん、本当にお疲れ様でした。

チーム一丸となって、ひとつの曲とともに駆け抜けた夏。

きっと、その過程で生まれた一人ひとりの心の中にあるドラマを、いつまでも大切に、これからも音楽が大好きでいて欲しいなと思います。

この記事を書くために、目頭が熱くなるようなエピソードを聞かせてくれたみなさん、有難うございました。中にはTwitterは恥ずかしいので個人的にメッセージを送ります! と熱いエピソードを送ってきてくれた人もいました。本当に、みなさんのお力添えあって記事が完成しました。

執筆中は、集まってきた自由曲を聴きながら執筆していましたが、自分自身また今後に向けての闘志が燃えてきました。

吹奏楽コンクールは秋になれば関東大会、東日本大会や全国大会とまだまだ続きます。次の大会に進む人は、また目標に向かって頑張ってください。

この記事を読んで、吹奏楽に興味をもってくださる方がおられたら、ぜひ若き音楽家たちの舞台に足を運んでみてください。

ABOUTこの記事をかいた人

井口信之輔

千葉県出身。洗足学園音楽大学卒業。クラシック音楽を軸にコントラバス奏者として活動するほか「吹奏楽におけるコントラバスの理解と発展」に力を入れており、SNSを通し独学で練習に励む中高生に向けた発信をおこなっている。また「弦楽器の視点から見たバンド指導」をテーマに吹奏楽指導者として多くの学校で講師を務めている。昭和音楽大学研究員、ブラス・エクシード・トウキョウ メンバー。これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事、指揮法を川本統脩氏に師事。趣味はアロマテラピーと釣り、ドライブ。