ベランダから音楽を。ドイツでおこなわれた「フラッシュモブ・ソノーロ」のレポート

初めましての方も、お久しぶりの方も、こんにちは。ドイツ在住、シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団ヴィオラ奏者のあきこです。

全世界で猛威を奮っている、新型コロナウィルス。日本でも徐々に勢いを増しているようすですが、みなさまご無事でしょうか? ドイツの状況もよくなく、国境閉鎖・入国制限はもちろんのこと、レストランや商業施設、学校もすべて閉じられ、外出制限の要請も出ています。

コンサートや興行公演は、一番はじめに制限対象になりました。私のオーケストラも3月12日から4月19日まで1カ月以上の活動停止が決まり、私はひたすら自宅で時間を過ごしています。

世間の誰よりも早く「ホームオフィス」を始めることとなった我々音楽家ですが、いろいろなオーケストラがさまざまなコンテンツを提供しようと奮闘しています。今回は、私が実際に参加したとある企画のようすをレポートしたいと思います。

バルコニーでの「フラッシュモブ・ソノーロ」inドイツ

ドイツよりも早く外出制限などをせざるを得なくなったイタリアで、「コロナウィルスに負けずにみんなで頑張ろう」とバルコニーでみんなで演奏をしたり歌を歌ったりする “Flashmob sonoro(フラッシュモブ・ソノーロ” がおこなわれ、話題になりました。(なお、ソノーロとは音楽用語で「朗々と響かせて」という意味。)

イタリアで行われている”Flashmob sonoro”の様子

これにならう形で、シュトゥットガルトにある3つのオーケストラ(シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団/シュトゥットガルト室内管弦楽団/シュトゥットガルト州立歌劇場オーケストラ)の音楽家を中心に、日曜日の18時にベートーヴェン作曲交響曲第9番『合唱付き』のメロディーをバルコニーや窓から演奏しよう、という企画がもちあがりました。

当日が近づくにつれ、シュトゥットガルトのみならず、ドイツ全土でそのような企画があるとニュース等でも知れ渡ることになりました。

音楽は“騒音”か?“希望”か?

実は私は、当日までこの企画にあまり乗り気ではありませんでした。イタリアのように明るく陽気なお国柄ならまだしも、ドイツ人はどちらかといえばきっちりとしてルールを守る性格。

Ruhezeit(直訳:休み時間)という静かにしなければいけない時間が決まっていたり、住宅によっては壁が薄かったり隣人と上手く兼ね合いを見つけなければいけないようなところもあります。私は中庭に向かって演奏する予定だったので、面している方々のご迷惑になってしまわないか、それとも励ますためにやるべきか迷っていました。

当日18時になって周りのようすを窺ってみると、ニュースやインターネットで企画のことを知ったであろう隣人たちが、窓を開けるのが見えました。私も、「誰か近くで弾いているのが聴こえるかもしれない」と思い窓を開けて耳を澄ましてみましたが、残念ながら近所では誰もやっていないようす。

しかし、窓を開けてくださった方々を見ていたら、せっかくなのだから聴いていただこうと思えるようになり、一応用意してあった楽器を取って窓の外に向かって演奏したのでした。何度か繰り返して延ばしても3分弱の短い間でしたが、終えた後にはたくさんの拍手や「ありがとう!」というお声をいただいて、こちらもとても嬉しい気分になりました。

一人ひとりが、今できることを

オーケストラの同僚たちも家族と一緒に参加したようで、彼らから送られてきた素敵なビデオをまとめたのが次の動画です。

 

本来であれば非常事態にこそ人々を励ませるのが我々音楽家だと思うのですが、今回の事態は一番初めに活動を停止しなければいけなかったのが私たちでした。そして、再開できるのは一番最後でしょう。

このような企画やオンラインでの配信などさまざまな代替案を考えなければならないのが現状ですが、音楽を通して隣人たちに喜んでもらうことができ、こちらまで元気をもらいました。

日曜日の18時にみんなで『第九』の演奏を、という企画はこれからも続くようです。この先どうなるのか先行きが見えず、不安な気持ちを抱えているのはみな同じ。今は自粛を含め、少しでも早く状況が落ち着くように、一人ひとりが自分や他人のためにできることをして、なんとかこの状況を乗り越えていきましょう。

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あきこ@シュトゥットガルト

あきこ@シュトゥットガルト

5歳よりヴァイオリンを、13歳よりヴィオラを始める。東京藝術大学卒業、ベルリン芸術大学修士課程卒業。ベルリン・ドイツオペラのアカデミーを経て、現在はシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団に在籍。