受験生のみなさまへ向けて、微力ながら受験情報、対策法、在校生(卒業生)の声を発信していくシリーズ、今回は【桐朋学園大学】を取り上げます!
受験対策
早期音楽教育をおこなうために作られた『子どものための音楽教室』を基盤として設立された桐朋学園大学。
一般入試でおこなわれる「音楽共通科目」は例年、特徴ある出題形式となっており、聴音と新曲視唱は専攻別に異なる課題が出されます。難題もあるので、どの科目も出題傾向をしっかりと把握し、さまざまな音楽様式に触れる、読譜に慣れておく、といった対策する必要があります。
楽典(作曲・指揮専攻以外の受験生)
60分でおこなわれます。出題傾向の変化はほぼ見られず、最初に「課題楽曲A」が示され、これが以後すべての問題に関連してきます。
問1は、示された2音間の音程を解答するもの。例年、複音程は単音程にして解答することが求められています。
問2では調判定が出題されますが、ここで正しい解答ができないとこのあとの解答に影響が出ますので、しっかりと答えられるように準備しておきましょう。問3は、和音の種類を問われます。
そして問4では「楽譜を要約しなさい」という問題が出題されます。これが桐朋学園特有の課題。非和声音が判断できれば大まかに解答することができますが、より確かに解答するためには、和声学を導入だけでも勉強しておいた方がよいでしょう。「属九の和音」の知識が必要な問いが出題された年度もあります。
続いて問5は、「課題楽曲A」の変奏の断片である「課題楽曲B」がいくつか示されます。そして、それぞれが「課題楽曲A」の、どの部分の変奏に該当するのかを解答します。これも、音楽の骨格となる和声進行を理解することで対策できます。
また、課題楽曲はA・Bともに、「曲想を表す楽語」と、譜面の冒頭に記される「楽器名」が一部空欄になっています。問6では、この空欄に当てはまるものを選択肢の中から解答します。これは、前後の音楽的な流れや音域などから解答を推察するものですが、一点、移調楽器の場合は実音で記譜されている点に注意してください。
そして最終問題は、移調に関する問いとなっています。「課題楽曲A」を一声ずつ4段の譜表に分け、臨時記号を用いて記譜します。ハ音記号を含め、どの音部記号に対しても、早く正確に移調できるように書き慣れておきましょう。
聴音
聴音と、次の項目の新曲視唱に関しては、ピアノ・作曲・指揮専攻志願者に「A課題」が、それ以外に「B課題」が課せられます。
A・Bの両課題とも、メロディー課題は「単旋律」「二声」「記憶」の3種類でおこなわれます。いずれの課題も「A課題」は「B課題」に比べて音の数が多い傾向がみられます。加えて両課題とも共通して転調や変化音も含まれますから、音感をしっかりと身に付けておきましょう。
リズムに関しては、アウフタクトで始まる課題などもあるものの、ほとんどは基本的なリズムで出題されており、これまでの出題傾向からすると複雑な連符が出てくることはありません。
和声聴音においては、「A課題」では2題の三声密集課題、四声体密集課題、そして四声体開離課題が課せられます。特に四声体に関しては、密集・開離形の両課題とも経過音などの動きが見られるため、声部の動きを聞き分ける力が必要となります。
「B課題」では、まず三和音と七の和音(基本形)を聞き取ります。最初に下声部を弾いてから和音が重ねられるので、それぞれしっかりと取りましょう。次の三和音課題も、最初から解答用紙に下声部が与えられています。最後に大譜表三声体、四声体の密集と開離の課題がそれぞれ1題ずつ。こちらは全て聞き取る必要があります。
新曲視唱
「A課題」では2題の課題が課され、いずれも20秒の予見時間ののち、8小節程度の課題を歌います。
1題目は、転調・変化音は多少あるものの、リズムは基本的なものばかり。曲想についての楽語や記号が詳細に記載されているので、それらに即した表現で歌えることが求められていると言えます。
2題目は、桐朋学園独特の視唱課題。リズム譜に従って手拍子をしながら旋律を歌う課題が課せられます。リズム譜にも多少アーティキュレーションが指示されていますので、視唱と合わせて表現できるように練習しましょう。こちらは過去問のほかにも、書籍『桐朋学園ソルフェージュ教育ライブラリー』(音楽之友社)に同様の形式の課題が掲載されているので、多くの課題に取り組み、慣れておくことが必要かと思われます。
「B課題」も、やはり2題の課題で、いずれも20秒の予見時間が与えられ、8小節程度の課題を歌います。
1題目では「A課題」同様、表現に注意を払います。
2題目ではピアノ伴奏付きの視唱課題が課せられます。ピアノ伴奏があれば和声を感じられ、歌いやすいかと思いますが、ピアノがメロディと違う音程を奏でたときにつられてしまわないよう注意してください。
卒業生の声
桐朋学園大学は、学生数の人数が少なく、学年や専攻を越えてとても仲が良いです。本学では専攻楽器のレッスンの他、オーケストラと室内楽、ソルフェージュ教育に重点を置いています。オーケストラや室内楽の授業では、多くの演奏の機会があり、現役演奏家として活躍されている先生方から専攻を越えて、音楽家として成長するために必要なあらゆることを教わることができます。
入試にあるような課題を扱う授業だけでなく、試験によってある一定水準が求められ、キーボードソルフェージュ、『子どものための音楽教室』を付属機関に持つ桐朋ならではの指導者を目指すためのソルフェージュ、現代作品にも対応したソルフェージュ、といった60以上のクラスに分かれて履修することが可能です。室内楽は、生徒達で組んだ様々な編成で年間を通してレッスンを受けることが可能です。私はフルート2重奏や、フルート 声楽 ピアノの編成でのレッスンを受けました。このように、桐朋学園大学は、将来音楽家になるために必要な教育プログラムがたくさん用意されていて、自分が願えば、どんどん勉強の機会が広がる学校です。
2017年からは仙川に新校舎が完成します。新しい環境で、桐朋学園大学でしか味わえないような素晴らしい経験ができると思います。(フルート専攻卒 A.M)
入試情報
・出願期間:平成29年1月5日(木)~1月14日(土)期間内消印有効
・試験日程:平成29年2月10日(金)〜2月14日(火)
※一般入試、音楽学科の場合の情報を掲載しています。
※詳細は公式ホームページの入試情報でご確認ください。
COSMUSICA編集部
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