卑弥呼のバッハ探究23「無伴奏パルティータ第1番 サラバンド」

こんにちは、ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆です。パルティータ第1番もあと2曲。バッハを弾くと、これまでにその曲を弾いたときのことを思い出します。

そういえばパルティータ1番を初めて弾いたのは、今日の曲・サラバンドがコンクールの課題曲だったことがきっかけでした。奇しくも翌年出場したコンクールでは同じパルティータ1番から別の曲が選ばれて、これは何かのご縁だと思い、残りの曲を制覇しようと思い立ったのがさらに翌年のこと。譜読みに夏を3回分費やしたのが、わたしのパルティータ1番の思い出です。

パルティータ2番と比べてみると

サラバンドといえば、以前取り上げたパルティータ第2番にも含まれています。そういえばパルティータ2番を取り上げた頃は夏でしたね。

 

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パルティータ2番のサラバンドでは、足をするような付点のリズムが特徴だと書きました。しかし今回のサラバンドはどうでしょう、付点など微塵も聞こえてきません。

 

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サラバンドというのは、重々しさがその特徴です。そして1拍目と2拍目に重さをおく3拍子です。2拍目と3拍目がしばしば結合された結果、符点のリズムが生まれました。そのため、もともとは同じ音価を3つ並べたシンプルな3拍子であったと推察されます。

パルティータ1番は2番と比較すると、形式しかり、曲調しかり、全体に原始的というかクラシカルな印象を受けます。特にこのサラバンドは、譜面を見るととってもシンプル! でもこのシンプルさにこそ難しさのワケが潜んでいます。

和音を弾くということ

 

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弦楽器は和音を弾くのに工夫が必要です。理由は4本の弦が弧を描くように並んでいるからです。2本の弦を鳴らす分には弓と弦を同時に接触させることが可能ですが、3本以上になると《2本ずつ鳴らして響きを混ぜる》という技術を用いています。

そしてさらに難しいのは、3本以上の弦を鳴らす拍が連続するとき。一旦高い音域の弦に弓を傾けたのち、すっと低い弦のほうに舞い戻らないといけません。この動作のタイミングが、前の音の切れ方の良し悪しや、音と音の間のノイズの有無、そして次の音の始まり方を左右するので、奏者はこの部分によく耳を凝らして練習をする必要があります。

ドゥーブルに聞く余韻

 

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さて、荘重な和音のあとに続くドゥーブルは、張り詰めた緊張感をほぐすかのように分散和音が用いられています。変奏を聞くことで、本編を回顧しながら、この曲はこうなっていたのか、こんな一面もあったのか、と理解を深められる気がします。

とりわけサラバンドという舞曲は、16世紀に起こったかなり古い踊りです。いにしえの栄華を懐古するような趣も感じます。わたしの場合、たとえば日本でいうと、平城京跡を見ているときのような気分になります(平城京のほうが古いのはわかっています、たとえです)。遺跡を見たときなど、いにしえと今をつなぐとき、なんだか不思議な感覚をもちませんか? 音楽って、そんなふうに “景色” を見せてくれることもありますよね。

緊張と安らぎ

サラバンドは重々しい、と何度も書いてしまってサラバンドちゃんごめんねという感じですが、この直前のジェットコースターのような楽章から流れついたサラバンドと考えると、ある種の安心も感じられます。

そしてサラバンドに続くのが、ちゃきちゃきとしたブーレです。束の間の休息、タイムスリップを経て、パルティータ1番はどのように結ばれるのでしょうか。どうぞ次回をお楽しみに!