From Austria 「湖上オペラの演出に感激! ブレゲンツ音楽祭での忘れられない観劇体験」

こんにちは。ヴィオラ奏者のあきこです。海外の演奏会をレポートしていく連載「World Concert Tour」、今回はオーストリア・ブレゲンツでおこなわれた「ブレゲンツ音楽祭」にて湖上で上演されるオペラを鑑賞してきたので、その様子をレポートしたいと思います。

湖のほとりにある街での音楽祭

7・8月は夏休みシーズン、ヨーロッパ各地では音楽祭が開催されます。今回訪れたのは、ドイツ・オーストリア・スイスの国境に位置するボーデン湖の東岸にある、オーストリアの街ブレゲンツ。

毎年7・8月に4週間ほど開催される「ブレゲンツ音楽祭」では、ボーデン湖の中に舞台が組まれ湖の上でオペラが上演されることで有名です。上演演目は2年ごとに変わり、2017・2018年のオペラはビゼー作曲『カルメン』でした。

上演は21時から。開場するまではチケットが無くても会場に入ることができ、また、有料の舞台裏ツアーや解説などもおこなわれています。特に舞台裏ツアーでは湖の上のセットの裏まで行けるようなので、興味のある方はぜひ参加されるとよいと思います。

私は舞台裏ツアーを予定に組まず、開演まではブレゲンツにある小さな山、プフェンダー山にケーブルカーで登ったり、ボーデン湖を廻るクルージングに参加して舞台セットを裏から見たりしてみました。

プフェンダー山よりボーデン湖を望む

夕暮れが広がり、日の入りが近くなると開演まではまもなくです。たくさんの人々が集まってきて、ワインを飲んだり会場付近を散歩したりしています。

オペラを観るのに特にドレスコードはありませんが、少しドレスアップしている人が多いように見受けられました。ただし、夜は冷え込むので、寒さ対策も欠かせません。何度もいらしているような方々は、風除けの上着や硬いプラスチックの椅子の上に敷くクッションを持ちこまれていました。

ライトアップされた舞台でついに開幕

開演前のライトアップされた舞台。左手に持ったタバコからは、ずっと煙が出ていた

湖の上に建てられた舞台セットは一目見るだけでも惹きこまれるような作りこみ。3幕でカルメンが自分の運命をカードで占うシーンがあるのですが、そこで自分の死を予想するカードをカルメンが投げ捨てた瞬間、がモチーフにされています。また、すべてのカードがプロジェクションマッピングのスクリーンになっていました。

今回買ったチケットは一番安い席でしたが、少し上ではあったものの遠すぎもせず、ちょうどよく舞台全体を見渡すことができました。また、後ろのほうだったのが幸いしてか、対岸の花火大会が途中ちらっと見えたりしたのもすてきでした。

字幕が舞台の両脇の少し離れたところにあったので、残念ながら私が座っていたところからは見切れてしまいましたが、ストーリーを知っていたので特に問題ではありませんでした。

非常におもしろいと思ったのが、別室で演奏していたオーケストラが常に映像で映し出されていたこと。オーケストラは客席の後ろの建物内にあるコングレスホールで演奏しており、そこからマイクで音を拾って会場に流していたようでした。

最新鋭の技術を使っていると言えど音を拾って送って流して…としているうちに多少のタイミングのずれも発生することだろうと思いますが、そんな問題をまったく感じさせず、オーケストラも歌手もすばらしく、かつ見事に合った演奏でした。

▼舞台裏を紹介する動画にオーケストラも映っています

また、私も普段オーケストラで演奏しているため、同業目線で見ていると「オペラではオーケストラ奏者はオーケストラピットに入って人から見られずに弾けるのに、ずっと録画されていてやりにくいだろうなぁ」と思ったり、「歌手がタイミングを取りやすくするためにあまり溜めを作らないように演奏しているなあ」と気づいたりということもありました(笑)。

ダイナミックな演出に息をのむ!

特筆すべきは、演出のすばらしさです。プロジェクションマッピングで柄が変わるトランプカードや、そのカードによじ登る麻薬密売人たちなど舞台を最大限に活用した演出が光ります。また、プロジェクションマッピングでは歌っている歌手が映し出される演出もありました。

さらに、湖の上ならではの演出もたくさんありました。舞台裏からモーターボートに乗って闘牛士エスカミーリョが颯爽と登場したり、半分水に浸かりながらのダンスがあったり、カルメンが舞台セットから湖に飛び込んで泳いで逃げたり…。パンフレットによると毎公演3人の潜水士がいるそうで、殺された人がモーターボートに積み込まれ、湖の中に沈められる、なんて演出もありました。

▼ダイナミックな舞台のダイジェストをぜひご覧ください

普通の舞台ではできない演出に引きこまれっぱなしでした! 最後はもちろん、カルメンがドン・ホセによって湖に顔を浸けられて殺されていました…(ちなみに種あかしをすると、服の下に酸素ボンベが隠されており、服の装飾の薔薇の花にマウスピースがつけられていたとのこと)。

▼種あかしされている動画

作品や歌手・オーケストラのすばらしさはもちろんのことですが、いつの間にか日が沈みきっていたことにも気がつかないほどに舞台とボーデン湖の雰囲気が一体化しており、それはもう本当に特別な体験でした!

バカンスにおすすめのブレゲンツ音楽祭

ブレゲンツへはボーデン湖沿岸にある各街から送迎船も出ています。送迎船は開演直前に着くので、ブレゲンツも観光したい方には向いていませんが、そうでなければボーデン湖でバカンスを過ごして一晩ブレゲンツでオペラを観る、なんてことも可能なわけです。

湖上オペラは天候によって外で上演されるかどうかが左右されてしまうのが難点ですが、湖上オペラのほかにも、音楽祭期間中はブレゲンツの街全体で劇場でのオペラや数々の演奏会が催されています。

なお湖上オペラの演目として、2019、2020年はヴェルディの『リゴレット』、2021、2022年はプッチーニの『蝶々夫人』が上演されることが決まっています。夏の特別なひと時に、ぜひ検討されてみてはいかがでしょうか♪

ABOUTこの記事をかいた人

あきこ@シュトゥットガルト

5歳よりヴァイオリンを、13歳よりヴィオラを始める。東京藝術大学卒業、ベルリン芸術大学修士課程卒業。ベルリン・ドイツオペラのアカデミーを経て、現在はシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団に在籍。