将来留学したいという希望を抱く音大生のみなさまにおかれましては、休暇などを利用して海外に行ってマスタークラスを受けたり、国内でも外国からいらした先生のレッスンを受ける機会があると思います。
そんなときに、多くは英語で先生をコミュニケーションをとることになりますが、ふと「こんなときは何て言ったらいいんだろう!?」と焦ることはありませんか?
そこで今回は英国留学中の筆者が「留学を考えて、とある先生のレッスンを受ける音大生」をターゲットに、先生とのコミュニケーションに役立ちそうな英語での表現を考えてみました!
はじめに
英語の会話において “How are you?” は欠かせません、きっと先生から聞いてくださるので、“Good!” と返しておきましょう。あるいは、はじめましての先生だったら “How are you?” の代わりに「はじめまして」に相当する “How do you do?” “Nice to see/meet you.”のごあいさつをお忘れなく。
「よろしくお願いします」のニュアンス
先生とのやりとりで頻出の「よろしくお願いします」という挨拶。英語にはこれに相当する言葉がないため、このニュアンスを表現することは難しいです。そこで考えたいのが、その「お願いします」にはどんな意図を込めたいのか、ということ。「お願いします」で全てを包括できる日本語に比べると、英語という言語は目的別によりコミットした表現を好みます。
レッスンが始まるとき
レッスンの最初に伝える「よろしくお願いします」だったら、これからレッスンしてもらうことに対する依頼の意味合いや、それまでの時間との区切りを作る意図がありますよね。そこでわたしはレッスン開始時の「お願いします」の意味合いとしては以下のようなフレーズを提案しています。
- Today I am going to play Sonata No.9 by Beethoven.
今日はベートーヴェンの9番のソナタを弾きます。
あるいは、先生の側から「What piece do you want to play?」などといった具合に尋ねてくださるケースも多いと思います。
予定など未来の話に対して
メールも含め、次のレッスンの約束や、伴奏の先生とのリハーサルの予定を相談するときなどの「よろしくお願いします」をどう言ったらいいのか、という質問もよく受けます。こちらの場合は、未来のプランに対しての発言になるので、以下のようなフレーズで言い換えられます。
- Thank you, see you on next Thursday.
ありがとうございます、では来週木曜日に。 - I am looking forward to playing with you!
先生と一緒に演奏できるのを楽しみにしています!
前者は次の予定が決まったタイミングで使えます。ここで注意したいのが、1週間未満の近い未来だと “next ○○day” ではなく “this ○○day” と言うこと! たとえば “next weekend”と言うと、「今週末」ではなく「来週末」になってしまうのです。不安なときは、ぜひ日付も確認してくださいね!
後者はメールの締めなどで便利です。このフレーズはかなり使い回しが利きます。“I look forward to 【名詞】” で “【名詞】を楽しみにしている” という意味なので、たとえば友達からコンサートのお誘いを受けたときには “I’m looking forward to your recital!” なんて感じで使えます。
質問をしたいときは…
レッスンの中で疑問点が発生したら、どのように尋ねましょうか。ここでは質問の切り出し方を考えます。
まず質問があることを伝える
もちろんいきなり具体的な質問をしてもよいのですが、日本語でも「お訊きしたいことがあるのですが…」なんて切り出し方がありますよね。英語だと以下のようなフレーズが挙げられます。
- I have some questions.
いくつか質問があります。 - Can I ask you a question?
質問をしてもよいですか?
詳しく尋ねる
質問時に大活躍するのが、助動詞【Can・Could・Would】。これらを用いた依頼構文を使って尋ねます。
- Could you show me your fingering?
フィンガリングを教えてもらえませんか? - Would you tell me about your collage?
先生が教えている大学について教えていただけますか?
“Would” や “Could” は大変ていねいな言い回しです。英語圏では先生と生徒の関係性がかなりフレンドリーなので、実際にはカジュアルに “Can you 〜?” と言ってしまうことのほうが多いですが、どの助動詞を選ぶかは、状況や先生の雰囲気によりけりです。
予定や連絡先を尋ねたい場合
もし今後も先生とのつながりをもったり、もう一度レッスンをお願いしたりしたい場合、ご連絡先をうかがいたいですよね。そんなときに使える例文を見ていきましょう。
レッスンの約束をしたい
- Is it possible to ask you another lesson?
もう一度レッスンをお願いできますか? - Do you have any time for next week?
来週お時間ありますか?
“Is it possible to 【動詞】? ” で「【動詞】していただくことは可能ですか?」という敬語的言い回しをすることができます。これを応用すると、たとえばレッスンの最初に録音の可否をうかがいたいときには “Is it possible to record your lesson?” とお尋ねすることができます。
連絡先をお尋ねする
- May I have your contact detail?
先生のご連絡先をうかがえますか? - Let’s keep in touch.
連絡を取り合おう(主に先生が使う)
“May I 〜?” はとてもフォーマルな表現なので、関係性によって “Could I〜?” “Can I〜?” に言い換えることができます。ただ個人的な意見ですが、話し始めを「Could I 」と始めるのは日本人の口にとって慣れないと発音的に難しいので、「May」や「Can」のが聞き取ってもらいやすいかもしれませんね。
“Let’s keep in touch.” は、すぐに会う機会がなくても、また会えるように連絡を取り合おう、というニュアンスで、たとえば先生が生徒さんと連絡先を交換したときにおっしゃったりします。生徒側からはあまり言いませんが、よく使われるフレーズなので併せてご紹介します。
まずは口に出してみる
慣れない言葉を使う場面は、緊張してしまったり焦ってしまったりするもの。そこでわたしからは、使いたいフレーズを事前に何度か唱えてみることをオススメします! 頭でわかっていても、口がその言葉の形を作ることに慣れていないと、うまく話せないものですが、反対に体が覚えていればフレーズがふっと出てくることがあります。
そして日本人は英語を話すときに、自信のなさから声が小さくなってしまう傾向が強く、純粋に声が小さくて相手が聞き返しただけなのに、二度言うことを尻込みしてしまうパターンも少なくありません。特に日本語は英語に比べて起伏の少ない言語なので、英語を話す際は少しはっきりと発音するようにしてみるのがおすすめです。
最新記事 by 原田 真帆 (全て見る)
- 次々に演奏し、ばんばん出版。作曲家エミーリエ・マイヤーが19世紀に見せた奇跡的な活躍 - 24.05.18
- ふたりで掴んだローマ賞。ナディア&リリ・ブーランジェ、作曲家姉妹のがっちりタッグ - 23.10.30
- 投獄されても怯まず、歯ブラシで合唱を指揮。作曲家エセル・スマイスがネクタイを締めた理由 - 22.11.07
- 飛び抜けた才能ゆえ失脚の憂き目も経験。音楽家・幸田延が牽引した日本の西洋音楽黎明期 - 22.09.28
- 「暗譜」の習慣を作ったのは彼女だった。クララ・シューマンという音楽家のカリスマ性 - 22.01.30