進め! ヴァイオリンおけいこ道 第44回「その汚れ、大丈夫?」

今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。

本日のテーマは楽器の汚れについて。特にお子さんが小さいうちは思いがけないことが起こります…。

練習の証…不可避な“汚れ”

楽器の汚れの種類はいくつかあります。

まずは松脂(ヤニ)の付着。これは弦や指板、表板、そして弓の木の部分に発生し、また演奏している上で避けられない汚れですね。時間が経つと…いえ経たなくてもベタベタしますので弾き終えたら拭き取りましょう。

そして手汗。主に指板で目立ちますが、弓のフロッグ(毛箱:手で持つ部分)や、楽器を触る癖のある人では表板・裏板に手跡がついてしまうことも。弦についた汗はサビの原因になり、錆びた弦の寿命は縮まります。また楽器職人さんは楽器の胴体を手で持つことをイヤがります。ニスへの悪影響を避けるために、棹(さお)の部分を持つようにしましょう(自戒を込めて)

また顎あても意外と汚れる部分です。ハンカチを挟んでいる方は大丈夫ですが、肌で直接触れる部分なので、特に夏場は汗を放置しないようにしましょう。近年では顎あてに貼れる保護シートもあります。


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さて、ここまでは弾いていると自然についてしまう汚れ。これ以外の汚れもご紹介していきましょう。

まさかの“汚れ”

汚れ、という字がゲシュタルト崩壊してきました。

さて、まさかシリーズ、まずは「血」。血が出るシチュエーションというのはだいたい突発的で予知できないので、予防が難しい“汚れ”です。血に関しては、ひとまずできる限り早く拭き取りましょう(液体が凝固する前に…!)。左指の先が切れる、というのが真っ先に浮かぶと思いますが(わたしは切ったことがない…良いのか悪いのか)、それ以外にも例があります。

わたしの経験だと、右手の親指の爪の脇が乾燥で荒れていたときに、弾いている最中に当たり続けた弓の金具で切ってしまい、気が付いたら弓の毛が少し赤くなっていました。また門下で合宿をおこなっていたときに、小学生の子が急に鼻血を出してしまって、とっさに右手を鼻に持っていったらやはり弓の毛が被害に遭っていました。

これはブラッドオレンジ

つづいて「あるある」は、「涙・鼻水・唾液」(汚いと言わないで…)。涙はおけいこ道の定番ですね…おけいこ中に流した涙が、楽器の表板に筋を残すことがあります。そして泣けば鼻水も伴いがちです(笑)。また、練習中にくしゃみをしたら思いがけず楽器に唾液が飛んでしまったことが…。アレルギーの季節はやはり鼻水が危険です。

体液系はけっこうしぶとくて、「分数楽器は、もう涙の跡が落ちなくて」なんて言う先輩もいました。こうなるとクリーナーの出番だと思います。我々職人さんではないので、あまりにこすりすぎて楽器を痛めてしまうことはないように気をつけましょう。クリーナーは街の楽器店で購入できます。


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水・油は厳禁!

汚れはすぐに拭こう

そして最後に、絶対に避けたいものについて。

まず水分はいけません。楽器が浸水なんて考えるだけで恐ろしいです。水気のあるところからは遠ざけておくことを常に心がけましょう。

そして油分。弓の毛は油分がついたらツルツルになって音が出なくなる=使えなくなります。以前、弦楽専門誌『ストリング』で読みましたが、小さなお子さんがポテトチップスを食べた手を洗わずにうっかり弓の毛にさわってしまい、毛がツルツルになりダメになってしまった、という事例が載っていて、震えました。もちろん楽器本体も油は困ります。おやつを食べたあとは、必ず手をよく洗いましょう!

以上、本日は汚れ特集でした。いつも書いているようで恐縮ですが、とにかく楽器で困ったことがあったら、先生や職人さんにすぐご相談しましょうね! 素人判断、ダメ絶対!


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ABOUTこの記事をかいた人

原田 真帆

栃木県出身。3歳からヴァイオリンを始める。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校・同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程1年在学中。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。佐々木美子、山﨑貴子、澤和樹、ジェラール・プーレ、小林美恵、ジャック・リーベックの各氏に師事。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。