【ドイツ】留学準備のはじめの一歩【概要編】

日本からの音楽留学先として人気のドイツ。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団など日本に来日しているオーケストラも多いですし、ドイツ出身の作曲家や演奏家を通して、ドイツに憧れを抱いている音大生も多いのではないでしょうか。

イギリス編フランス編に続き、今回はドイツの音大に留学するまで、私がどんな準備をしたかご紹介していきます。

留学したい! でもいつ?

学部生の間に、大学院に入ってから、それとも高校のうちから…留学を意識する時期は人それぞれですが、それによって在籍できる学年や留学期間の長さも変わってきます。せっかくなら、自分にとって最適なタイミングで留学したいですよね。

ドイツの大学は半年ごとのゼメスター制を取っており、学部 8 ゼメスター( 4 年間)、修士 4 ゼメスター( 2 年間)が基本となっています。4 月入学と 10 月入学という 2 つの方法があり、いずれも既定の単位を取得し、試験を受けて修了となります。

一般的にドイツの大学に留学する場合、以下の 3 パターンが多いと思います。

1. 高校卒業後、大学に入らず留学

日本の大学に進学するのと同様、学部 1 ゼメスター目からスタートすることになります。学部は 8 ゼメスターあるので、およそ 4 年で卒業する計算になります。

2. 学部途中で卒業せずに留学

日本で学部に入学したものの、なるべく早く留学しようということで、在学中に海外へ出るパターン。

ドイツの場合、取得単位数や履修済み授業などによって学部に途中編入することができますが、単位が認定されないと 1 ゼメスターから始めなければいことも。編入するゼメスターにより修了までかかる年数も変わってきます。

3. 学部卒業後に留学

日本の学部を卒業してから修士課程として留学するというパターンは比較的多いです。修士課程から新たに入学するということであまり大きな問題は発生しませんが、まれに学部編入扱いになってしまう場合もあります。

自分のタイミングを見つけるのももちろんですが、大学のタイミングを見計らうのも重要です。大学によっては夏にしか入試をやっていないことがあります。ハープなど、楽器によってはクラスの空き状況次第で入試をやったりやらなかったりということもあります(後述)。志望校が希望の時期に入試をやっているのか、早めに確認するようにしましょう。

先生とのコンタクトは必要?

留学をする際は、習いたい先生ありきで大学を選ぶことが多いですが、人によっては街や評判から大学を選択することもあるでしょう。かつては先生とのコネクションさえあれば受かる…と言われていましたが、現在は面識がなくとも実力があれば不合格になることはありません。

それでもやはり、“先生にコンタクトを取ってある”というのは、未だに合否を左右することがあります。事前にレッスンを受けたり、演奏を聴いていただいたりして、少なくともひとりコンタクトを取れる先生を作ると、チャンスが広がることでしょう。

またドイツと日本の音大の大きな違いのひとつに、クラス(門下)が定員制であることが挙げられます。ドイツの音大は、契約形態によって、教授や非常勤講師が何人まで生徒を持てるのかが決まっているのです! それにより、試験の点数は合格点だったけれども、クラスに空きがないので入れない、という事例が発生するケースもあります。

そういった危険を回避するためにも、先生との事前のコンタクトがあるかどうかというのは重要です。あらかじめ習いたい先生やほかの教授のクラスの空き状況をうかがっておくこともできますし、先生が「この生徒は知っているから、自分のクラスで取りたい」と合格の後押しをしてくださることもあります。ときに事前に入試の日程などを教えていただけることもあるので、入試の前は先生と少しマメに連絡を取ると良いかもしれません。

語学準備はぬかりなく

ドイツに留学したい…と考え始めたら、先生や大学探しと同時に、なるべく早く始めるべきなのがドイツ語の勉強。ドイツの音大に留学する場合、多くの大学が願書提出時点でA2*、入学までにB2*の試験に合格していることを条件としています。

*編集部注=CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のグレードのこと。ありとあらゆる言語に適用される、外国語学習のための語学レベルのガイドライン。A1 から C2 まで、全部で 6グレードある。一般的に日常会話ができるレベルが 3 グレード目の B1 と言われている。

入学試験に合格してから一年、B2 に合格するための猶予を与えてくれる大学もありますが、大学や専門によっては、語学力の証明書類がなければ受験に関する通知を送らないところも。

また、定められた語学クラスの受講のみでなく、「Goethe-Institut」などドイツ政府から認定されている試験の合格証明のみ有効にしようという動きもあるようです。

そもそも、ある程度ドイツ語ができないと出願の作業自体も難しいですし、渡航してからの生活にも困りますので、早めにやっておいて損することはありません。

なにごとも計画的に!

留学準備に大切なのはなんといっても計画性だと思います。習いたい先生との出会いなどいろいろな兼ね合いがありますが、あらかじめ留学する時期を決めておくと計画を立てやすいでしょう。私の場合、はじめから「必ず学部を卒業してから留学する」と決めていたため、4 年間大学でドイツ語の授業を受け、途中 1 年ほど外部の語学学校にも通い、願書提出前には B2 の証明を持っていました。

…と言っても、実は私は語学学校へは予習復習などもせずただ通ってしまい、B2 の試験も試験準備コースのおかげで合格点ギリギリで受かったので、通わせてくれた両親には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

その結果、実際入試 3 ヶ月前に渡航したら情けないほど話せず、3 ヶ月間心を入れ替えてまじめにドイツの語学学校に通い、のちに C1 の資格を取りました。今では通訳をしたり確定申告をしたり、なによりも同僚とはほとんど問題なく話すことができます。まだ話題などによっては難しさが残るので、隙間時間でのドイツ語の勉強はもちろん続けています。


今回は、留学の大枠についてお伝えしました。次回は詳細編として、より具体的な内容をご紹介したいと思います。お楽しみに!

The following two tabs change content below.

あきこ@シュトゥットガルト

5歳よりヴァイオリンを、13歳よりヴィオラを始める。東京藝術大学卒業、ベルリン芸術大学修士課程卒業。ベルリン・ドイツオペラのアカデミーを経て、現在はシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団に在籍。