みなさんこんにちは。寒さも増してきて紅茶がますますおいしい季節になりました。個人的には肌寒い中を、徐々に色づき始めた木々を見ながら足早に歩くのが好きです。
さて、記憶のある限りずっとバロックを取り上げている気がしますが今日もバロックです。前回バッハによる傑作『マタイ受難曲』と『6つのパルティータ』を紹介しましたが、今日は個人的に大好きな『ゴールドベルク変奏曲』から始めたいと思います。
バッハ『ゴールドベルク変奏曲』
バッハ本人による正式名称は「2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏」。全4巻からなる「クラヴィーア練習曲集」の第4巻にあたります。
なぜゴールドベルク変奏曲と呼ばれているかというと、当時不眠症に悩んでいたヘルマン・カール・フォン・カイザーリンク伯爵という人が、何か眠れる曲を書いてくれとバッハに依頼。それを大変気に入り、眠れない夜はその曲から何か一曲を、伯爵邸に住んでいたゴールドベルク少年に弾かせていたという逸話があるからです。
何を隠そう私も不眠症なので、この曲には何かものすごく惹かれるものがあります。よく「ゴールドベルクは子守唄にしてはテンポが速すぎる」というような意見も見かけるのですが、私に言わせればこれは眠るための音楽ではなく、眠れない夜も楽しむための音楽という感じで…。正直、曲で眠れるなら最初から眠れますからね。
私は眠いのに眠れず、ただ目をつむってベッドに横になっているときにこの曲を聴くと、一音一音の粒が脳内をぴょこぴょこと跳ねていき、ときに身をひるがえしたり笑い声をあげたりして生き生きと音符が駆け巡るような感じがします。ただ、先に紹介した逸話も、本当ではないとする説が有力らしいので、どういう意図で作られたのかは定かではありません。
そして長く続いたバロックシリーズを締めくくるのに、こちらの曲をどうぞ。
ヘンデル『メサイア』から「ハレルヤコーラス」
『マタイ受難曲』に並ぶ超有名な宗教音楽です。合唱コンクールなどで歌ったことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685-1759)はいわずもがな、バロック時代を代表する巨匠です。バッハと同時代に活躍したためよく比較されますが、たとえばバッハは教会音楽で成功をおさめたのに対し、ヘンデルは劇場用のオラトリオなどで才能を発揮。バッハは2回結婚して計20人もの子供をもうけたが、ヘンデルは生涯独身であったなど、その人生は対照的だったようです。さらに興味深いのは、ふたりは生涯一度も会うことはなかったという事実。それも2回面会のチャンスがあったにも関わらず、とうとう実現しなかったというのですからなんとももどかしいですね。
さて、ようやく次回は古典派・ロマン派へと話を進めてまいりたいと思います。ますます親しみやすく心地よい音楽がたくさん出てきますので、一緒に楽しみましょう♪ それではまた来週…。
ノリコ・ニョキニョキ
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