「動画配信をわたしもやるべき?」に答えます。悩める音楽家への処方箋

コロナ禍により、世界中の人々が生活の変容を余儀なくされています。中でも音楽家のみなさまは、その筆頭と言えるかもしれません。

なかなか人前で演奏する機会が得られない中で、動画を撮影してSNSやYouTubeなどで公開する方々も増えてきました。その一方で、SNS上では「自分も動画配信をやったほうがよいのか? ついていけなくて、焦っている」という戸惑いの声も見かけるようになりました。

ところで本記事のライターであるわたしノリコ・ニョキニョキは、大学卒業以来会社員(もしくはフリーランス)としてコンテンツマーケティングに従事してきました。そこで、新たな視点をお伝えできればよいなと思い、僭越ながらマーケターとしての目線で、動画配信などの是非について考えてみたいと思います。

動画配信に注力すべきかどうか考える

個人の意見ですが、以下のフローチャートで考えればよいと思っています。それぞれ解説します。

まずはシンプルにやりたいかどうか

当たり前じゃんと思うかもしれませんが本質です。

録画方法がわからない、どの機材がよいのかわからない……でもやりたい。それであれば、ぜひやったほうがよいと思います。

どうなるかわからないけれど、とにかく心が動くことをやってみた結果大成した人物はたくさんいますよね。私の脳内にははじめしゃちょーやしょこたんなどがパッと浮かびます。

はっきり言って、動画を配信したからといってなんらかの形で効果が出るかどうかは、さまざまな要素が複雑に絡み合った結果なので、現段階ではわかりません。こういった状況ですから、結果はどうあれとにかくやってみる、挑戦してみるというマインドそのものが何よりの武器になると考えるべきでしょう。

ここで「やる」という結論に達している方々はすでになんらかの行動を起こしていると思われますので、この先は読まなくても大丈夫です。その時間を他の有効なことに使ってください……!

やるメリットの大小について考える

次に、やりたくないなと思っている方。基本的にはやりたくないのであればやらなくてもよい、と言いたいのですが、そう簡単に結論づけられないから悩んでいるんですよね。では次の判断基準として、やるメリットが大きいか小さいかを検討しましょう。

フローにもありますが、メリットが大きいのであれば「やる」という英断をすることも視野に入れるべきでしょう。

さて、メリットの大小を考えるには、まず目的を明確にする必要があります。目的としてはたとえば、以下のようなものがあるのではないでしょうか。

  • 目先の生活費の足しにする
  • 将来的なサブの収入源にする
  • 知名度を高める

他にもいろいろあるかもしれないのですが、わたし自身が音楽家ではないので想像の及ぶ範囲で話を進めさせていただきます。次に、それぞれを検討します。

Nattanan KanchanapratによるPixabayからの画像

「目先の」生活費の足しにする

どんどん細分化していって恐縮ですが、動画を通して生活費を稼ごうとする場合、大きく分けて「広告収入をあてにする」「動画をきっかけに生徒さんを募集する」の2パターンが考えられると思います。

①広告収入をあてにするパターン

場合によりますが、一般論として動画配信は、初めのうちはなかなかたくさんの人に見てもらうというのは難しいかもしれません。ですが、YouTubeで広告収入を得ようと思ったら、以下の2つの条件を満たしている必要があります。

  • 過去12ヶ月間の総視聴時間が4,000時間以上
  • チャンネル登録者数1,000人以上

これらは(特に2番目は)一朝一夕で達成できるものではないため、かなり本腰を入れてやるのでない限り厳しいでしょう。広告収入でもって目先の生活費の足しにするというのは、メリット云々以前に現実性が極めて低いと言わざるを得ません。

②動画をきっかけに生徒さんを募集するパターン

これは結構ばかにならないと感じています。実際に私の知人が毎日コンスタントにレッスン動画をアップしていったところ、新規の生徒さん(オンラインレッスン)を7人も獲得できたと報告していました。ただしその方は、毎日動画投稿をするというだけでなく(それだけでもすごい)、日々勉強して動画編集の腕前もどんどん上げていき、視聴者の意見を取り入れながら改善を重ねていくという、並並ならぬ努力をされていました。

それだけの努力ができると思えるのであればよいのですが、「目先の」収入源になるかというと運の要素も大きくなってくるため、メリットは中程度としておきましょう。

StockSnapによるPixabayからの画像

「将来的な」サブの収入源にする

サブの収入源については、今音楽家のみなさんが心底真剣に検討しなくてはならない議題だと思います。今回のコロナショックもそうですが、やはり人生というのは予想のつかないことが起きるものです。フリーランスで仕事をしている方は、会社員以上に有事の際のリスクヘッジとして、複数の収入源を確保しておくことが必須と言えるでしょう。

この自粛期間は、新たな収入源を作るための準備期間にはうってつけですよね。動画配信はもちろん、アフィリエイトブログ(広告収入を得るためのブログ)や執筆業、楽譜清浄、楽曲アレンジなどさまざまなものが思いつきます。

もちろん動画配信は、十分検討の余地があると思います。わたしがそう考える理由としては、

  • 実際に動画の広告収入を得ている音楽家は少なくないということ
  • 動画の需要はなんだかんだ言ってまだまだ上り坂であると考えていること
  • 録音によって自分の演奏と正面から向き合うことや、演奏を世の中に送り出すという行為そのものによって、技術の研さんにつながり一石二鳥であること

などが挙げられます。ただし、前述の通り動画で収入を得るためには腰掛け気分で取り組むのでは到底不可能であり、かなりの覚悟が必要です。率直に言って、中途半端にやってただ疲れるだけならやらないほうがよいと思います。そういったことも加味すると、総合的にはメリットは中程度かなあと感じます。

個人的には、稼ぐという意味では、珍しい楽器であればあるほどアレンジ業に挑戦するのが効率的に思えるのですが、それぞれのスキルによるのでこの件はこれ以上触れません。とにかくみなさんが想定しうるさまざまな収入源をありったけ書き出して、どれが継続できそうか、効率はどうか、など検討してみてください。

知名度を高める

とにかく今は一人でも多くの人に自分のことを、そして自分の演奏を知ってもらいたい。そう考えているのなら、動画配信をするメリットは高いというよりもはや必須レベルだと思います。動画を発信したからといって知名度が上がるわけではないですが、現在は演奏会ができない以上、動画で発信でもしない限り知名度は上がりようがない状況です。コンクールもいつ再開するかわかりませんから、もはや露出場所は自分で作るほかないのです。

それぞれの状況に応じて検討すべし

以上、わたしの思いつく範囲でのメリットを検討してみました。実際はみなさんの置かれた環境やスキル、目的、目標はさまざまですから、本記事が直接的に答えを導き出せたわけではないと思うのですが、ぜひ考え方の参考にしていただけましたら幸いです。

目的を明確にすることでToDoはシンプルになる

athree23によるPixabayからの画像

わたしは仕事でいつも、何をすべきかよりも何をしたいかを考えます。マーケティングをする上で、たとえば「新しいお客様を呼びたいのか」「既存のお客様をより強いファンに育てたいのか」では、やるべき施策が変わるからです。

音楽家のみなさんも、「コロナ自粛期間に何をしたらよいだろう」と悩むと選択肢が多すぎて迷ってしまうことがあると思います。ですからまずは「何を実現したいか」を考え、次に「そのために必要なことは何か」を考えるという順番をぜひ実践してみてください。あまり周りを気にしすぎず、ご自分のやるべきことに集中して、少しでも自粛期間を有効活用していただけることを願っています。

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ノリコ・ニョキニョキ

ノリコ・ニョキニョキ

COSMUSICA発起人/編集長。1989年生。ハープ勉強中。東邦大学医学部医学科中退、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。インハウスライターをしながら副業で執筆仕事をお引き受けしています(文字単価10円目安)。お気軽にお問い合わせください。