みなさんこんにちは。あきこ@ベルリンです。
前回は、私が現在、学業と並行して取り組んでいるオーケストラアカデミーについてご紹介しました。
▶︎前回:「ベルリン便りVol.3 〜オーケストラアカデミーとは〜」
さて、今回は、アカデミー生としてでも、正団員としてでも、そのポストを得るのに必須なオーディションについてご紹介したいと思います。いわばオーケストラ奏者になるための「就活」のようなものですが、果たしてどのようなものなのでしょうか…!
*今回は標準的なオーディションのパターンをご紹介しますが、オーケストラによってその方法はさまざまです。
招待されなければ受けられない!【書類選考】
ドイツのオーケストラのオーディションは、招待制。
志望動機などを書いた短い手紙や、表形式の履歴書、必要であれば卒業証明書や成績書などを送って、応募します。書類はもちろんなるべくドイツ語。
募集楽器の団員がそれらをチェックし、投票によってオーディションに招待する候補者を決定します。すべての書類に(一応)目を通さなければいけないわけですから、大変な作業です。
また、応募者が多い場合、本選考前に予備選考を設けることも。その際は、予備選考に招待する人、本選考に直接招待する人…と分けて選んでいるようです。
基礎的な能力が試される!【1次選考】
オーディションは、基本的に3次選考までの勝ち抜き制。
1次選考では、古典派の作曲家、モーツァルトやハイドンなどの協奏曲を演奏します。ちなみに、お二方はヴィオラに協奏曲を書いてくれなかったので、我々の課題曲は別の作曲家です。笑
古典派のスタイルにあった弾き方ができるかなど、基本的な姿勢が問われます。公平性を保つため、1次選考では演奏者が見えないよう、カーテンやつい立てが置かれていることもよくあります。
各選考後、その楽器のグループが話し合い、次の選考に推薦したい候補者を選びます。加えて他の団員からの提案ならびに投票がおこなわれ、選ばれた人が2次選考へと進みます。気に入った人がいないと、「これにてオーディションを打ち切ります」なんてことも…。
ソリストとしての能力をアピール!【2次選考】
2次選考では、ロマン派など、1次の曲よりも音楽性や個性が問われる協奏曲の演奏が求められます。
往々にして、カーテンや衝立は用意されなくなります。こうなると、弾いている最中の動きや目に見える技術、さらには、身なりがちゃんとしているかなども見られてしまいます。
オーケストラ奏者ならばオーケストラの曲を!【3次選考】
大体ここに載っているものが課題に出ます。
なんといっても、課題に出るのは、オーケストラスタディ、通称オケスタ。ざっくり言うと、オーケストラで弾く曲からその楽器にとって大変だったり目立ったりする部分を抜き出した意地悪なもので、普段ひとりで弾くことなんて一切ない、非常に弾きにくーいものを、たったひとりで、経験豊富な団員の前で、弾かされるわけです。
普段金管楽器に隠されている部分だったり(そんなの実際には聞こえないではないか!)、通常はパートで弾いたり(本来周りに合わせて弾くものなのに!)するところを弾くので、もう恥ずかしいったらありゃしない。要するに、公開処刑ですね。
そんな風に、精神的にも技術的にも大変なオケスタですが、逆に言えば、これがきちんと出来れば高い評価をいただけるわけで、かなり重要な要素です。2次までは良かったのに…なんてもったいないことにならぬよう、オーケストラの曲だからと甘く見ずに、しっかり準備しなければなりません。
3次選考後、再び団員による投票があり、必要な得票数を獲得した候補者が、晴れて試用期間に採用されるわけです。得票数が足りないと、ここまで来て誰も採らない、なんてこともあります。
ちなみに、予備選考やアカデミーのオーディションはだいたい簡略化されており、オーディションを聴いているのもパートの団員のみであることが多いです。
長くなりましたが、これらは大体一日のうちにおこなわれ、応募者数にもよりますが、2時間しかかからないこともあれば、8時間かかることも。聞く方も大仕事です。
1次選考の結果発表後、すぐに2次選考が始まることもあり、モチベーションを保って良いコンディションを作るのは本当に大変です。
何十何百人という応募者から、最後に選ばれるのはたったひとりだけ。また、選考の過程で運営方の判断が入らず、団員たちのみで自ら選ぶというのは、他のどの仕事にもない特殊な面です。
とても厳しいことですが、だからこそ、仲間たちへの信頼が強く、誰よりも誇りを持っているのかもしれません。
オーケストラのオーディションのお話、でした!
あきこ
あきこ@シュトゥットガルト
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