新型コロナウイルスの流行により、クラシック音楽業界は大きな打撃を受けました。
大人数が集まるイベントの開催自粛が求められ、ほぼすべてのコンサートが中止となり、アーティストや楽団のチケット収入が途絶えました。対面でのレッスンもできず、音楽教育の現場も混乱をきたしました。活動の場がないことで、経済的な影響に加えて、精神的なダメージを受けたアーティストもたくさんいます。
最近では少しずつホールでの演奏会も再開しつつありますが、わたしたちがこれからもクラシック音楽を楽しむためには、まだまだたくさんの支援が必要です。そこで今回は、クラシック音楽文化の継続のための支援方法をまとめました。
クラシック音楽界を支援する7つの方法
1. 演奏会に行く
演奏会のチケットを買って、公演会場へと足を運ぶ。これが一番シンプルな支援方法です。
中止や延期が相次いだコンサートホールでの演奏会ですが、最近では、感染拡大防止対策を取りながら演奏会開催を再開する団体が増えてきました。
すばらしい音楽を同じ空間で共有し、直接あたたかい拍手を送ることによって、演奏者はもちろん、運営や事務を担当する人にも応援の気持ちが伝わるでしょう。もちろん、チケットを購入することで金銭的にも支援できます。
好きなアーティストや楽団がある方は、それぞれのホームページで公演情報を確認してみましょう。ご自宅の近くにコンサートホールがある方は、ホールの公演案内をチェックしてみると、新たな奏者や曲目との出会いがあるかもしれません。
「コンサートには行きたいけれど、いつどこでどんなコンサートが開かれているのか全然わからない」ということもよくありますよね。そんなときは、以下のような演奏会情報サイトが便利です。エリアや日時、ジャンル、作曲者名などで検索して、楽しめそうなコンサートを見つけてみてください。
- 音楽の友 WEBコンサートガイド – 音楽之友
- 全国クラシックコンサート情報 – コンサートスクウェア(アマチュア団体も掲載されています)
- クラシック音楽情報誌 ぶらあぼ
2. オンラインイベントに参加する
新型コロナウイルスの流行はわたしたちに多くの苦難をもたらしましたが、なかにはよいこともありました。そのひとつが、オンラインで開催されるイベントが増えたことです。
遠方で開かれる演奏会でも、オンラインならどこからでも参加できます。食事やお酒を楽しみながら演奏を聴けるのも大きなメリット。また、オフラインの演奏会では小さな子どもの入場を断られることもありますが、オンラインならお子さまと一緒に、周囲に気兼ねすることなく音楽を楽しめます。
オンラインで楽しめる演奏会は、以下のサイトで見つけられるほか、ハッシュタグ「#コンサート配信」「#配信コンサート」でTwitter検索するのもおすすめです。
3. 中止イベントのチケットを払い戻さず寄付する
チケットを購入して楽しみにしていた演奏会が新型コロナウイルスの影響で中止になり、払い戻しの案内が届いた方も多いでしょう。そこで払い戻しを受けずに、支払ったチケット料金を主催者に寄付するという選択肢もあります。
文化庁の指定したイベントであれば、チケットの払い戻しを受けないことで税優遇を受けられる制度が設けられました。「既に払い戻してしまった!」という場合も大丈夫。主催者に対して寄付の申請をし、令和3年1月29日までに寄付すれば優遇措置の対象です。
この税優遇制度の対象となるイベントは、文化庁のホームページにある「最新の指定行事リスト」に記載されています。予約したイベントが中止になってしまった方は、ぜひチェックしてみてください。
4. クラウドファンディングで支援する
「クラウドファンディング」は、インターネット経由でかんたんに音楽業界を支援できる、とても効果的な手段です。
多くの場合、支援するとリターンが受け取れるのもクラウドファンディングの魅力です。リターンには、オリジナルグッズからプライベートコンサートまで、さまざまな選択肢が用意されています。クレジットカードなどで手軽に決済できるのもうれしいポイントですね。
たとえばクラシック音楽関連では、以下のようなプロジェクトがあります。
- ONE KANSAIで「関西フィル応援プロジェクト」
- コンサートホール × 商店街の力 ~コンサートで地元の商店街に貢献したい!~
- 新進気鋭のバロック・オーケストラ「ラ・ムジカ・コッラーナ」を応援したい!
(2020年10月13日現在、募集中のもの)
たくさんのプロジェクトが集まる大手クラウドファンディングサイトで、「音楽」ジャンルから気になるプロジェクトを探すこともできます。
5. ふるさと納税で支援する
ふるさと納税といえば「おいしい食べ物をもらえて税金が安くなるお得な制度」というイメージがあるかもしれませんが、実はこのふるさと納税で音楽業界への支援もできるのです。
インターネットで気軽に支援でき、その自治体に住んでいない場合は返礼品も受け取れます。下記の京都市によるプロジェクトのように、ふるさと納税とクラウドファンディングが合体した「ふるさと納税型クラウドファンディング」もあります。
- 新日本フィル「音楽の力で人とまちを元気に」2020(東京都墨田区)
- 京都市ふるさと納税×アーティスト応援|創作を途絶えさせない(京都府京都市)
- 京都市ふるさと納税×文化拠点|表現が生まれる場所を守りたい(京都府京都市)
(2020年10月13日現在、募集中のもの)
上に挙げたような具体的なプロジェクトでなく、納めたお金を芸術や音楽のために使ってくれる自治体に納税するのもいいですね。
6. オーケストラの会員になって支援する
オーケストラのような演奏団体の経営は、チケット収入だけでなく、会員からの会費によっても支えられています。お気に入りの楽団があるなら、これを機に会員になってみてはどうでしょう。
演奏団体の会員になると、演奏会のチケット価格が割引になったり季刊誌が送られてきたりと、嬉しい特典がある場合も。また、会員になると「公益財団法人の認定を受けている団体への寄付」とみなされて、税優遇の対象になるケースも多いです(詳しくは、あらかじめ各楽団にてご確認ください)。
オンラインで申し込むだけで会員になれる団体もたくさんあります。以下に、国内のプロオーケストラの会員・寄付募集ページをならべました。気になる楽団の制度をチェックしてみましょう。
- 札幌交響楽団
- 仙台フィルハーモニー管弦楽団
- 山形交響楽団
- 群馬交響楽団
- NHK交響楽団
- 新日本フィルハーモニー交響楽団
- 東京交響楽団
- 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
- 東京都交響楽団
- 東京ニューシティ管弦楽団
- 東京フィルハーモニー交響楽団
- 日本フィルハーモニー交響楽団
- 読売日本交響楽団
- 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
- オーケストラ・アンサンブル金沢
- セントラル愛知交響楽団
- 名古屋フィルハーモニー交響楽団
- 京都市交響楽団
- 大阪交響楽団
- 大阪フィルハーモニー交響楽団
- 関西フィルハーモニー管弦楽団
- 日本センチュリー交響楽団
- 兵庫芸術文化センター管弦楽団
- 広島交響楽団
- 九州交響楽団
- 千葉交響楽団
- 藝大フィルハーモニア管弦楽団
- 東京ユニバーサル・フィルハーモニー管弦楽団
- 静岡交響楽団
- 中部フィルハーモニー交響楽団
- 京都フィルハーモニー室内合奏団
- アマービレフィルハーモニー管弦楽団
- ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
- テレマン室内オーケストラ
- 奈良フィルハーモニー管弦楽団
- 岡山フィルハーモニック管弦楽団
- 瀬戸フィルハーモニー交響楽団
- 長崎OMURA室内合奏団
7. 基金に寄付して支援する
音楽・芸術の振興を目的とする基金に寄付するのも、支援方法のひとつ。「なんらかの支援はしたいけれど、具体的なアーティストや演奏団体が思い浮かばない」という方にはこちらの方法がおすすめです。
代表的な基金を以下に挙げます。団体の理念や寄付金の使用目的に共感できるものがあれば、寄付を検討してみましょう。
- 芸術文化振興基金「文化芸術復興創造基金」
新型コロナウイルスの影響を受けた文化芸術団体が事業を継続するための支援が目的です。
- 日本舞台芸術振興会 コロナ緊急寄付
一流のバレエ団やオペラ団などを海外から招聘し、質の高い公演を開催している団体です。 - 日本演奏連盟 賛助会員・一般寄附
新進演奏家の人材育成事業やクラシック音楽の普及活動などを実施している団体です。 - 日本オーケストラ連盟 オーケストラ音楽の存続のために
新型コロナウイルスにより打撃を受けた国内プロオーケストラの存続のために使われます。 - 東京藝術大学「若手芸術家支援基金」
東京藝術大学の在学生、卒業生・修了生のうち主に40才までのアーティストを支援できます。 - 大阪府大阪市「なにわの芸術応援基金」
大阪市音楽団や関西二期会、大阪フィルや関西フィルなど、大阪の演奏団体を支援できます。 - 企業メセナ協議会 芸術・文化支援サイト「かるふぁん!」
企業による芸術文化支援を促進している団体です。上記サイトから個人寄付ができます。 - エル・システマジャパン
音楽を通して子どもたちを支援している団体。ワンクリック支援やふるさと納税での寄付も可能です。
まだまだ消えない、新型コロナウィルスの影響
新型コロナウイルスの流行によって、音楽というものがいかに「ふれあう」営みであったのかを改めて確認させられることになりました。人と人とが距離を取らざるを得ない今、音楽という行為は、かつてないほどの窮地に立たされています。
一見、日本の経済活動は徐々に「コロナ前」へと戻りつつあるように感じます。街を歩く人の数が増え、在宅勤務から通常勤務へ戻す企業も増えてきました。そうした雰囲気のなか、「もう支援しなくても大丈夫なのかも」と思ってしまいがちですが、コロナによって影響を受けた業界はまだまだ厳しい状況にあります。
今回の記事で、クラシック音楽を支援する方法が意外とたくさんあることに気づいていただけたのではないでしょうか。もちろん音楽業界だけでなく、わたしたち全員が苦しい状況に置かれている昨今ですが、少し余裕がある方は、ぜひアーティストたちを支援してみてください。コロナに打ち勝ったあと、みんなでこれまで以上に音楽を楽しめるよう、できることから始めてみませんか。
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