ベルリン便り Vol.5 〜オーケストラの、騒音対策〜

みなさんこんにちは、あきこ@ベルリンです。

9月ももう下旬。月初めに少し国外へ行っていた私も、先日ベルリン・ドイツ・オペラで最初のリハーサルに参加し、他メンバーに遅れてようやくシーズンインしました。2シーズン目、そしてアカデミー生としては最後のシーズンです。

オーケストラの音量

さて、約1ヶ月半の夏休みを終え、久しぶりにオーケストラピットに入って弾いたら、もっと言うと、オーケストラの中で弾いたら、面白いことに気がつきました。


耳が、忙しい…!!

 

常に上下左右からのさまざまなインフォメーションを聞き分け、また、日常生活に比べて遥かにうるさい音量のものを聞き取っているのだなぁと改めて実感しました。

そう、オーケストラの音量って、半端ではないのです。

ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスなど、編成の大きな曲をオーケストラピットという狭い空間で演奏すると、120デシベルに到達することもあると言います。120デシベルという音量は、飛行機のプロペラエンジンの近くくらいだそうで、相当なものです。

ほぼ毎日のようにこれほどうるさいものを定年まで聞き続けたら、難聴などの聴覚障害を引き起こしかねません。そのため、ドイツでは、「85デシベルを超えた場合には、雇用者が被雇用者のための騒音対策をしなければならない」と決められています。

私の所属するオペラでは、時々オーケストラピットのうるさそうな所、金管楽器のそば(そして彼らはわれわれヴィオラの後ろに座っています)などに、計器を置いて測定しています。

騒音への対策って?

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対策として主に用いられるのは、バンドなどでもよく使われるプラスチック製の壁だったり、うちでは厚い布をかけた壁だったりするのですが、それでも遮音には限度があるので、個人でも、自分の耳を守るために、対策をすることが勧められています。

その対策とは…耳栓です。

聞かなければいけない仕事なのに耳栓などしていいのか、と思われるかもしれませんが、もちろん、完全に遮音するわけではありません。

いわゆる耳栓というと、みなさんはこういったものを思い浮かべるのではないでしょうか?

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これは、夜なるべく静かな環境で寝たい方などによく使われるタイプ。オーケストラでもまれに使われますが、何しろかなり音をシャットアウトしてしまうので、常時使用するのにはあまり向いていません。

そこで使われるのが、フィルターの入ったタイプの耳栓。私が使っているのは、割と簡単に購入でき、価格もお手頃だったこちら。

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つけた感じはカナル型の耳栓を入れている時の感触と似ています。聞こえなくするのではなく、全体的にボリュームを小さくするものです。

ただ、耳に完全に突っ込んでしまうとかなり周りの音が小さくなってしまうのと、そのことでだいぶ集中力を使うので、両耳に完全に入れることはあまりありません。だいたい半分挿しておいてうるさい所の前で完全に挿したり、右耳だけ塞いだりと、状況によって使い分けています。

もっと本格的な、耳の型を取って作るオーダーメイドの耳栓も。バンドで使われるイヤーモニターに似ています。

これも中にフィルターが入っている耳栓ですが、どの程度遮断するか、フィルターを選ぶことができ、強度が合わなければ交換することも可能です。ただ、私が使っているものと違って耳に完全に挿すものなので、閉塞感が気持ち悪かったり、平衡感覚に影響がでたり、という方もいらっしゃるようです。

また、お値段はかなり高く、補聴器のお店などで売られている、2万円近くする代物です。しかし、前述の規則により、専門の医者の所見などで手続きを踏むと、オーケストラがお金を出してくれます。

まだ私はしがないアカデミー生なので、先シーズンは安い耳栓で済ませましたが、最近耳への影響を感じつつあるので、こちらの耳栓をお願いしてみるか検討しているところです。


音楽家として生涯使い続ける耳を守るために、対策は非常に大切ですが、管楽器の方などは息を楽器に吹き込むので、耳が塞がれていると感覚が変わりすぎてしまって吹けず耳栓を使えない、ということもあるようです。

私も、耳栓をすると一気に集中力が必要になるので、まだまだ毎回がトレーニング状態です。

ドイツでは雇用者からも保証されるほど推奨されている耳栓ですが、「耳に栓をする」という観念のせいか、日本ではまだあまり普及していないようです。

技術のみならず体も一生保たなければいけない、音楽家という職業。ドイツでは、耳栓以外にもさまざまな健康対策があるので、そちらもおいおい、ご紹介していきたいと思います♪