肺活量と音量に関連性はある? フルーティストに聞く演奏時の疑問あれこれ


魅惑の楽器フルート。その魅力に迫るべく、フルーティスト田村桃子さんにインタビューをおこなっています。

前編では、幼いときから専門教育を受け、現在フリーとして活動するに至るまでのエピソードを伺いました。

前編:はじまりは父のお下がり。12歳からフルートを吹き続ける田村桃子の半生に迫る

後編では、フルートという楽器そのものについて、演奏法や取り扱いまで、今までなかなか知る機会のなかった部分を聞いていきたいと思います。


田村桃子(たむら・ももこ)

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1993年生まれ。埼玉県出身。3歳よりピアノ、12歳よりフルートを始める。第16回びわ湖国際フルートコンクールアドヴァンス部門第1位。 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て同大学音楽学部器楽科を卒業。現在はソロの他、フルートカルテットやオーケストラでも活動中。


フルートQ&A

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−管楽器は体力的に長時間練習できないって聞くんですが、実際どれくらいで限界がくるんですか?

「フルートに関しては、あんまり制約はないですね。管楽器の中でもリード楽器*やマウスピースの楽器*2 だと、唇にかなりの圧力がかかるので出血したり、唇を押し付けて腫れてしまったりということがあるんですけど、フルートはそこまで唇を押し付けることはないので、そういった物理的な問題は起きにくいんです。」

*リード楽器:発音源としてリードを用いる楽器の総称。クラリネット・オーボエなどの木管楽器やオルガン、ハーモニカ・アコーディオンなど様々な種類がある。
*2マウスピースの楽器:トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバなど、マウスピースが必要な金管楽器のこと。

−え!? 他の管楽器の人たち流血してるんですか!?

「そういうこともあるらしく、たくさん練習するためには結果的に練習時間を調整しないといけないっていいますね。特に金管楽器は、オーケストラのときも本番でベストな演奏をするために、ゲネプロ*3では体力を温存しているみたいです」

*3ゲネプロ:演奏会の本番間近に行う最終リハーサルのこと。

−うわあ…じゃあそれに比べたらフルートは演奏時間に制約はないんですね…!

「もちろん、吹きすぎには注意ですけどね。私の先生は毎日10時間吹いてたら唇が腫れたらしいです(笑)。あとは腕をあげっぱなしなので、それはつらいですね」

−まさかとは思うんですけど、腕の筋トレとかはしないんですよね…?(笑)

「それはしないです(笑)自然と鍛えられてくるっていうのはありますけど」

−肺活量を鍛えるとかもしないですか?

「それも毎日吹いていれば自然と肺活量は増えてくるので特別なトレーニングはしないですね。ただ身体の使い方の確認はします。吸った息がどこに入っていってるか、とか」

−腹式呼吸ってことでしょうか?

「腹式呼吸なんですけど、意識するのはどれだけ肺を広げる場所を作るかっていうことなんです」

−肺活量が上がると、音量を出せるということなんでしょうか。

「うーん…音量自体は、息の量じゃなくて吹き方や鳴らし方で決まるんですよ。なので一概に肺活量ではないかな…。でも、音量を持続することに関しては肺活量が関係してきます」

−なるほど…。すごく全身を使う楽器だと思うんですけど、本番前に気をつけていることってありますか? ごはんを食べすぎない、とか体を冷やさない、とか。

「逆に、ちゃんとご飯を食べることですね…! 緊張していると空腹を忘れちゃうんですよ。でもちゃんと食べていないとめまいがしてしまうので。高校の卒業試験のときに、腹ごしらえを忘れてしまって倒れそうになったという失敗談もあります(汗)」

−演奏って体力持ってかれるし、体は資本ですもんね…。楽器自体には取り扱いで気を使う点はありますか?

「シルバーは柔らかいので傷がつきやすいです。強くぶつけるとへこんでしまうことも。あと、キーのメカニズムの部分はかなり精巧なので、むやみに触らないようにします。頭部管の一番上にあるネジも絶対にゆるめないでくださいね!」

−ただでさえ美しいフルートですが、宝石のついたものなども売っているって聞いたことあるんですが…。

「あります! 実際に身近で持っている人は見たことないんですけど、海外の有名なフルーティストさんがきれいな装飾のついた楽器を持っているらしいです。ほかにも、リッププレートに彫刻してあったりとか。元々滑り止めとして施されていたらしいんですが、それが装飾的な意味合いになって宝石とかもつくようになったみたいです」

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出典:MIYAZAWA FLUTE

−ぜいたくですよね…! 管楽器はやっぱり手入れも大変ですか?

「掃除はもちろん吹くたびにします。中の水気をとって、外側は柔らかい布で拭きます。オケに行って練習が終わると、弦楽器の人は片付けが早いんですが、管楽器は分解して、中拭いて外拭いて…とやっているので最後まで椅子が片付かないという(笑)」

−小学校のリコーダーでいつも掃除していたのを思い出します…! では、最後に…フルートの曲を改めて聞いた事がないという人にむけて、有名な曲やおすすめの曲を教えてください!

「そうですね…ドップラー作品で最も有名な『ハンガリー田園幻想曲』はおすすめです。楽曲自体も10分ほどですごく聞きやすいです。

あとはモーツァルトのフルート四重奏曲はいかがでしょう。きらきらしたフルートらしい楽曲です。ぜひ聞いてみてくださいね」


すごくマニアックな質問にも優しく答えてくださった桃子さん。個人的には、肺活量と音量にあまり関連性がないという点は驚きの事実でした! 有名な楽器でも、その仕組みや特徴となると意外と知らないものですよね。音大生ですら、専攻楽器以外のことはよく知らないなんてことはざらなので…。

読者のみなさまにも、フルートの魅力が十二分に伝わりましたでしょうか?

コスムジカでは、桃子さんによるフルート記事も更新中!

「拍手や人の声を演奏できる!? フルートのびっくりな現代奏法を解説」

フルート好きな方は、そちらもあわせて、お楽しみいただければ幸いです💡✨


ABOUTこの記事をかいた人

ノリコ・ニョキニョキ

COSMUSICA編集長。1989年イギリス生まれ。東邦大学医学部医学科中途退学、東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科卒。週末を楽しみに日々ライティング業に勤しむ普通のOL。2016年6月20日にCOSMUSICA立ち上げ。ハープ修行中。