練習曲が華々しく蘇る! 超絶技巧編曲プロジェクト 『PIANOIA! 』の仕掛け人に聞く誕生秘話

突然ですがみなさん、ブルグミュラーの最後を飾る名曲『貴婦人の乗馬』をご存知でしょうか?

ピアノを習っていたことがある人なら、きっと聞き覚えのある懐かしの名曲。しかし、レベルが上がっていくにつれ、弾いたり聴いたりする機会も減っていったのではないでしょうか?

今回はぜひ、久しぶりに『貴婦人の乗馬』を楽しんでいただきたいと思い、動画を紹介させていただきます。さあこちらが、懐かしの『貴婦人の乗馬』です!

……え?

知っているのと違う?

そうなんです、実はこちら……かつて親しんだピアノ練習曲を超絶技巧に編曲しコンサートや映像を通じて届けるというプロジェクト『PIANOIA!』からの一曲なのです……! 原曲のよさを生かしたまま、大人になってからも演奏会などで披露する機会がもてるような難易度に編曲されています。

『PIANOIA! 』が提案するクラシック音楽の未来

超絶技巧編曲プロジェクト 『PIANOIA! 』を企画しているのは、KATO MUSIC & CREATIVE ENTERTAINMENT株式会社の加藤夏裕(かとう・なつひろ)さんです。

KATO MUSIC & CREATIVE ENTERTAINMENT株式会社 代表取締役 加藤夏裕氏

音楽企画を通じてクラシック音楽の魅力を日本全国に伝えるというミッションのもと、『朝♪クラ~Asa-Kura~』*をはじめとする人気サービスを数々企画されています。

一体どのような経緯で『PIANOIA!』が生まれたのでしょうか。お話を伺うことができました。

*クラ~Asa-Kura~:「クラシック音楽を日本の文化として根付かせること」を行動理念とし、コンサート企画をはじめとし音を楽しむ時間を過ごすきっかけを幅広く提供するブランド。

練習曲にも、スポットライトを

2020年1月24日に実施された 『PIANOIA! 』 お披露目イベントの様子から

– どのようなきっかけで本プロジェクトを着想したのでしょうか?

「『朝♪クラ~Asa-Kura~』で開催したピアノコンサートにて、一流ピアニストによるファジル・サイ編曲のトルコ行進曲の演奏を聴いて感銘を受けたのがきっかけです。親しみやすい上に技術力とメロディーの美しさが相まってすばらしくて。

ピアノを始めたての子供などが演奏する簡単な練習曲にも、美しいメロディの楽曲がたくさんありますよね。しかし、現実的にコンサートで演奏される楽曲というのはある程度限られています。それで、世界中のピアニストが弾きたくなるような超絶技巧に編曲したらよいのだと思い至りました」

– クラシック音楽はある意味「完成されたものを再現していく」文化が本流ですが、加藤さんは「PIANOIA!」をどういう位置付けで考えていらっしゃいますか?

「完成された音楽でも楽曲ごとに役割があります。コンサート向きのもの、練習用に特化したもの……。しかし、必ずしもその枠の中に収まる必要はないのではないかと思うのです。かつて発表会で弾いた練習曲が、再びコンサートでスポットライトを浴びる。そんな機会が提供できれば、誰かがピアノを始めたり再開したりするきっかけにもなり得ると思いました」

誰もが簡単にクラシック音楽を楽しめるプロジェクトに

– 電子楽譜を扱うGVIDO MUSICさんと大日本印刷さんとプロジェクトをご一緒されていますが、その背景を教えてください。

「まず、『朝♪クラ~Asa-Kura~』が運営するYouTubeチャンネル*で楽譜に関するお問合せが毎日のようにあったため、本プロジェクトにおいても楽譜の需要が高いことは確信していました。

その上で、当社では “古きよき音楽の魅力を、時代に合ったアウトプットでお伝えしていく” というところにこだわりをもっています。『PIANOIA!』でも、音楽を聴いてすぐにその楽譜を入手できるようデジタルの楽譜を制作して、映像配信を通じて誰もが簡単にクラシック音楽を楽しめる環境を整えていこうと考えました。そのために、未来を見据えた音楽事業を展開する2社(GVIDO MUSIC・大日本印刷)との連携させていただいたのです」

*楽曲配信数が1125本(2020125日現在)/YouTube音楽事務所UUUM所属の日本最大級クラシック音楽チャンネル

左から加藤夏裕氏、山﨑勇輝氏(GVIDO MUSIC Co.,Ltd.)、清水拓哉氏(大日本印刷株式会社)

– プロジェクトにおいて苦労した点はどちらでしょうか。

「楽譜の制作・流通面ですね。音楽の制作については、おかげさまで優秀な音楽家の方とのパイプがたくさんあったのでそれほど苦労せずに手ごたえのある楽曲が完成したのですが、いざそれを世界中のピアノファンに知ってもらう、手にとってもらうための仕組みづくりには、本当にいろいろな方のご支援・ご協力をいただきながら選定・調整を進めました。

結果、前述の2社と一緒にプロジェクトを進めていくことになり、コンサートや動画と楽譜流通を連動させる現在の形に至りました。これからもこの流通面について適宜見直し・修正を図りながら、プロジェクトを成長させていけたらと思っています」

– 最後に、今後の展望についてお聞かせください。

「まずはたくさんの方に『PIANOIA!』の楽曲を知っていただき、世界中のピアニストに弾いていただける世界を創造していきたいと考えています。

そのために『PIANOIA!』の露出機会を増やし、実際にコンサートや映像を通じて一人でも多くの方に聞いてもらってその魅力をお伝えしていきたいと思います。 もちろん、ラインナップの拡充にも平行して取り組んでいきます。ご期待ください!」

世界中の音楽家が、気軽に楽しめるという点に強いこだわりをもつ加藤さん。近い将来、みなさんが足を運ぶピアノコンサートでも、『PIANOIA!』編の楽曲を頻繁に耳にすることになるかもしれません。

腕に覚えのある演奏家の方、ぜひ本プロジェクトにご注目ください!

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ノリコ・ニョキニョキ

COSMUSICA発起人/編集長。1989年生。ハープ勉強中。東邦大学医学部医学科中退、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。インハウスライターをしながら副業で執筆仕事をお引き受けしています(文字単価10円目安)。お気軽にお問い合わせください。