みなさま、お久しぶりです。ヴィオラ奏者のあきこです。6月中旬に無事に卒業試験を終え、ふたたび COSMUSICA に帰ってまいりました。留学生活最後の卒業試験について 2 回に分けてご紹介し、この連載の総まとめとしたいと思います。
修士課程卒業試験~ベルリン芸術大学ヴィオラ科の場合~
4 ゼメスター(1ゼメスター=半年)目の最後にやってくる、卒業試験。私の在籍していたベルリン芸大のヴィオラ科の修士課程(オーケストラ専攻)には以下のような課題が課されていました。
- リサイタル試験(公開)
– 80 ~ 90 分のプログラム
– プログラムについて書いた、10 ~ 15ページ程度の論文 - レパートリー試験(非公開)
– 大きな協奏曲(全楽章)
– オーケストラスタディ 5つ
リサイタルコンサートとレパートリー試験の間はおよそ2週間あけることが通例とされています。
ちなみに学部の卒業試験では、「14-days-piece」というユニークな(?)課題があります。試験の14日前に初めて曲が与えられるのですが、もちろん比較的簡単な曲であるものの、短い期間で知らない曲を準備するというのは楽なことではありません。15分程度しか弾かなかった、日本の学部時代の卒業試験とは大違いです。
初モノづくしの卒業試験!
私が先生とご相談してプログラムを決めたのは 2 月頃でした。本当はもっと早く準備を始めるないしは、試験を遅くしてしっかりと準備をしたかったのですが、さまざまな事情が重なりかなり遅めのスタートになってしまいました。また「修士なのだから一歩上のプログラムを」という先生のご提案もあり、自分のレパートリーだった作品をほとんど含まない、つまりほぼすべて新しい曲でプログラムを組むことになりました。
【リサイタル試験】
・J.S.バッハ:ヴィオラ協奏曲 変ホ長調 BWV1053(原曲:チェンバロ協奏曲)
・E.ペトロフ:独奏ヴィオラのための組曲 BWV2005
・W.ヤコビ:ヴィオラソナタ
・C.フランク:ヴィオラソナタ イ長調(原曲:ヴァイオリンソナタ)
【レパートリー試験】
・B.バルトーク:ヴィオラ協奏曲
・オーケストラスタディ
これまでにソロリサイタルを開いたことのなかった私。90分のプログラムを一度に抱えたこともありません。また、バッハの協奏曲では弦楽四重奏とチェンバロを伴奏に使い、自分の音楽キャリアで初めて、ソリストとして演奏することになりました。さらに、現代曲として選んだペトロフが非常に難しく、まともに弾けるようになるのに 5月半ばまでかかったり、そのために他の曲に割く時間が思うように取れなかったりと、まさに最後の最後に大きな壁に立ち向かうこととなったのでした。
オーガナイズも含めて“音楽家”…?
いつも呼ばれるところに行って弾くことが多い音楽家。私もかつて、知らない人の試験の伴奏に駆り出されたことがありますが、ついに今回、バッハの協奏曲の伴奏のために自分で人を集めたり、リハーサルのスケジュールを組んだりすることになりました。このときほど現代の予定管理ツール『Doodle』に感謝したことはありません。
前述のように、この曲では弦楽四重奏とチェンバロを伴奏として使ったのですが、弦楽器の知り合いはいたものの、チェンバロないし古楽科とは普段あまり接点がありませんでした。そのため、日本人の知り合いに古楽科助手の方をご紹介いただき、その方からチェンバロの学生へ仲介していただくことで、ようやくチェンバロの学生を見つけることができたのでした。弦楽四重奏やチェンバロが入るとなるとリハーサルも小さな練習部屋では難しいので、それらをオーガナイズする(企画の実現のために必要な人・場所などを手配する)のも一苦労でした。
また、試験2日前に催されたクラスの発表会の際、当日、ホールにあるはずのチェンバロがないという事態が発生しました。チェンバロの子が、「そういえば隣の部屋で見たことがある」というので、慌てて鍵を借りて部屋を開けてみると、そこにはホールにあったはずのチェンバロが…! すぐに学校の許可を取って元のホールに移動させ、本番前に無駄に力仕事をする羽目になったのでした(笑)。しかもそのチェンバロの状態があまりに悪く、チェンバロの子の手に負えなかったため、試験の際は直前に古楽科助手の方がいらして、わざわざ調律してくださったのでした…!
このリハーサルに加え、レッスンやピアノとの合わせなど、いろいろなスケジュールの調整が必要で、一週間前はもうてんやわんやでした。
こうして何とか試験日にたどりつ…く前に、論文という大きな壁もあったのですが、それについては次回、試験編でご紹介したいと思います! お楽しみに!
参考リンク:Doodle
あきこ@シュトゥットガルト
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