19世紀後半からは、それまで表立って主張してくることが少なかった“民族的な音楽”の発展が見られます。それはあくまで西洋音楽の枠をやぶるようなものではありませんが、そのエキゾチックな雰囲気にはやはり独特な魅力があるようです。
異国情緒たっぷりなロシア音楽
ロシア音楽の立役者として知られるのは、ミハイル・グリンカ(1804〜57年)。続いて、モデスト・ムソルグスキー(1839〜81年)やピョートル・チャイコフスキー(1840〜81年)らが活躍しました。
グリンカ/ルスランとリュドミラ
グリンカが1837年から42年にかけて作曲したオペラ。魔術師や魔女が登場する「メルヘンオペラ」で、西洋のオペラを参考としつつ、ロシアの民族音楽の特徴も巧みに織り交ぜられている、とても楽しい作品です。グリンカのオペラはほかに『皇帝に捧げた命』というものもありますが、ともにロシア音楽の発展の先駆けとなった作品として位置付けられています。
ムソルグスキー/歌劇『ボリス・ゴドゥノフ』
ムソルグスキーは、民族主義的な芸術音楽の創造を目指した作曲家集団「ロシア五人組」のひとり。歌劇『ボリス・ゴドゥノフ』は、16世紀末のロシア皇帝ボリスの生涯をオペラ化した作品で、ムソルグスキーの代表作のひとつに数えられています。
ボリスは、本来であれば別に正統な皇位継承者がいたにも関わらず、彼を暗殺し皇帝となった人物。そのため、罪悪感に苦しみ、幻覚におびえ、最後は正気を失い死んでしまいます。音楽は全体的に非常に力強く、情熱的。ロシア音楽ならではの迫力を隅々から感じられる傑作オペラです。
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
チャイコフスキーが作曲した最後の交響曲。
チャイコフスキーといえばロマンチックで華やかな音楽性で人気を博し、特に後期の交響曲やバレエ音楽、協奏曲はファンも多い作曲家です。意外なことに、チャイコフスキーが本格的に音楽を学び始めたのは21歳のとき。幼少期から専門的な教育を受けていた他の大作曲家に比べると、かなり遅いタイミングで音楽家としての人生をスタートさせました。
この交響曲のテーマは、彼の人生そのもの。初演後には「私の全ての作品の中で最高の出来栄えだ」と語ったといいます。チャイコフスキーはこの曲が初演されたわずか9日後に急逝し、まさにドラマの中でその生涯を終えました。
今日はロシア音楽をまとめてお楽しみいただきましたが、次週はチャイコフスキーのバレエ音楽を取り上げる予定です。とても華やかな回になりそうですので、どうぞお楽しみに♪
ノリコ・ニョキニョキ
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