進め! ヴァイオリンおけいこ道 第20回「近視と暗譜の意外な関係」

今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。

このコラム、今回でめでたく 20 回目を迎えまして、記念に先日「ヴァイオリン おけいこ」でグーグル検索したら(俗に言うエゴサーチですね)、検索結果の上から 6 つ目に出てきて嬉しくなりました。とはいえ、上位には双璧と呼ぶべきおけいこブログがそびえて立っているので、まだまだです。

しかし、1 回目のコラムをしみじみ読み返したら、わたし自身のおけいこエピソードを語ると宣言しているわりに、最近エピソード率減ってない? と感じまして、本日は初心に帰り、おけいこエピソードをつづります。

メガネアレルギー

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わたしは近視ですが、クラスで一番にメガネになったタイプの生徒です。というのは、小学 4 年生の視力検査で初めて再検査になって以降視力の低下を止められず、小学 5 年生で 0.2 を記録して眼科でメガネの処方箋を出されました。

思春期といいますか、この年頃に視力が落ち始めた子はそのことをものすごく気にします。この話、どうしてあまり世で見かけないのだろうって思うのですが、わたしの個人的な研究だと、小学校高学年でメガネになるかならないかの境目を生きている子は、メガネアレルギーを発するケースが少なくありません。

主な症状は、メガネをかけている人を直視できない、またはメガネという言葉を発すること・聞くことを恐れる、といったところ。わたしの場合は、ドラマでメガネをかけた俳優さんを直視できないレベルの重症。クラスメイトでおなじ境遇の子と日々の苦悩をこっそり語り合いながら支え合いました。

しかしついにメガネになってしまってからも、どうしても身内の前でメガネをかけるのが嫌で仕方なくて。両親はおろか、叔母にメガネを見せてと言われた時も拒絶しました。

プライドをかけた暗譜

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アレルギーはメガネが気になってしまうがゆえだったのでしょう、学校では積極的に使って、下校前にはケースに収め、家族の前では裸眼というスタイルで過ごしました(このスタイル、実はいまだに継続中です笑)。

親といる間はメガネをかけないと決めていたので、おのずと母と一緒のレッスンは裸眼で挑むわけです。徐々にかすんでゆく譜面。しかしわたしは持ち前の記憶力の良さを駆使して、曲をすぐに暗譜することで裸眼レッスンを守っていました。

しかし、ちょうど小学 6 年生の時に新しいヴァイオリンの先生につくことになりまして。初レッスンのとき先生はわたしの力を見るために、その場で譜面をパラパラとめくってわたしが過去に弾いたはずのエチュードのページを開きました。背中を冷や汗が流れます。

さすがに一年近く前に弾いたエチュードは暗譜していませんでした。先生のお部屋が暗いのも相まって、音符が見えず演奏はボロボロ。先生には、譜面を読めない、耳コピタイプの生徒かと思われてしまいました。

その日の 1 時間近い帰路の車中は、まさに地獄でした。笑

10 年以上たった今でも、視力 2.0 の母に「あなたの視力はわたしの 10 分の 1 なのよッ」と言われたときのショックは忘れられません。

反抗期×メガネ=バトル

そのあとしばらくは、メガネかけるかけない問題で何かと親子バトルをしていました。あゝわたしの暗黒時代。なぜそんなに嫌なのかと言われたら、嫌なものは嫌なのだから仕方ないとしか答えられなくて、当時のわたしは論理的に説明する能力がない自分に嘆いたものです。

今でもはっきりとした原因はわかりませんが、言うなれば初潮を迎えた自分に嫌悪感を抱くような感覚に近い気がします。大人になっていくイベントを、受け入れられるタイプの子とそうでない子がいますよね。わたしの場合は完全に後者でした。

ちなみに、早くコンタクトにしたら良かったんじゃない? と言われそうですが、我が家の方針ではコンタクトにしていいのは高校生から、という決まりでした。これは自身が高校時代からコンタクトヘビーユーザーである父の経験ゆえの意見ですが、今やコンタクトデビューの年齢はどんどん低年齢化していると思います。成長との兼ね合いもあるので、コンタクトレンズにする際は必ず信頼できる眼科を受診しましょう。

でもコンタクトレンズは視力を矯正できる視界が広いので、譜面を見るにはとても便利です。メガネだと視野の全てはカバーできませんからね…。

思春期を抜けて

その後どうやってメガネアレルギーを克服したかというと、正直いまだに完治はしていません。大人になるにつれて程よく図々しく譜面に近づく術を身につけたので、実家ではおそらく当時より見えてない裸眼で譜読みしています。しかし早く譜面台から離れるために、暗譜は我ながら早めです。悪いことばかりでもありません。笑

ちなみに一番最初に買ったメガネ、いまだに疑問ですが、選択にわたしの意見が全く反映されなかったんですよね。嫌う反面、若干の憧れも持っていたので理想のメガネ像があったのに、選ばれたのはプラスチック素材の縁なしメガネ。

両親がこだわりすぎた結果のスイス製高級メガネなのですが、クラスの男子には「なにそれ変なのオモチャみたい」と散々からかわれました。10 歳のときに思い描いていた理想のメガネに会えたのは高校 2 年生の春。やっと自分の意思 100 %で決められたメガネは今も使っています。

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あまりに天気が良かったから、先日意味もなく撮りました。


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ABOUTこの記事をかいた人

原田 真帆

栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院研究課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。佐々木美子、山﨑貴子、澤和樹、ジェラール・プーレ、小林美恵、ジャック・リーベックの各氏に師事。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。