今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。
今回のテーマは、「レッスンを楽しくする方法」を題して、端的に言うと「先生と打ち解ける方法」をつづっていきます。
レッスンを楽しくするには
レッスンはどうしても緊張をともなうもの。適切な緊張感はむしろ必要なものですが、余分にこわばると出せる力も出せずに、もったいないですよね。
レッスンにおける「緊張」をさらに突き詰めていくと、弾くという行為以前に、まず先生と自分との関係性に「緊張」を持っているものではないでしょうか。年頃によっては両親以外の大人と話すことが難しい子もいれば、純粋に相手が「ヴァイオリンの先生」だから緊張することもあるでしょう。
わたしももちろん、これまでさまざまな先生に教わってきた中でたくさんの緊張をしてきました。しかし自分の「おけいこ道」を振り返ると、長く師事している先生は、どの先生もわたしのレッスンではなぜかよく笑う、という現象が浮かび上がってきます。
一番わかりやすい例だと、直前のレッスンでは鬼の形相だった先生が、わたしのレッスンになった途端、おもしろくて仕方ないと言わんばかりにケラケラ笑い出したこと。これは嘘のような本当の話です。
幼い頃は無意識でしたが、大きくなるにつれて「先生をよく笑わせる」コツが見えてきました。笑わせるという言葉では軟派に聞こえますが、これは「先生との距離を縮める方法」と読み替えてください。先生も生徒もリラックスした状態になると、先生からより多くの言葉を引き出せることがあります。
先生と仲良くなるには
では一体「お互いリラックスする」コツとはなんでしょうか、という話なのですが、ひとことで言うとコツは「飾らない」こと。語弊を恐れずに言うと、先生に対して「友達や家族に対するとき」と同じ態度を心がけます。これはもちろん「リスペクト」ありきのことです。
緊張感というのは相手に伝搬するもの。相手の態度は自分の態度の鏡ですから、自分が過度に緊張していると、先生はまず「この緊張をどう取ろうかな」ということを考えるわけです。でも毎週なり 2 週間に一度なり、定期的にお会いする先生と毎回これをしていたらもったいないと思いませんか?
ヘンな例えですが、よく「好きな人に好かれなくて、好きじゃない人に好かれる」って言う女の子いますよね。あれは、自分の素を出せているかどうかが問題で、好きな人相手だと「かわいいと思われたい」というプレッシャーから素の自分を出せず、眼中にない相手だと気負わずに接することができるために好いてもらえるという図式です。
相手が自分に素の態度で接していると感じると、「この人は嘘がない」と思えるため、相手に信頼感が生まれます。与えられたものを与えられたように返したくなるのが人間。生徒がありのままの姿を見せることで、先生のほうもその信頼により応えたい、と自然に「信頼の相互関係」が生まれます。
適度にリラックスしてレッスンを受けるほうが、先生もリラックスできてお互いコミュニケーションを取りやすくなり、結果レッスンが充実する、というのが「飾らないこと」の真意なのです。
素を出していこう
緊張とは、自分の現状と理想のギャップが大きいほど生まれやすいもの。つまり「自分をよく見せたい」という気持ちが空回りしてしまうときに起こるものです。それはある意味で、「自分を偽る」ことと紙一重のように思います。
わたしの場合は、もともとの性格が「少々おっちょこちょい」というオプションゆえに、先生を笑わせてきたように思うのですが、たとえばこの「おっちょこちょい」を見せまいと封印してきたとしたら、レッスンはかなり苦しかったであろうことは想像にかたくありません。
無理に笑かそうとしても空回りするし、無理にいい子ぶる必要もないと思うのです。音楽は生身の人間が奏でることに意味があるものだとしたら、自分のキャラクターも伸ばしたほうが良いと思いませんか? 自分の音楽を探すためには、先生に自分のことを知ってもらうことも、ひとつ大切な要素だと考えます。
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