名曲紹介:クララへの慕情が生んだシューマンの名曲『クライスレリアーナ』

クラシックに馴染みのない方にむけて、音楽史を代表する名曲を紹介していくこの連載。前回はショパンのピアノ曲をご紹介しましたが、今日はそんなショパンに向けてシューマンから献呈されたこちらの曲集をご紹介します。

シューマン『クライスレリアーナ』(1838年)

ロベルト・アレクサンダー・シューマン(1810〜1856年)は、ドイツ・ロマン派で活躍した作曲家。もともとピアニストを目指していましたが指の故障から断念し、作曲家になったとされています。

クライスレリアーナは8曲からなる曲集で、題名のクライスレリアーナとは、作家であり画家であり、さらに音楽家でもあったホフマンの書いた音楽評論集の題名から引用されたものだそうです。

シューマンは大学時代からピアノをフリードリヒ・ヴィークに師事し、次第にその娘でありピアニストのクララに恋心を抱くようになります。ですが、ヴィークはふたりの恋愛に大激怒。その恋路を何年にもわたりこれでもかというほど妨害するのですが、ふたりはとうとう訴訟手続きまで取り結婚へと至るのです。

ヴィークによってクララと遠く隔たれていた間、シューマンは多くの代表的なピアノ曲を作曲しました。この曲集もそのうちのひとつで、「この数年間にシューマンが書いたすべての作品はクララとの関係を題材にしている」とする評論家もいます。クララもまた、シューマンの作品を積極的にコンサートで演奏するなどしており、ふたりが音楽を介してつながっていたことを考えると非常にロマンチックですよね。

シューマン「子供の情景」から『トロイメライ』(1838年)

「子供の情景」もまた同時期に書かれたもので、12曲からなる曲集です。本人も名言している通り、これは子供向けに書かれたものではなく、“子供心を描いた、大人のための作品”。つまり何かというとクララとの出会いから作曲時期までの思い出を描いたものだとされています。

ふたりは8人もの子供を持ち、互いに音楽家として共働きし公私ともに支え合いました。シューマンは晩年、精神疾患を悪化させて療養所で生活をしクララとは2年ほど離れていましたが、亡くなる直前に再会した際は彼女にほほ笑みかけ、ほとんど自由のきかなくなっていた腕をまわしたということです。

クララという存在がなければ、シューマンの音楽や人生は全く別のものになっていたでしょう。そんなことを思いながら聴いていると、各楽曲に込められた想いがより深く伝わってくるかのようです。

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ノリコ・ニョキニョキ

COSMUSICA編集長。1989年イギリス生まれ。東邦大学医学部医学科中退、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。広告代理店にてコピーライター、フリーランスのライター/編集を経て、現在は教育業界にてインハウスエディター。趣味はサイト運用。ハープ修行中。