藝大が来春新設の「ジュニア・アカデミー」お手本は英国にあり

2016年6月、東京藝術大学のリリースで「東京藝大ジュニア・アカデミー」が新設されると発表され、おけいこ界を震かんさせました。そして10月13日にはついに募集要項が出て、選抜方法や課題曲、授業料が明らかになりました。

実はそのお手本とおぼしき音楽教室が、ロンドンにあります。そこで本日はロンドン在住の記者が、その様子を調査しました!

そもそもなぜ “震かん” するのか

ロンドンからのレポート、の前に、そもそもなぜ藝大のジュニア・アカデミーという発案が世間に驚きを持って迎えられたのか、解説させてください。

これまでも日本国内に大学付属の音楽教室はいくつも存在し、藝大と並んでトップレベルを走る桐朋学園大学の「子供のための音楽教室」、西の桐朋と呼ばれる「相愛大学付属音楽教室」、東京音楽大学の「付属音楽教室」はおけいこ界では有名です。

武蔵野音楽大学・洗足学園大学・昭和音楽大学にも音楽教室があり、また公立大学の関連組織としては京都市立芸術大学の「京都子どもの音楽教室」があります。

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しかし国立大学での、いわば「進学予備校」のような組織は今のところ存在しません。まして藝大は国立ゆえに、附属高校からの進学すらエスカレーター制度を持たないなど、言ってしまえば「音楽教室出身者は必ず入れる*」と言われている桐朋学園とは一線を画してきました。

*=誤解を生まないよう補足させていただきますが、そもそも音楽教室(以下、音教)に入るために試験があり、年度ごとに実技試験があり、在籍できる段階でその実力が保障されているがゆえにできることです

しかもどの音教も設立理念には(一応)「幼児期にホンモノを教えることで人間力を高めて、かつソルフェージュを通して音楽家としての基礎を身につける」といったようなことを掲げているのに対し、今回藝大が立ち上げるジュニア・アカデミーは中学生対象、完全に「藝高生予備軍」な上に、人数からして将来的には藝高生の中でもトップレベルの子に照準を当てています(これ「ジュニア・アカデミー落ちたけど藝高受かった」って子出てくるで、ああ怖い)

これまで受験生にこびなかった藝大が、中学生ですでにめちゃめちゃうまい子に絞って募っているので、ジュニア・アカデミーはおけいこ界に激震を走らせたのです。

(ちなみに授業料が、藝大は国立なので年間50万程度なのに対し、ジュニア・アカデミーの方が2倍くらい高くてそちらにもビックリしました)

ていうかなぜ横文字なの?

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それにしても、なぜ藝大の「音教」は「アカデミー」というのでしょうか?

藝大ホームページに掲載された、ジュニア・アカデミー校長である植田克己教授のあいさつ文には、この音楽教室のルーツが戦前の「上野児童音楽学園」にあると書かれています。

昭和8年の上野児童音楽学園の開園であろう。これは同声会を設立者として、音楽学校の空き教室を利用し、音楽学校の教員と研究生を講師として週2回、 音楽の早期教育を官立学校が全国に先駆けて校内で実践したものである。同学園は、戦況の悪化に伴い閉鎖され、戦後も復活することはなかった
出典:橋本久美子・著「乘杉嘉壽校長時代の東京音楽学校 昭和 3 年 〜 20 年 ― その建学の精神の具現化と社会教育論の実践 ―( 2 )」
東京藝術大学音楽学部 紀要 第 34 集 抜刷(平成 21 年 3 月)

なるほど、国立大学(官立)がこうした教室を設置すること自体は、前例があったのです。桐朋や相愛の音教が戦後すぐに開校したことを考えると、かなり画期的な試みだったと言えます。

しかし今回新設される「ジュニア・アカデミー」、これ、実は全く同じ名前の施設がイギリス・ロンドンにあります。つまり、ルーツは大学自らの歴史の中に持ちながら、お手本がロンドンにあるわけです。

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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。