時の流れは速いもので、気づけばもう9月。COSMUSICAでは、音大を志す受験生のみなさまへ向けて、微力ながら対策法、在校生(卒業生)の声、受験情報を発信していきたいと思います。
今回は【東京藝術大学】を取り上げます。
受験対策
東京藝術大学の入試における「音楽に関する基礎能力試験」は、作曲科・声楽科・器楽科・指揮科・邦楽科に関しては、各専攻の第2回(古楽科は第1回)までの試験に合格していなければ受験することができません。
こうしたことからも、専攻実技がはるかに重視されているということは自明です。とは言っても、当然最終的に合格するためには、以下の試験科目においても綿密に対策を立てておくことが必要です。
楽典(音楽環境創造科を除く、各専攻志願者)
例年、幅広い知識が問われています。楽典の問題を解くことにかなり慣れていないと、60分の時間内に解くことは難しいと思われます。
一問目から問題文を正しく読み、問われている内容に即反応できる力が必要です。また、他大学では出題されることが少ない「属九の和音」「教会旋法」などは毎年問われますし、全ての音部記号に即した調号が書けることが必要です。年度によっては日本の音階、五音音階、全音音階、といったものも出題されるため、しっかり準備しておきましょう。
毎年出題される譜例を使用した問題では、音程・和音・調性判定に加え、非和声音の名称(経過音、逸音、掛留音など)の把握、また移調においては音の数が多いことに加えて臨時記号で書くことが求められています。このことからも、早くかつ正しく記譜できるようにしておくことが大切です。
また近年は、連符を拍頭に合わせて書き換えるといった問題が、平成26・27・28年度入試に連続で出題されています。リズム、特に連符の理解をしっかり整理して記譜できるようにしておきましょう。楽語に関しても、さまざまな楽器の奏法に関するものやドイツ語の楽語など幅広く出題されます。加えてリピート記号、装飾記号と奏法、音律や音響学の基礎的な問題も出題されますので、しっかりと準備をして試験に臨んでください。
聴音(作曲科・声楽科・器楽科・楽理科)指揮科は別課題
単旋律聴音、ポリフォニー的な二声聴音、和声聴音の全3題が課せられます。単旋律と二声聴音においては8小節ですが、例年、後半の4小節に音が多くリズムも複雑化するため、小節割りを「3・3・2」小節に分割したほうが記譜しやすいと思います。
従って、前半4小節は落とさないことが前提で、一気に難易度が上がる後半4小節が点数の分かれ目となります。転調した際の臨時記号にも正しく対応できる力を身につけましょう。
また、和声聴音は毎年、四声体開離で出題されています。多くの借用和音が使用されているため、さまざまな響きに対応できるように準備しておきましょう。
新曲視唱(作曲科・器楽科・楽理科)声楽科・指揮科は別課題
転調や変化音を含むものの、そこまで歌いづらい課題ではありません。しっかり準備していれば歌えると思いますが、楽譜に記されている細かなアーティキュレーションに即した表現が求められます。
リズム課題(作曲科・器楽科・楽理科)声楽科は別課題
音価が正しく理解できているかを問われている課題です。また連符に関しては少々複雑なものも含まれています。また、新曲視唱課題と同様に細かいアーティキュレーションがつけられていますので、ただ読むだけでなく、音楽として表現できるように準備しておくことが大切です。
卒業生の声
ただ受験情報だけでは殺伐としてしまうので、在校生もしくは卒業生による母校へのコメントを紹介するコーナーを設けました。
東京藝術大学音楽学部は日本でもっとも古い歴史を持つ音楽学校です。その前身は東京音楽学校にあたり、滝廉太郎や山田耕筰といった著名な卒業生がいます。わたしは附属高校から藝大を目指しましたが、これはぜひとも東京藝術大学に入りたいと思ったからです。
権威ある学校で学ぶことで、日本はもとより、世界を牽引するような優れた音楽家を目指そうと、入学を志しました。レベルの高い同級生や先輩・後輩からの影響は数知れず。在学中は学校にいるだけでも、友人の練習する音色に刺激を受ける日々でした!
普段の授業に加えて、演奏家や文化人を招いた特別講座も藝大ならでは。わたしは坂東玉三郎や坂本龍一、平田オリザ、ニコライ・バーグマンなどの講座に参加しました。また、藝大美術学部はもとより、藝大の建つ上野公園にはたくさんの美術館があり、多くの文化的な体験を得られます。
現在藝大は、より国際的に強みのある大学になれるよう、改革が始まったところです。ぜひ、あなたの目で、世界を確かめてみませんか?(M.H 器楽科卒業)
受験情報
SSP選抜について
東京藝術大学では、これまでの一般入試に加え、SSP (Special Soloist Program) [飛び入学] 選抜が始まります。(ピアノ専攻,弦楽専攻(ヴァイオリン,チェロ)のみ)
以下、公式ホームページより、その趣旨と選抜詳細を転載いたします。
東京藝術大学音楽学部SSPの目的は,音楽分野における卓越した才能を高度に発展させ,我が国はもとより世界的な音楽文化の振興に対して生涯にわたって貢献する個性的・先駆的な人材を戦略的に育成することです。類い希な表現力や高度な専門的技能,強靱なメンタル等のきわめて優れた資質・能力を有し,将来的に国際舞台での活躍を志す若者に対して,入学当初から特色ある高度な大学教育の機会を提供するものです。
なお,本プログラムの特徴として,次の特別カリキュラム等が用意されます。1)個人レッスン時間を通常カリキュラムから倍増すること
2)海外一流演奏家による特別レッスンをはじめ,海外一流音楽大学等への留学や国際舞台に
おける演奏の機会等を優先的に提供すること
3)選択科目は実技教員と検討の上,自由な組み合わせ(語学科目に重点を置く等)が可能と
なること
4)成績優秀者については,学部を 3 年間で早期卒業して,大学院進学や海外留学を可能とす
る特別カリキュラムを編成するとともに,授業料免除や特別奨学金による経済的支援を開始
すること
5)複数教員による手厚い指導・サポート体制等,充実したキャリア形成支援をおこなうこと提出書類(自己推薦書,推薦書,調査書等),専攻実技試験,基礎能力検査及び面接により,多角的な視点から学生の資質・能力を評価し,総合的に合否を決定します。
・ 自己推薦書では,国際コンクールにおける入賞歴等,これまでの音楽活動における顕著な業
績などを高く評価します。
・ 推薦書及び調査書等では,早期に大学教育を受けるために必要な基礎学力などを評価します。
・ 専攻実技試験,基礎能力検査及び面接では,海外一流演奏家にも参画していただく場合もあ
り,音楽の基礎能力及び専攻実技に関する表現力などを評価します。
詳細は、公式ホームページ募集要項(SSP)をご覧ください。
入試情報
<一般>
・出願期間:平成29年1月23日(月)~2月1日(水)
音楽学部SSP入試を除くすべての学部入試はインターネットにより出願を受け付ける。 インターネット出願の上,上記期間内の消印で郵送された願書に限り受け付ける。
・試験日程:平成29年2月25日(土)~3月7日(火)
※実際の試験日程は、学科・専攻等により異なりますので、公式ホームページの入試情報でご確認ください。
・出願期間:平成28年11月1日(火)~平成28年11月7日(月)
・試験日程:
第1次選考
平成28年11月14日(月)に本人宛に合否通知を郵送します。
第2次選考
平成28年11月19日(土)
COSMUSICA編集部
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