時は大航海時代。人類初の世界周航を成し遂げた航海者たちの物語。樽屋雅徳/マゼランの未知なる大陸への挑戦

こんにちは。コントラバス奏者、そして! 吹奏楽指導者の井口信之輔です。

このコラムは、弦楽器奏者でありながら吹奏楽を愛するコントラバス奏者の僕が、大好きな「吹奏楽」と高校時代に得意だった「世界史」を組み合わせて、おすすめの作品を紹介していく連載企画です。

2回目となる今回は、大航海時代へと舞台を移し、人類初の世界周航を試みた航海者フェルディナンド・マゼランの未知なる大陸への挑戦を描いた作品を紹介します。

樽屋雅徳『マゼランの未知なる大陸への挑戦』

この作品を書いたのは、日本人作曲家の樽屋雅徳氏。

聴く人の心に響くドラマチックな音楽が魅力で、氏の作品は全国各地の中高吹奏楽部やアマチュア吹奏楽団が取り上げ、演奏会や吹奏楽コンクールまで、幅広い場面で演奏されています。

樽屋 雅徳(たるや まさのり、1978年 – )は、日本の作曲家、編曲家。作品は吹奏楽編成によるものが多い。

銚子市立銚子高等学校卒業、武蔵野音楽大学音楽学部作曲学科卒業。佐藤博、宮本良樹に師事。大学卒業後は、作・編曲活動の他、吹奏楽団体の指揮・指導も行っている。近年、スクールバンドから市民バンドまで多くの吹奏楽団体が、コンクールや演奏会で作品を取り上げ、注目を集めている作曲家の一人である。現在、銚子市立銚子高等学校吹奏楽部の指揮者・音楽監督を務めている。

引用:wikipedia-樽屋雅徳

おはなし

物語の舞台は15世紀から17世紀前半にかけての、いわゆる「大航海時代」。

ヨーロッパ諸国の航海者たちが、それまでにない地球規模の航海・探検をし、インド航路の開拓や新大陸の発見。さらには人類初の世界周航を成功させたり地球の球体説を実証したりと、数々の「発見」があった時代です。

そして、この物語の主人公フェルディナンド・マゼランこそが、スペインの艦隊を率いて人類初の世界周航を試みた人物でした。

マゼラン自身は、航海中の戦いで命を落としてしまいますが、その後も彼が率いていた艦隊は航海を続け、1522年にはついに人類初の世界周航を成し遂げました。それにより、地球が球体であることを証明するという歴史的な出来事に結びついたのです。

こうして「フェルディナンド・マゼラン」の名は後世に残されていくこととなりました。

ききどころ

スペイン艦隊の隊長マゼランは、1521年にフィリピンの英雄ラプ=ラプ率いる軍隊に敗れ命を落とし、自身が世界周航を成し遂げることはできませんでした。

しかし、もしマゼランの魂が今に残り世界周航の旅に出かけたら、どんな冒険をしていたのか。『マゼランの未知なる大陸への挑戦』では、世界史には書かれていない、マゼランの未知なる航海が幕を開けます。

歴史に「if」はありませんが「もしマゼランの魂が現世に残り、世界一周を続けたなら・・・」と “未知なる” マゼランの航海をイメージして作りあげました。(樽屋雅徳)

引用:CAFUA  RECODRS マゼランの未知なる大陸への挑戦《楽曲解説》

どこまでも広がる壮大な海

どこまでも広がる壮大海に勇ましい音楽とともに姿を表すのは、マゼランが指揮するスペイン艦隊なのか…。マゼランの死後を描いた作品ですが、この物語の幕開けは、マゼラン率いる艦隊が大海原へと乗り出す姿も想像できます。

吹奏楽ならでは! 映画のワンシーンを思わせる大迫力の音楽

そして徐々に不穏な雰囲気へと変わり、打楽器セクションの激しいリズムとともに、ハリウッド映画の戦闘シーンを思わせるような場面へと突入していきます。

この航海は、ときには島の人々にスペイン王国への服従とキリスト教への改宗を要求することもあり、そこから壮絶な戦いがあったことが想像されます。

マゼランが命を落とすこととなったフィリピンのマクタン島では、ふんどしに短剣、槍などの装備で戦うマクタン島の領主ラプ=ラプ率いる部隊と、鎧を身につけたマゼラン軍との戦いが繰り広げられました。

鎧で身を固めたマゼラン軍は圧倒的な防御力を誇りますが、海岸での戦いでは身動きが取りにくく不利となり、弱点であった足元を狙われるとマゼラン軍の勢力は一気に落ちてしまいます。島の地理と潮の満ち干きを知り尽くしたラプラプ軍の見事な戦術も加わり、マゼラン軍は敗北を喫したのです。

樽屋作品の魅力はなんといっても美しいメロディ!

場面は変わり、緩徐楽章を思わせるような暖かいコラールへと移ります。

ゆったりと歌われる音楽に揺られ、現世に残るマゼランの魂が、再び大海原へと乗り出すのでしょうか。樽屋作品の魅力はなんといっても親しみやすく、心に響く暖かいメロディです。

軽快なテンポではじまり急-緩-急-緩と展開される音楽は、ときにアイリッシュ音楽を思わせるメロディや、賑やかな港町の市場のような明るく軽快な音楽も顔を出します。

どこまでも広がる空と海と大地を駆け抜け、世界を周るマゼランの魂

現世に残ったマゼランの魂はどこへ向かい、何を見ているのか。いろいろな想像しながら音楽に触れるのも、この作品の楽しみ方のひとつです。

美しいピアノのメロディが奏でられると写真集を眺めるように次々と音楽が展開して行き、最後は世界周航を成し遂げ、後世に名を残す「フェルディナンド・マゼラン」の姿を高らかに歌い上げるよな感動的なコラールで幕を閉じます。

僕はこの曲のラストに、未知なる大陸への挑戦を成し遂げたマゼランの魂が船に揺られ、壮大な海の水平線の向こうへと消えていくシーンを想像しています。

-おしまい-


この『マゼランの未知なる大陸への挑戦』は発表された当初から爆発的な人気となりました。普段、あまり吹奏楽作品を聴く機会のない人にもおすすめな作品です。

演奏時間は約9分で曲の難易度を示すグレードは4となっています。演奏会のプログラムとして取り上げられるほか、吹奏楽コンクールでも毎年のように演奏され、これまでたくさんの中高生たちが航海者となって、大海原へと船を出したことでしょう。

吹奏楽×世界史でお届けするこのコラム、次はどの時代へと向かうのでしょうか? 次回もどうぞお楽しみに。

ABOUTこの記事をかいた人

井口信之輔

千葉県出身。洗足学園音楽大学卒業。クラシック音楽を軸にコントラバス奏者として活動するほか「吹奏楽におけるコントラバスの理解と発展」に力を入れており、SNSを通し独学で練習に励む中高生に向けた発信をおこなっている。また「弦楽器の視点から見たバンド指導」をテーマに吹奏楽指導者として多くの学校で講師を務めている。昭和音楽大学研究員、ブラス・エクシード・トウキョウ メンバー。これまでにコントラバスを寺田和正、菅野明彦、黒木岩寿各氏に師事、指揮法を川本統脩氏に師事。趣味はアロマテラピーと釣り、ドライブ。