今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。
今回のテーマは「音階」。苦手意識を持つ人や、嫌いだという人も多いのでは?
音階はお好き?
音階はヴァイオリン学習者にとっては欠かせないものです。様々なレベルに合わせた教本が出版されていて、日本では「小野アンナ ヴァイオリン音階教本」や「セヴシック」、そして「カール・フレッシュ」がメジャーです。おけいこ道を歩む皆さんは、この教本のどれかには必ず出会っていることでしょう。
そしてどうして勉強しなければいけないのという質問があるように、なぜ音階を弾かなければいけないのと思っている人は少なくないはずです。今日は簡単ながら、音階を学習する意義や、音階をさらうことで得られるメリットについて書いていきます。
調性感覚を養う=音程が良くなる
音階は調性感覚を養うことに大きく貢献します。調性感覚とは、それぞれの調に適した和声感とも言い換えられます。一口に正しい音程と言っても、そこには様々な種類の音高(音楽高校ではなく、音の高さを指す用語)が存在します。「ドミソ」に合う「ミ」と、「ラドミ」に合う「ミ」は違うのです。
階名ひとつに対して、耳で聞き取れるのは約10段階あると言われるほど、音程とは実に繊細なもの。たとえば「ミ」が10個あるとして、自分が今奏でる音楽にとってどの「ミ」がもっとも適切か、選び取る能力が必要です。これができて初めて、本当に音程が良い、良い調性感覚を持っていると言えます。音階を弾くことで、演奏家はそういった調性感覚を身に付けていくのです。
耳だけでなく、手の訓練にも
音階を弾くことは耳に調性感覚を植え付けるのみならず、手に音程感覚を授ける意味でも大切です。たとえば弦楽器だと必ずダブルストップ=重音の音階を学ばなければいけませんが、音階練習で様々な和音の形が手になじめば、楽曲でそういった和音に出会った時に瞬時に対応できます。
わたしは中学生時代に先生に言われたことで、今も継続していることがあります。それは、フィンガードオクターブと10度の音階を毎日欠かさずにさらうということです。このときの先生の教えを実行しているおかげで、今非常に助けられていると感じます。曲の途中でとっさに10度が出てきても、普段のおさらいが役立って、指をぱっと10度に広げることができるのです。皮肉なことに、それまで音程が悪くても10度のところだけ正しい音程で弾けることもあります。
もちろん音階も音楽的に弾くべきで、ただの機械的な運動になってしまうのはまた違うと思いますが、こういった面で指の良い訓練になっていると感じることが多くあります。
音楽高校や音楽大学の受験を考えている方は、音階で試される場面に遭遇します。これは容易なことでなく、非常に緊張することですが、むしろそこで自分の良いところを見せよう、という気持ちで取り組んでみてください。
*PR*
「進め! ヴァイオリンおけいこ道
あどゔぁんす」
おけいこ会員絶賛募集中
月額500円で、より深く本音を語った会員限定記ことが読めます!
会員登録はこちら↓からどうぞ
最新記事 by 原田 真帆 (全て見る)
- 次々に演奏し、ばんばん出版。作曲家エミーリエ・マイヤーが19世紀に見せた奇跡的な活躍 - 24.05.18
- ふたりで掴んだローマ賞。ナディア&リリ・ブーランジェ、作曲家姉妹のがっちりタッグ - 23.10.30
- 投獄されても怯まず、歯ブラシで合唱を指揮。作曲家エセル・スマイスがネクタイを締めた理由 - 22.11.07
- 飛び抜けた才能ゆえ失脚の憂き目も経験。音楽家・幸田延が牽引した日本の西洋音楽黎明期 - 22.09.28
- 「暗譜」の習慣を作ったのは彼女だった。クララ・シューマンという音楽家のカリスマ性 - 22.01.30