今週もおけいこ道のお時間がやってまいりました。ヴァイオリン弾きの卑弥呼こと原田真帆がお送りいたします。
今日のテーマはコンクールについて。新年度とあって、これから来たるコンクールシーズンに考えを巡らせている方も多いのでは?
コンクールはマストなのか
コンクールは必修科目かと言えばそれは違います。ただいろいろな点でわかりやすいので、推奨科目とは言えます。
まずわかりやすいのが、課題曲(曲がなくても制限時間)があって、それに「通過」と「通過ならず」どちらかの結果が出ます。
また同世代の同じ楽器の人たちに出会えば、集団の中での自分の立ち位置がわかります。目標を立てやすくなるのは間違いないです。
どっぷりハマりすぎると、あのコンクールはこういう傾向の人が受かりやすい、なんて非常に気を揉むお話が始まってしまうので、用法・用量はお守りくださいという感じですけれどね…!
挑戦したい! そのときは
さて、ではコンクールに参加してみたい! と思ったときはどのように動いていきましょうか。まずは指示している先生にご相談です。黙って出場なんてことは言語道断ですよ…! もし具体的に出たいコンクールがあるのなら、出場する前の年なんかに聴きに行けるといいですね。刺激にもなりますし、自分の目標設定やタスクがはっきりします。
先生に出場OKをいただけたら、申し込みと課題の準備が始まります。日本だと夏はとってもコンクールが多いので、その前、春から夏の初めにかけては申し込みシーズンと言えます。
まずは申込用紙の手配。今はWebから印刷できるものも増えましたが、未だ取り寄せ式のところもあります。申込用紙が手に入ったら住所氏名年齢職業人となり(最後は嘘です)や演奏する曲目などを書き、写真を貼って、参加費を振り込んで、振込用紙の控えを申込書にのり付けして、書留で送って…この工程の中で必ず郵便局ないしは銀行に足を運ぶ必要があります。
そうなんです、面倒なんです。しかも、デイタイムは学校に缶詰な就学児の手では難しい。つまり、親御さんのサポートが不可欠なのです。そして課題の準備は本人に一生懸命取り組んでもらうとして、当日は多少小綺麗な格好をしなくてはならないので、靴も含めてお支度が必要ですね。また会場が家から遠い場合には交通機関・宿泊場所の手配も欠かせません。はぁ、おけいこ道って大変…。
結果を追い求めない
こうも手間がかかるとつい見返りを求めたくなるものです(わたしはいつも求められます)。でも結果が付いてくるときって、たいがい無欲で弾けたときなんですよね。
絶対に受からないからいいやーという「投げやり」ではなく、弾いている最中は結果のことは忘れて、音楽に没頭できたときこそが「無欲」。あ、なんか出し切れたわーってときに、ふっと結果も付いてくるような気がします。だから初めから「結果! 結果!」とがっついてしまうと、変な力が入ってしまうのでよくありません。
昔あるコンクールで1位をいただいたあとのインタビューでわたし、「コンクールは自分との闘いだと思うんです」なんて言い残しているみたいですよ。意外にかっこいいこと言いますね。
インタビューではその後、「世間を見渡すとたくさんのすばらしい音楽家が演奏会を開いているわけで、そうした中でも自分の気持ちを強く持って『自分の演奏会』をするための練習の場がコンクールだと思う」といった趣旨のことをお話ししています。
何って、この前ひさしぶりにその記事を読み返したんですよね。最近はつい目の前のことに追われがちなのですが、かつての自分が見据える“未来”にふれて、襟を正す思いでした。
*PR*
「進め! ヴァイオリンおけいこ道
あどゔぁんす」
おけいこ会員絶賛募集中
月額500円で、より深く本音を語った会員限定記事が読めます!
会員登録はこちら↓からどうぞ
最新記事 by 原田 真帆 (全て見る)
- 次々に演奏し、ばんばん出版。作曲家エミーリエ・マイヤーが19世紀に見せた奇跡的な活躍 - 24.05.18
- ふたりで掴んだローマ賞。ナディア&リリ・ブーランジェ、作曲家姉妹のがっちりタッグ - 23.10.30
- 投獄されても怯まず、歯ブラシで合唱を指揮。作曲家エセル・スマイスがネクタイを締めた理由 - 22.11.07
- 飛び抜けた才能ゆえ失脚の憂き目も経験。音楽家・幸田延が牽引した日本の西洋音楽黎明期 - 22.09.28
- 「暗譜」の習慣を作ったのは彼女だった。クララ・シューマンという音楽家のカリスマ性 - 22.01.30