進め! ヴァイオリンおけいこ道 第3回「親はレッスンに行くべき?」

今週の「おけいこ道」のお時間がやってまいりました!
こんにちは、卑弥呼こと、ヴァイオリン弾き原田真帆です。

今日のトピックは「レッスン付き添い問題」。レッスンって、親が一緒に行くべき? どうなの? わたしの経験をお話ししたいと思います。

◆ご近所編

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わたしはかつて、隣町(現在は合併して同じ市内)の先生のところへ習いに行っていました。距離は車で10分未満。でも徒歩で行くには少し遠く、おそらくわたしの家からは自転車で行けるくらいです。先生とは、町のスーパーでお会いしたりするくらいの距離感でした。

その頃わたしの母は、レッスン中の先生の言葉を手帳にメモしていました。母の手帳は1週間/1ページのウィークリーページが週に一度のレッスンメモで埋まりました。当時は練習も母がつきっきりで、楽譜の記入も任せきりでしたので、ひとりでレッスンに行ったことはなく、たまにはレッスン中に母が席を外すことがあったかもしれませんが、平日の夕方に母の車で一緒にレッスンに行くのがお決まり。

レッスンでめちゃめちゃ怒られた日なんかは、帰りの車内でも母に怒られたりして。帰りに寄ったスーパーの駐車場にて、母の買い物を待ちながら車内でわんわん泣いた日も少なからずありました。笑

そんな当時の先生は、小学校低学年の頃からおひとりで栃木から東京へレッスンに通ったそうな。東京在住のおばあさまが駅で待っていて、レッスンへも連れて行ってくれたそうですが、当時は携帯電話もありませんし、ひとりで電車に乗ることは、ある意味今より心配かもしれませんね。毎週末レッスンに行っていたので、「休みなんてなかった」と言います。

◆隣の隣の町へ

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小学6年生の頃、わたしは県内の別の先生のところに通うことになりました。お宅はうちから車で50分。電車は1時間に1本のローカル線しか通っていない町で、それを乗り継いで行くよりも、車で行くのが一番早いのです。

初めて伺う前、わたしが学校に行っている間に母はひとり「予習」へ。母は長距離の運転は必要のない暮らしが続いたため、50分間も運転するなんてもしかしたら教習以来だったのではないかと思います。道に詳しく運転も得意な父と、前夜に何度も地図をおさらいしていました。以降、休日は父に送ってもらいましたが、やはり平日は母が行くしかありません。まして平日は学校から帰ってきてから出かけるので、帰りは必然的に真っ暗。街灯のあまりない田んぼの中、車の前照灯をハイビームにして走ります。

併せてソルフェージュの先生も、ヴァイオリンの先生のお宅の近くに住む方に変えたのですが、そちらではレッスン室が手狭なため、母はレッスン中退席する形式に。ところが田舎の観光地のため、カフェなどはどこも18時には閉店。ファミレスはない、マックもない非常事態。レッスン2時間の間に家に戻っても、とんぼ返りしないと間に合わない…隣町のジョイ◯ルという安すぎて怪しいファミレスにチャレンジしたこともありましたが、最終的には役場の駐車場で、街灯を頼りに読書するスタイルが採用されました(季節が良いとき限定)。

そういうわけなので、その後の中学時代のヴァイオリンのレッスンも “家で先生がおっしゃったことを確実に実践するため(わたしの記憶力は信頼されていないようだ)” 母はレッスンを聞いていましたが、単純に「レッスン中、居場所がない」というのもその理由の一要素ではあります。今もその先生のところに伺うときは、実は母が同席します(最近ちょっと寝てませんか?)(いや運転お疲れさまです)(帰りもお願いします)。今やわたしも運転免許がありますが、すでにペーパードライバー。運転の目標は、ヴァイオリンの先生のお宅にひとりで行くことだったりします(含※急な坂道)。

◆先輩お母さまの言葉

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わたしは、学校では優等生キャラで家ではひとりっこ全開だったため、レッスンで親がいない日はいつもより緊張せず、あれこれのびのびと反応し、先生の方も少し驚いているような感じがしました。とはいえ、高校、大学のレッスンは親はどうしても来られないので「ちゃんとやってるの!?」と疑われることも多く、「語って理解されないならいっそ一緒に来てもらった方がマシ」くらいに思ったことも。笑

冗談めかして書きましたが、母としては、中学時代についた、これまた別のソルフェージュの先生のお母さまのお言葉が、脳裏に刻まれているようです。

というのは、そのお母さまがある時「いつもいらしていて偉いわねぇ。やっぱりレッスンはお母さまも聞かないとねぇ」と母におっしゃったそうなのです。その先生のお宅は町なかにあり、それこそ時間を潰せる場所はたくさんありました。が、そのお言葉以来「受験まではレッスンを一緒に聞こう」と決意したとか。

母は元々の性格が真面目。レッスンも、特にソルフェージュは専門用語が多くてわからないなりに、一生懸命聞いていました。だからこそ、わたしが楽語のテストの答え合わせ中に、『荘厳に』「そうげんに!」と元気よく答えて、場が静まり返った時、

「………ごん。。。」

とツッコめたのですよね、母上。

◆レッスンに付き添ってみる

そんなこんな、わたしの場合は「車がないと通えなかった」などの事情も相まって、母はかなりレッスンについてきていたケースだと思います。例えば同じ住宅街に先生がいらっしゃるからお子さんだけで通わせても安心♪ とか、下のお子さんが小さいから目が離せないとか、親御さんが共働きでどうしてもついていけないとか、ご家庭により事情も様々と思います。

ただ、音楽高校受験の場合は、ぜひ親御さんもレッスンを聞いて、大人の語彙力と理解力でもって、お子さんのフィードバックを手伝ってあげてもいいのかなぁ、と個人的には思います(くれぐれも「なんでできないの!?」と怒る要員にはならないでくださいね)。たまにで良いので、ご一緒してみてはいかがでしょう?

 

原田 真帆

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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。