スターウォーズも“ドイツ管“で演奏? ドイツのトランペット事情

こんにちは。ドイツでモダントランペットとバロックトランペットを勉強している齋藤 友亨(ともゆき)です。先日は僕の学校生活についてお伝えしましたが、今回はトランペットに特化した記事をお届けします。

▶︎「【ドイツ】ドイツの音大生活と日本の違い【留学】」

今日はさまざまなトランペットの種類を紹介します。

 ロータリートランペット(ドイツ管)

ドイツ(とオーストリア)で主に使われるトランペットやクラリネットは、日本やアメリカで使われているものとは違う構造の楽器です。もちろん日本やアメリカでもロータリートランペットは演奏されていますが、基本的に“トランペット”と言えば「ピストントランペット」で、ソロや吹奏楽はもちろんのこと、オーケストラでもドイツの音楽以外はピストンで演奏されます。

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ピストントランペット

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ロータリートランペット

それに対し、ドイツで使われるトランペットはロータリー・トランペットと呼ばれるもので、ホルンのようなロータリーシステムが使われています。ドイツでは Deutsche Trompete(ドイツトランペット)と呼ばれていて、日本でもドイツ管と呼ばれることもあります。管の巻きを水平に構えて演奏します。

ドイツでは”トランペット”というのはあくまでこのロータリートランペットで、基本的にはほとんどこちらで演奏します。

たとえばオーディションなどで「ハイドンのトランペット協奏曲」を演奏する時は、“ドイツ管のB管で演奏すること”と指定されています。

オーケストラでも、フランスの音楽でもイギリスの音楽でもアメリカの音楽でも、ドイツで演奏するならトランペットは基本的にこれです。日本ではロータリーは特殊管*扱いですが、ドイツではピストンが特殊管扱いになります。

*特殊管=特殊管というの主として使われる以外の同族楽器のことを意味します。クラリネットのEs管、ワーグナーチューバなど

ベルリンフィルはスター・ウォーズを演奏するときでもロータリートランペットを使います。笑

ロータリーバルブの仕組みと音色の特徴

ロータリーシステムの仕組みは、弁を回すことによって息の流れる方向を変えて管長を変化させるというものです。

約90°の回転で音が変えられるので、ストロークが少ない【出典】YAMAHA 楽器解体新書

このように管長が長くなると音が低くなります。3 つの管はそれぞれ長さが違うので、これの組み合わせで半音階を吹くことができます。

金管楽器は基本的に唇の振動を楽器に伝えて音を出す楽器なので、同じバルブを押してもその倍音列上のたくさんの音が出ますが、ロータリーシステムにおいてバルブシステムはあくまで補助という感じです。

ロータリートランペットはベルの開きも早くかつ大きいこともあり、太くあたたかい音色がして他の楽器ともよく音が溶け合います。

いわゆるトランペットは「ジャズトランぺット」

日本で知られている一般的なピストントランペットは、ドイツでは「ジャズ・トランペット」またはAmerikanische Trompete(アメリカントランペット)と呼ばれています。略してアミーと言われることもあります。

ベルリンにある楽器博物館にもピストントランペットは“ジャズトランペット”と展示されています。

もちろんドイツでもこのトランペットは使われていますがオーケストラではやはり基本的には使われません。もちろんオーケストラにも指揮者にもよるんですが、ピストンを使う割合はかなり少ないです。

ただ、ピストントランペットは特殊管なので“特殊管手当て”がつくオーケストラもあり、僕の先生はイタリアオペラをやるときには積極的にピストンを使っているとも言っていました。笑

ベルリンフィルは特にピストンをほとんど使いませんが、さすがにマンボをやったときはピストンだったようです。笑

ピストンの仕組みと音色の特徴

ピストンはロータリーバルブとは異なり、筒状になっているものに穴が開いていて、それを押すことによって管の長さを変えるというものです。

ピストン上下の運動距離は大きい
【出典】YAMAHA 楽器解体新書

ロータリーよりもストロークが長いですが、そのぶん機動性が高く、細かい動きや速いパッセージに適しています。

音色の特徴としては明るく輝かしい、華やかな音色です。クラシックにもジャズにもポップスにも使われるオールラウンドなトランペットです。

似て非なるもの!? コルネットとは

original_1_signaturekornethg【出典】Schagerl公式サイト

トランペットよりちょっとだけ巻いているのがコルネット。音域はトランペットと同じですが、起源は全く違うんです。

コルネットは円錐形の楽器なので音がトランペットよりも柔らかく、より機動性に優れています。そのため超絶技巧が盛り込まれた曲がたくさん作曲されました。

フリューゲルホルン

フリューゲルホルンは音域はトランぺットと同じですが、ホルンのような柔らかい音のする楽器で、アンサンブル、ソロ、ジャズ、吹奏楽、金管バンドなど幅広く使われます。

ちなみに日本ではほとんど見かけませんが、ドイツにはロータリー式のフリューゲルホルンもあります。

zoom_136734_schagerl_fh_eigenbau_-_schwarz【出典】Schagerl公式サイト

こんな音がします。

ピッコロトランペット

ピッコロトランペットは普通のトランペットの半分の長さで、華やかで美しい高音が出ます。

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バッハなどのバロック音楽や、展覧会の絵のソロなどのオーケストラなどでも使われます。

ご先祖様! ナチュラルトランペット

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この絵の人が持っている楽器。

バルブシステムなどが全くついていないトランペットで、半音階は吹けません。高音部に自然倍音が集中しているのでバロックの時代の曲は高音ばかりなんです…。

こちらの動画に登場するのは、孔がついていて音程がある程度調節できるものです。バロックトランペットと呼ばれていて、僕も大学で勉強しています。

ちなみにこの楽器を吹いても特殊管手当が出ないというオーケストラもあるそうです。理由は”これはもともとのトランペットだから”というらしいです。まあ歴史のあるオーケストラはバルブシステムができるずっと前から存在しているので、そう考えると今のトランペットの方が特殊管なのかもしれませんが…。笑

トランペットは種類がたくさん

トランペットには本当にたくさんの種類があり、すべて演奏できなくてはなりません。音域は狭いですが、その分頭の切り替えが必要なのです。トランペットはたくさんの表現の可能性がある素晴らしい楽器なので、ひとりでも多くの方に興味を持っていただけたらうれしいです。

こちらも併せてどうぞ!
▶︎齋藤 友亨ブログ「あうすどいちゅらんど」

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11歳で神代修の元でトランペットを始める。2012年東京音楽大学に入学、2013年に渡独しRainer Auerbachに師事。2015年にヴュルブルク音楽大学に入学。