どんな入学試験? 東京芸術大学音楽環境創造科の「自己表現」を考察

こんにちは! ちょんちかです。

東京藝術大学 音楽学部の中で、群を抜いて謎に包まれている学科「音楽環境創造科(=音環)」について、在校生が必死に説明してみよう! という試みも今回で第3回目。

▶︎第1回:ついに解明! 言語化不可と思われた「音楽環境創造科」を在校生が説明してみる
▶︎第2回:【音楽環境創造科】結局入試科目の「音楽」って何が出るの?

今回は、音環の入試要項を見た受験生が最も首を傾げるであろう科目「自己表現」についてピックアップさせていただきます。

学科のイベントなどで受験生の方とお話しする機会があるんですが、必ずといっていいほど、この「自己表現」について質問されます。私が受験生であった頃も一番頭を抱えた科目だったので、受験を控えた方へのちょっとしたヒントになればと思います。

注1:この記事は2016年8月20日現在の情報をもとにしたものです。
注2:この記事はあくまで在校生が個人の見解と調査をもとに作成したものであり、合格を保証するものではございません。

*前回までのおさらい<音環入試の概要>

音楽環境創造科の入試は、

一次試験:センター、音楽(筆記)
二次試験:小論文、自己表現、面接

となっており、例年20~21人が合格します。

今回お話しする「自己表現」は「面接」とセットになっており、同じ日にちに受験します。

(ちなみに、普段は千住キャンパスを使用する音環ですが、入試は全て上野キャンパスでおこないます。千住には立ち入れません!!!)

*「自己表現」の試験当日

二次試験に残るのは例年約60人。試験日は4日間用意されており、60人が受験番号順にどこかの日程に割り当てられます。同じ日程の中でもさらにグループ分けがあり、同じ時間帯に1グループ3名程度(私の受験時は3人でした)が待機します。

時間になると控え室から移動し、廊下で呼び出されるまで待機します。自己表現と面接はセットで約15〜20分程度。自己表現の持ち時間5分が終わるとすぐ面接に移行します。これらは、受験生ひとり:音楽環境創造科教授全員という構成でおこなわれます。

私はグループの中で一番受験番号が早かったため、あまり待たずに済みました。ですが、グループの最後の人は結構待たされてしまうのではないかと思います。廊下はなかなか寒いので、緊張状態の体にはこたえます💦

面接が終わると、合格発表まではだいたい一週間から10日程度待ちます。この期間がすっっっごく長いです。本当に長いです。多くの国公立大学の受験結果よりも藝大の結果発表が遅いため、結果が出るまでの間一人で悶々とすることになります…結果が出ているなら早く教えてほしいですよね!(笑)

*「自己表現」では何が求められるの?

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受験の申し込みをする際にハガキを出すのですが、そこで「演奏・パフォーマンス・プレゼンテーション」のどれかに丸をつけなさいという指示があります。この3つが自己表現で選べる選択肢となります。

私はこのハガキを目の前にし、「わたしのやりたいことってなんだ…表現したいことってなんだ……?」と数日間悩み続けることになりました。「どういう勉強がしたい」というのが漠然と決まっていたり、「自分はこういう人間だ」というのが明確に説明できるとしても、それを面接で話すのではなくこの「自己表現」に落とし込むのは意外と難しいものです。「自己表現」という日本語にもまた、モヤモヤします…。

モヤモヤしたところで突き放すようですが、ここで音環の公式HPをご覧いただきたい。

平成25年度学科説明会Q&Aより一部抜粋】

Q:面接は「一芸入試」なんでしょうか。
A:面接での自己表現が上手だったから合格できるというわけではありません。問題意識や、社会とつながるための力など、自己表現を通じて多岐に広がる可能性を理解し説明できる力が必要です。

Q:自作の論文や映像の発表と演奏を一緒にやりたい場合、演奏・パフォーマンス・プレゼンテーションのどれに該当するのでしょうか。
A:なぜ自分がこういうことをやるのか、それを何と呼ぶのか、ということを考えることも自己表現のうちです。

平成28年度学科説明会Q&Aより一部抜粋】

Q:入学試験において、実技試験の対策をたてる上での重要事項を教えていただきたいです。
A: 自己表現は実技試験ではなく、あくまでも何を表現したいのかを見ることに主眼を置いています。内容についてはその事をふまえて各自で判断してください。

………わかったような、わからないような?

とはいいつつ、上のアンサーは入試でもかなり鍵になってきます。自己表現の後で続く面接では、9割方、自己表現の内容についての質問が投げかけられるからです。この「説明できる力」が肝心です。

いろんな機会でお会いした受験生の方にお伝えしているのは、「何をしたか」より「どうしてそれをしたか」が大事であるということです。

私はプレゼンをしましたが、ピアノを弾いた人もいれば、踊った人もいます。「何をしたから落ちる」「何をしたら受かる」というものは存在しないと思います。それらをその後の面接でどのように説明し、場合によっては弁明できるかが大事だと思っています。

*面接について

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先ほど述べた通り、面接では、自己表現の内容についての質疑応答時間が過半数を占めるといっても過言ではないと思います。

その他では、同期と話していて割とみんな聞かれているように感じたのは「学科のイベントに足を運んだことがあるか?」という質問。私はさらに、「どんな作品/発表が印象に残ったか?→それはなぜ?」というところまで踏み込んで聞かれました。

というわけで、ぜひ音環のイベントには足をお運びいたただき、見たり聞いたりした作品や発表についてあれこれ考えていただけると良いのではと思います。(在校生も喜びます。論文発表ならもちろんのことですが、常設の展示なども制作者が部屋にいたりするのでぜひぜひ話しかけてあげてください…!)

*「自己表現/面接」に関する都市伝説

よく自己表現に関して憶測が飛び交っているようなので、この機会に所見を述べさせていただきます!

☆同じグループ内ではひとりしか合格できない…?

→全くそのようなことはありません。現に、私は同じグループだった人全員と同期になれました! 控え室ではライバルを意識して緊張しすぎないように…。

☆先生を笑わせると受かる?

→このような噂を聞いたことがありましたが、特に根拠はないと思います。でも、場の空気を溶かしたということは、少なくとも心象は悪くなかったのだろうと推察されます。ちなみに私は、質疑応答の中で「良い曲を生むためなら作曲家の浮気や不倫は許されるか?」という質問を投げかけられ、「良い曲が生まれているのは事実だが倫理的には許せない」と答えたところ、笑いが起きました……(なんで…)。

☆ラジオ体操第一をピアノ演奏した先輩がいる!?

→事実だと思います。あと、指パッチンで合格した先輩も有名です。

*おわりに

自己表現で何をすればいいかというのは、正解も見えないため、受験生のみなさんが非常に頭を悩ませる問題だと思います。でもあえてアドバイスをするのならば、「自分を信じて」「貫き通す」ことが大事だと思います。

自分が音環で何を学びたいのか、それをアピールするためにどのような自己表現をするのか、どうしてその自己表現を選んだのか…。

試験まで、まだ半年もあります。その間上記のことをしっかりと考えて、自信を持って試験日を迎えてほしいと思います!

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ちょんちか

埼玉県出身。東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科プロジェクト1所属。おもちゃ楽器を用いた楽曲の研究と制作をしている。趣味は寺社巡り。