演奏動画はどうやって撮る? SNSに投稿するコツを検討してみた

2019年末から始まった新型コロナウイルスの世界的大流行に伴い、演奏の場を奪われてしまった方はたくさんいらっしゃると思います。そこで新たにインターネットを使ってご自身の演奏を配信・投稿することを始めてみたいと考える方もいらっしゃるのでは?

でも最初の投稿ってどうやって作ったらいいんだろう、と迷えますよね。そこでこの記事では機材ゼロでの録音から本格的な宅録の方法まで、実例を交えながら、3つのステップを追ってご紹介していきます。またSNSで多くの人に見てもらうためのアイデアも検討してみます。

セルフで演奏動画を撮る3つの方法

大前提として、おうちで撮るときのコツは以下の3つです。

  1. 明るいところで撮る
    基本的に、明るければ盛れます。特に専門的な機器がない人にとって、日中の自然光は強い味方です。ただ明るくすると顔の濃淡が見えにくくなるので、メイクを濃いめにしてみたり明かりの角度に気をつけるなどの工夫をおすすめします。
  2. なるべく広いお部屋を選ぶ
    これは音質対策です。おうちの中でも、広めの場所や天井が高いところなどを選んだほうが、よい響きで撮れます。でも練習風景を撮るのであれば、かえってデッドな環境の音声のほうがリアリティを出せるかもしれません。
  3. 自分の画角を見つける
    アングルはいろいろ試してみましょう。運指を見せたいのか、演奏する体の姿勢を見せたいのか、演奏全体の雰囲気を映したいのか、フォーカスするポイントを絞るとより訴求力のある映像になります。

このポイントを押さえて、それぞれの環境に合わせた撮影方法を考えていきましょう。

初級:機材ゼロからのスタート!

とりあえず何か動画を投稿してみたいけれど、機材が何もない! という状態の人は、お手持ちのスマートフォンで撮る方法を考えてみましょう。かくいう筆者は、かれこれ2年以上演奏している動画だけを投稿するインスタグラムを運営していますが、そのほとんどをiPhoneSEで撮影しています。

おすすめなのは、インカメラでの撮影。撮影中も自分で画角を確認しながら撮れるので、フレームアウトなどの失敗が起こりにくくておすすめです。

わたしはこんな感じで壁に打たれた釘に乗せたアングルで撮影しています。この画角で撮影したのが、こちらの動画です。

 

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また音楽家の方なら必ず持っている譜面台もカメラスタンド代わりになります。折りたたみの譜面台だったらその隙間やパーツを生かしてカメラをセットできますし、折りたたみ式でなくても、譜面立ての部分を水平にしてスマホを置くなどの工夫ができますね。

インカメラでの撮影のそのほかの利点は、狭いお部屋でも撮影できることと、録画ボタンがこちらを向いているので押すのが簡単なこと。慣れてくるとご自宅の中で撮影に適したアングルが見えてくるので、インカメではなく本来のカメラでカメラを固定して撮影しても失敗は少なくなると思います。

中級:スマホでももう少し本格的に

続いてはスマホを活用しつつ、もう少し画質も音質も上げたい方のための方法です。わたしは最近このような三脚つき外付けマイクを購入してみました。

このマイクと三脚は、スマートフォンのみならず一眼レフなどのカメラにも取り付け可能です。いわゆる卓上三脚と言われるコンパクトなものなので、まだ実現していませんが、スタジオなどに持ち込むことも手軽にできるだろうなと思い購入しました。このスタンドを使って撮影したのがこちらの動画です。

 

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こちらの録音を自分で聞いてみて、正直このマイクは楽器の録音に特別適している感じがしませんでした。同じような商品の中でもお手頃価格のものを選んだせいだろうなあという反省がありますが、三脚を得られたことで当然ながらスマホが圧倒的に安定するようになり、撮影時のセッティングのストレスが解消されました。わたしが購入した商品ではありませんが、ここでは似たようなものをご紹介しておきます。


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あるいはもしお手元に高性能のボイスレコーダーなどがありましたら、動画はスマートフォンで、サウンドをレコーダーに任せて、あとから合成するのも手です。両方を同時にセットして演奏すれば、音と映像をぴったりと合わせることができますからね。そのようにしてできた動画がこちらです。

 

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わたしは編集には Apple の「iMovie」を使用しています(パソコンでやっています)。動画を読み込んだら動画に付随する音の波を目印に、ボイスレコーダーの音声を動画に重ねて、一致したら動画の音声のほうを消せば合成完了です。

わたしはボイスレコーダーは持っていないのですが、iPod に「PCM録音」というアプリを入れています。こちらは同じiPhoneでも、プリインストールのボイスメモよりもずっとよい音質で取れるので重宝しています。たとえばボイスレコーダーがなくても、ご家族のスマートフォンを借りたりしてスマホ2台体制で音と映像を分けて撮るだけでも、かなり聞こえが変わります。

ちなみに、ユニークな三脚として、こんな商品もご紹介します。もしご家族などにお手伝いをお願いできるなら、この撮影補助具を握ってもらって演奏する人の周りをぐるぐると動いてもらうと、自動で奏者がフォーカスされて、まるで素人の撮影とは思えないなめらかな動きの動画を撮影できます。ただ使ってみた感触ではズームがガタガタするので扱いには慣れがいるかもしれません。


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上級:一眼レフで撮影する

とはいえ、どうせ撮るならハイクオリティの動画を作りたい、とも思いますよね。特にSNSに投稿する場合は、その動画のビジュアルの良し悪しが「見る/見ない」の判断材料になってしまいます。画質を求めるなら、一眼レフで撮影してみましょう。

 

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同じアカウント上の投稿なのに、突然に映像がグレードアップした感じになりますね! 特に初挑戦した動画を見たとき、背景のボケ具合を見て「すごいすごい」とひとり興奮しました。

もしこれからカメラを購入してみようかなと思う方には、セルフィー用にモニターを動かせる機種をおすすめしたいと思います。筆者には、動画撮影中に夢中で弾いていてフレームアウトしてしまうことがよくあるのですが、モニターで確認しながら撮影できると安心です。モニターが下に開くタイプだと平置きや三脚への設置ができないので、上に開くタイプがおすすめです。


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先の動画、カメラ内蔵のマイクによる音声なのですが、音質はちょっと残念ですよね。そこで先ほどもご紹介した外付けマイクの出番です! ここまですれば宅録環境は強いです。多くの YouTuber の方もこのようにして撮影しています。

 

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わたしも外付けマイクで試してみました。マイクのグレードが高くない上に、最初に挙げた鉄則に反して狭い自室で録音したので未だお聞き苦しいとは思いますが、それでも最初の一眼レフの映像との違いは感じていただけると思います。

SNSの特性に合わせて投稿

では撮影できた動画を、どのようにしてソーシャルメディアにシェアしていきましょうか? ここではSNSごとの特徴も踏まえて、筆者が実践している方法をご紹介していきます。

まず動画と言ったら YouTube のイメージがあるかと思いますが、YouTube には「本格的な動画を見たい」という人たちが集まっているので、半端なものをアップすると遠慮なく「👎」が飛んできます。でも全てスマートフォンのインカメで撮りきったこの動画も「山手線の駅メロをヴァイオリンで全て弾く」というほかに誰もやっていないかつ時間をかけて作ったコンテンツなので、そういった独自性のある動画は評価してもらえる傾向にあります。

拡散力だったら Twitter でリツイートしてもらうのが一番ですが、動画の投稿におすすめなのは Instagram です。Facebook も試しましたが、3つの中でもっとも音質が良いのが Instagram でした。

Instagram の通常の投稿だと動画は60秒までですが、一度に10本まで添付できますから、1分ごとに動画をトリミングすれば10分ぶんの投稿をすることができます。また動画を投稿する画面から「IGTV」という方法も選択できます。こちらの方法は一般のユーザーなら15分までの動画をアップできるので便利です。

Instagram はTwitterで言うリツイート機能がないので、拡散するにはハッシュタグの付け方が肝になります。ハッシュタグを入力するときには、そのタグがついた投稿の数が表示されます。Instagram はこの数をマスターするのがコツで、たとえば何万件もあるようなハッシュタグだと、そのタグで検索しても下のほうに埋もれてしまいます。まずは100件500件くらいのハッシュタグを見つけて、検索結果画面の上のほう狙うことから始めます。すると次第に検索流入が増えてくるので、投稿を見てもらえるチャンスが広がります。

Twitter で投稿するときは、140字いっぱいに動画にまつわるエピソードを添付するもよし、あるいは撮影中のNGシーンなどを切り取ってネタに走るもよし。Twitter はほかのSNSに比べておもしろさやユニークなものが好まれやすいので、超絶技巧も Twitter 向きかもしれません。

……とつらつら書きましたが、筆者自身、どうしたら多くの人に届くかな? と日々試行錯誤しているところです。ここに書いたことは実際に効果があったことを厳選したので、これから動画を配信してみたいなと思う方の参考になりましたら幸いです。

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栃木県出身。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程修了、ディプロマ・オブ・ロイヤルアカデミー、ドリス・フォークナー賞を受賞。2018年9月より同音楽院博士課程に進学。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。