オーケストラ日誌!Day 4〜急遽出演!室内楽コンサート〜

みなさんこんにちは。早いもので1月も3分の2が過ぎました。昨年のこの時期は4月から住む住居を探すべく血眼になってさまざまな賃貸サイトを見比べていました。冬が過ぎたら、シュトゥットガルトに来て1年が経ったことになります。

さて、試用期間だったこともあって4月から休みなしで出ずっぱりだった私ですが、先週はプログラムの都合上編成が小さくあまりヴィオラが要らなかったので、出番がない「降り番」として初めてお休みをいただくことになっていました。この「降り番」については、そのうち連載の中で詳しくご紹介したいと思います。

約1週間半ほど休みになることになっていたので、さて少し旅にでも出るかと思っていたところに、まさかの事態が発生。翌週の室内楽コンサートに出るはずだったヴィオラの人が突然出られなくなったので、代わりに出ることになりました…!

コンサートは1週間後! さぁ、どうする?

話をいただいたのが日曜日。演奏会はその次の週の火曜日。つまり、準備期間は約1週間。前回の室内楽プロジェクトのときは、それまでの合わせに加えて演奏会の1週間前から毎日のようにみっちり練習をおり、今回も代わりを頼むくらいだからそんな感じなのかな、と思っていたらなんとリハーサルは、火・金曜日とコンサート前日の3回のみ。メインの曲が弦楽器4人と管楽器5人による九重奏だったためか、なかなか予定が合わなかったようでした。

ちなみに、譜面をもらったのは翌日月曜日。なんと譜面がキャンセルした人のロッカーに保管されていて、事務に頼んでマスターキーで開けなければいけない、というハプニングがありました。結局午後にようやく譜面をもらえましたが、火曜日の最初のリハーサルは午前だったので、本当に譜読みの時間がありませんでした。

ちなみに、コンサートのプログラムはこんな感じ。

・F. ティロー(ティエリオ):フルート四重奏曲
・S. プロコフィエフ:五重奏曲
・G. オンスロー:九重奏曲

全く知らない作曲家や作品ばかりでしたし、全曲ヴィオラがあったので、3曲しっかり勉強しなければいけませんでした。プロコフィエフの五重奏曲は一部やったことがあったのですが、きちんと全楽章やるのは初めてでしたし、簡単に弾ける曲ではありません。翌日は朝からリハーサル…そうなると、効率の良い練習が必要になってきます。

その1〜音源を聴く〜

譜面がない段階でまずできるのは、音源を聴くこと。およその全体像をつかみ、どんな役割が多いのか、どの曲のどの楽章が難しそうか、周りはどんな演奏をするだろうか、と考えを巡らせます。

その2〜計画性のある練習をする〜

譜面をもらって譜読みをする前に、どの順序で練習するか計画を立てます。たとえば今回は、翌日のリハーサルではティローをやらないことが分かっていたので、ティローの譜読みは翌日リハーサル後に後回し。プロコフィエフ全6楽章とオンスロー全4楽章の譜面を見て難しそうな楽章や箇所を探し出し、優先順位をつけて譜読みしていきました。

“どうしても練習量を要する箇所” は適度なところであきらめたり、“初見で弾けそう、もしくはリハーサルで数回弾けばどうにかなりそうな箇所” はとりあえず後回しにしたり、とにかくある程度合わせられる状態にすべく、いろいろ考えをめぐらせました。

その3~夜の時間も有効活用~

夜は近所迷惑になるので練習できません。そんなときは音源を聴きながらどのパートと一緒なのか、どの楽器を聴かなければいけないのか、自分は重要なパートなのかなど勉強し、譜面に書き込んでいきます。また、音源を聴かなくてもスコアを見てみるだけでも有効です。今は国際楽譜ライブラリープロジェクト「imslp」で大方の譜面やスコア(総譜)が閲覧できるので、スコアを買いに行く時間がなかったときなどには大変便利です。

このような方法でプロコフィエフとオンスローの勉強はできたのですが、譜面が簡単そうに見えたティローがまさかの伏兵でした…。

誰も知らない曲をわずかなリハーサルで…。

夜中、ベッドに座ってスコアと格闘…。

一見普通のちょっと古典的な室内楽に見えた、ティローのフルート四重奏曲。フランス人のような名前(Thieriot)ですがドイツ人で、ブラームスなどロマン派の時代の作曲家です。そんなこともあってか、少々特殊な和声進行が用いられていたり、フレーズの長さもよくある4・8・16 小節ごとでなくときどき7小節だったりと、なかなか体に入ってこない曲でした。

この曲に費やすことができたのはわずか 2.5 回(1回は 30 分程度しかできなかった)、合計5時間弱…。もともとやる予定だった人とは既にリハーサルされていたのでみなさん少し曲をご存じでしたが、代役で途中参加した私は、曲は知らないわリハーサルも少ないわで大変でした。

また、音源がどこにもなかったので、聴きながら勉強ということもできません。スコアを借りて夜中に iPad のピアノアプリを使ってハーモニーの分析をしたり、頭の中でメロディーがなるように自分で歌ってみたり、さまざまな方法で作品を勉強しました。

ハプニング続きの室内楽コンサート!

演奏会3日前の土曜日、オーボエ奏者から一通のメールが届きました。

「非常に申し訳ないのだけれど、家族全員感染性の胃腸炎にかかってしまって本番はできそうにもない。同僚が代わりに吹いてくれることになった」

彼は前日の練習も休んでいて、みんなでコンサート1日前のリハーサルには復活してくれることを祈っていたのですが、まさかの真逆の展開に。。。しかし、こんな事態になっても週末にリハーサルが追加されることはなく(週末は家族との時間…)、前日と当日のリハーサルでやることになったのでした。

もうこうなればあとは野となれ山となれ。こちらがいくらどたばたしていても、聴きに来てくださるお客様には関係のないことです。実際、こんなに直前の出演者変更があったにもかかわらず、演奏会前にそのことについてアナウンスされることはなく、プロとしての力量を試されている感じがして火がつきました(笑)。

結果、全体的に非常にいいチームワークで、みんなで力を合わせて音楽を楽しく奏でることができました。個人的にリハーサル不足を露呈してしまったところが若干あったものの、1週間という短い時間のなかでできることは十分やったし、何よりこんなにじっくりと(必死に)室内楽作品と向き合ったのは久しぶりで、原点を見直すことができたような気がしました。

今シーズン3回目(1カ月おき)の室内楽コンサートの出演でしたが、実は毎回代理で出演しています。たくさん経験できたり信頼していただけたりするのは嬉しいけれど、やはり代役の責任の重さはあまり気持ちのいいものではありません…そんなものにも早く慣れたいと思うと同時に、できるだけもうこのようなことがないようにと願うばかりです(笑)。

ABOUTこの記事をかいた人

あきこ@シュトゥットガルト

5歳よりヴァイオリンを、13歳よりヴィオラを始める。東京藝術大学卒業、ベルリン芸術大学修士課程卒業。ベルリン・ドイツオペラのアカデミーを経て、現在はシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団に在籍。