楽譜には様々な出版社があり、その表紙デザインは時に版元を語り、時に作曲家を語ります。たとえば、原典版と呼ばれる “直筆譜の忠実な譜面起こし” に力を入れるベーレンライター社(Bärenreiter-Verlag)の場合ですと、作曲家ごとに固有の色を当てています。
しかしベーレンライター社のホームページを見ても色を検索できるページはなく……そこで今回は色からわかる作曲家一覧を作ってみました! しかもまさかのカラーコードつき。筆者の主観で並べたカラーチャートをお楽しみください。
ベーレンライター・カラーチャート
作成方法:カラーコードは基本的に記事上部の画像から、そこにないものはベーレンライター社公式オンラインショップ上の画像から、画像編集ソフトを用いて色を採取しました。色についての公式の情報があるわけではありません。光の加減によっては異なった色合いに見えることもありますので、おおよその値としてご理解ください。なお画像出典も上記公式FBページ並びに公式オンラインストアです。
ヤナーチェク:ボルドー(491d2a) | |
ベートーヴェン:海老茶色(581633) | |
サン=サーンス:藤色(b65393) | |
ヴィヴァルディ:マゼンダ(cf3f7b) | |
ショパン:ピンク(ee9abe) | |
サティ:牡丹色(e7457c) | |
ヘンデル:えんじ色(b1314d) | |
フォーレ:紫(624a94) | |
ラロ・エルガーなど:青紫(333e72)*1 | |
リスト:青(064488) | |
カヴァッリ・シャブリエ・クープラン・フランク・エルガー・ラモー・マイヤーベーア・ムソルグスキー・スクリャービン・シュルホフ・ヴィエルヌ・スタディスコアなど:藍色(0f4272)*2 | |
J.S.バッハ・グルック・ヴォーカルスコア・旧版など:セルリアンブルー(4094c3)*3 | |
ドビュッシー:水色(92b2db) | |
メンデルスゾーン:浅葱色(4ca9bc) | |
テレマン:エメラルドブルー(4fa382) | |
マルティヌー:ビリジアン(265e6c) | |
スメタナ:青緑(225356) | |
シュッツ:緑(32682f) | |
ベルワルド:黄緑(5cb54c) | |
シューマン:グレーグリーン(528785) | |
ハイドン:グレー(a1a08e) | |
ベルリオーズ:黒(1c171d) | |
スーク:カーキ(444d07) | |
ブラームス:オリーブ(a39a1c) | |
ラヴェル:ライムイエロー(dbc72a) | |
シューベルト:サフランイエロー(f5c432) | |
ロッシーニ:山吹色(f6ba33) | |
ドヴォルジャーク:オレンジ(eb6c33) | |
モーツァルト:赤(e20026) | |
コジェルフ:栗色(943e1c) | |
シュクロウプ:茶色(953e1c) |
*1:作曲家を超えてこの色の譜面を確認。大判スコアなどにも見られますが、作曲家によってはスコアも固有の色で揃っているので、一概にこの青色とは言えません。
*2:数多くの作曲家、また全ての新しいスタディースコアに使われる色(ちなみにスタディースコアはごく最近まで濃紺、その前は朱色でした)。改定前のエディションでも広く使われていたと思います。
*3:ヴォーカルスコアは全てこのブルーです。また旧版ベーレンライターで多く見た記憶がありますが、定かではありません。なお全音楽譜出版のベーレンライター・ライセンス版で似たブルーが使われています。
以上3点については、各カラーの定義など、より詳しい情報をお持ちの方がいらっしゃいましたらぜひご教示たまわりたく存じます。編集部宛にご連絡いただけましたら幸甚です。
楽譜デザインの自由研究は続きます
ベーレンライター公式SNSは積極的に色で遊んでいて、中でも“ぴったりの色のドリンク”のシリーズはクスっと笑えます。ヘンデルはマルティーニ・ロッソのロックだそうです。
楽譜の表紙デザインに関する記事は、兼ねてから取り組んでみたいと思っていました。これを機に、たとえば「インターナショナル社」や「ブージー&ホークス社」のカラーチャートや、各出版社の材質の特徴など、ほかにも楽しい記事を作りたいと思っています。もしこんな特集が見たい! というリクエストがありましたら、ぜひ編集部までお知らせください。
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