国によってこんなに違う! 世界の歌曲がそれぞれに魅力的なワケ

こんにちは。

今日は、外国語の歌曲の話をしたいと思います^ ^

外国語の歌曲といっても、色々な国の歌があります。作曲家によって作曲スタイルの違いがあるのはもちろんですが、国によってもメロディーや和音に特徴があるんです☆

歌がオーケストラや他の楽器と決定的に違うのは、“歌詩がある”ということです。そしてその歌詩(言葉)は、メロディーに非常に大きな影響を与えるので、言葉がメロディーを作る、といっても大げさではないように思います。

みなさんは、
イタリア語は「歌う言語」
フランス語は「愛を語る言語」
ドイツ語は「詩を書く言語」
と呼ばれているのをご存じでしょうか?

これはまさに、各国の言葉には特性があるということを示しているんです。まずはイタリア語からみていきましょう♪

〜Canzone〜🇮🇹

Canzoneはイタリア語で「歌」という意味。

イタリアの歌曲というと『O sole mio』や『帰れソレントへ』などを中高の授業で歌った方も多いのではないでしょうか。

イタリアの歌曲は情熱的に歌うイメージがありますが…

テーマはそう、いつだって「愛と死」です!

オペラ発祥の地でもあるイタリアの言葉は、やはり “歌うための” 言語といえます。なぜならば、詩を読むアクセントと歌うアクセントが同じだからです。

ここでアクセントの話を少しすると、日本が「高低アクセント(飴と雨、橋と箸など、音の高さで意味が変わる)なのに対し、イタリア語は「強弱アクセント」で言葉ができています。

たとえば、イタリアンレストランなどでよく聞く “Buongiorno” (ブオンジョールノ)は「こんにちは」という意味なのですが、こちらの言葉は、ジョールノの「ジョ」にアクセントが落ちるので、「ジョ」の部分が長くなります。歌を始めたばかりの方に一言でイタリア語の特徴を伝えるならば「強い=長い」です。つまり、アクセントのあるところが長く伸びるのです。

この長くなった言葉の部分に、長く伸ばす音符を置いているのが、イタリアの歌曲です。

言葉のアクセントとメロディーが、うまーーーくマッチしているので、詩を読むだけでまるで歌っているような響きになる、美しい言語です✨

イタリアに行ったときにこんな光景を見かけました。

夜のミラノで、酔っぱらって歩いているおじいちゃんが、有名なテノールのアリア『星は光りぬ』を楽しそうに歌っていたのです。

もしかしたら歌詩を口ずさんでいただけかもしれないけれど、それはしっかりとメロディーに聴こえました。

この国の人たちからオペラや歌曲が愛され身近なものとして認識されているのは、母国語というだけではなく、言葉と歌との距離が非常に近いからなのではないでしょうか。

イタリア歌曲を作曲した有名な作曲家たち

ドニゼッティ、ベッリーニ、トスティ、ドナウディ、チマーラなど

沢山のイタリア人の作曲家が、耳当たりの良い歌曲を残しています🎼   何度も聴いているうちに、きっとあなたも口ずさんでいるはずです♪

P.Tosti<L’alba separa>

〜Mélodie〜🇫🇷

フランス語で歌は「メロディー」。フランス歌曲は普段あまり耳にすることがないかもしれませんが、美しい歌曲がたーーーくさんあります💋

フランスの音楽は洗練され、上品でおしゃれな印象を受けます。

フランス語で一番特徴的なのは、やはり「鼻母音」でしょう。フランス語には、日本語にはないたくさんの母音があります。その一つが鼻母音です。

そしてもう一つ特徴的なものが「J」の発音。破裂音ではなく、非常に柔らかく時間をかけて発音されます。この摩擦の感覚や鼻母音の響きがとても色気があり、歌曲を聴いていても耳に残ります🌙

掴みどころがあるようなないような、長調なのか短調なのか分からないようなそんな二面性のある曲も多いため、聴いているうちにいつの間にかフランス歌曲の魅力に引き込まれてしまう…という方がいらっしゃるのではないでしょうか♪

フランス歌曲を作曲した有名な作曲家たち

フォーレ、ドビュッシー、アーン、プーランクなど

G.Fauré<Clair de lune>

〜Lied〜🇩🇪

ドイツリートと呼ばれるドイツの歌曲は、崇高で芸術的価値の高い作品が多く残されています。詩の内容は自然やギリシア神話からとったものなど、ロマンチックなものが多い印象を受けます。

18世紀の文豪ゲーテやシラーなどの詩に作曲されたものが多く、作曲家は詩と音楽の繋がりをとても大切にしていました。

腕のいい詩人は耳が良いので、詩の内容そのものだけではなく朗読した時のことも考えて作られています。朗読した時にその言葉の感覚がより伝わる言葉(固い子音や柔らかい子音の響きなどを利用して)を選んで書いているのです。

そのようにしてできた詩にメロディーをつけるので、作曲家は詩を朗読した時の響きの美しさを失わないよう、詩の内容が音楽とともに語られるように工夫しました📖

韻や間の取り方やテンポなどから、作曲家がその詩をどう朗読したのかが分かるくらい、詩に忠実に音楽がつけられています。

もう一つドイツリートで注目してもらいたいのが、ピアノパートです。ドイツリートのピアノは伴奏の域を超え、重要な役割が与えられています。詩と歌とピアノが見事に融合した作品をお楽しみ下さい♪

ドイツリートを作曲した有名な作曲家たち

シューベルト、シューマン、ブラームス、ヴォルフ、マーラー、シュトラウスなど

F.Schubert<Der Erlkönig>

R.Schumann<Widmung>

言語の持つ力は大きく、国ごとにその国の言葉を生かす音楽が生まれています。

どの国の音楽も、作曲家や時代によって創作スタイルは変化していくので一概には言えませんが、上記のものを参考にしてさまざまな国の歌曲にも興味を持っていただけましたら幸いです(*^^*)

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東京都出身。国立音楽大学附属中学校ピアノ科を卒業した後、声楽科に転科。同高等学校声楽科卒業。東京藝術大学声楽科ソプラノ専攻を経て、現在同大学大学院音楽研究科修士課程声楽専攻2年在学中。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017に出演。文部科学省日本代表トビタテジャパン6期奨学生としてイタリア及びフランスに留学予定。